【R18】翼神のイタズラ PLAYER No.037 大橋道哉の場合

DAY 14. 幕間

魚の物思い 3

　トニ　side.

「～～♪♪」

『道哉さん、ご機嫌ですね。』

　深夜、道哉さんにお会いする時は
　しょんぼりされている事がとても多いのですが、
　今夜の道哉さんは幸せそうです。

　お声掛けすると、私の水槽を
　ニコニコしながら覗き込みます。

「まぁ・・厚い壁を乗り越えたからなぁ・・」

　道哉さんは、基本的に良い人なんですが、
　しばしばとてもウザ・・
　いえ、まぁ良い人なんです。

『それは、ようございました。』

　道哉さんは、私の水槽の前で
　ソワソワし始めました。

『・・・お皿を洗われましたら、
　どんな壁を乗り越えられたのか
　お教え願えますか？』

　道哉さんはご機嫌で台所へ向かわれました。

　簡単に上がり下がりするご機嫌・・
　感情がストレートに出るお顔・・
　シンプルな思考パターン・・

　エロース様がお気に召すワケです。
　・・・道哉さんには不幸な事ですが・・


　・・・ﾌﾞﾌﾞﾌﾞﾌﾞﾌﾞ！

　通信が入りました。
　発信者は他のプレイヤーを
　サポートしている魚です。

『はい。こちらトニでございます。』

『こんばんは。トニ様。クリスタです。』

　クリスタは、つい最近、
　エロース様にお仕えするようになった
　メスです。

『こんばんは。クリスタ。
　いい夜ですね。
　何か心配事でもありましたか？』

『そうなんです。トニ様・・・
　担当するプレイヤーに
　あまり肩入れしては
　いけないルールではありますが・・
　あまりにも可哀想で・・・』

　クリスタが担当するプレイヤーは
　確かにかなり不利な条件でゲームを
　プレイ中です。

『・・・ご本人はどの様に
　言われているのですか？』

『特に何も・・・でも、毎日の作戦立てで
　あまり眠っていらっしゃらなくて・・
　倒れてしまうんではないかと心配で・・』

　クリスタはいい娘ですが、心配症です。

『分かりました。
　私も気にかけておきましょう。

　エロース様にも次の報告で
　お話しできる様に、
　具体的に報告をまとめておくと良いですよ。』

　・・といってもできる事はとても少ないのですが・・

『プレイヤーが倒れてしまう程のゲームを
　エロース様は望んでいらっしゃらないのですから・・・』

『分かりました。トニ様。
　報告をまとめたら、ご相談しますので、
　お手伝いいただけないでしょうか？』

　クリスタの声が幾分、明るくなりました。

『ええ。
　そうしてください。』

　後輩の相談に乗るのも先輩の大切な仕事です。

　通信が切れて・・
　私はエロース様にお仕えするように
　なってからの事を思い出します。

　私が初めて、
　エロース様の御姿を拝見致しましたのは
　もう2800年も昔の事でございます・・。

　あの頃、エロース様はお子のお姿で
　ありましたが、
　当時から大変にお美しいお姿で・・

「トニ！食器洗い終わったんだけど・・」

　・・・そうでした。
　道哉さんの惚気のろけ・・いえ・・
　現状をお伺いする大切な時間です。

　私の益にならない物思いは置いておきましょう。

　私は長い長い道哉さんのお話しを
　お伺いするのにちょうど良い
　居心地の良い水草の中に入ります。


　・・・この日の道哉さんのお話しは、
　いつもに増して、あちらこちらに脱線し、
　道哉さんのお気持ちが仔細に伝わるもので
　ありました。

　お話は深夜に及び・・
　道哉さんが満足するまでお話しを伺うのは
　とても体力の要いる事だと再認識する時間となったのでした。