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DAY 2.

女神様のアドバイス

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「今日は長い時間、
 本当にありがとうございました。」

「ありがとうございます。」

 優雅に座ってティーカップを片手にした
 プシュケーさんと、
 その横に座って肩に止まった
 小鳥の頭を掻くヘードネーさんに
 田口が深々とお辞儀をする。
 それに便乗して俺もぺこりと頭を下げた。

「いいえ。こちらこそ楽しく過ごせました。」

 ・・因みに、エロースは途中で眠くなったのか、
 プシュケーさんの膝枕ですやすや眠っている。
 神様なら良いのかもしれないが、自由な奴だ。


 ゲームに関する話が一通り終わった後、
 俺達は2つ相談をしていた。


 1つは、避妊に関する事。

 万が一にも田口が妊娠する様な事があれば
 ゲーム続行不可能で
 ゲームオーバーになるらしい。

 そうはいっても、もうこのゲームは
 恋愛ゲームというよりもエロゲーになる事が
 確定しているので、避妊は必要不可欠だ。

 ・・という訳で、田口は次の生理から
 俺達の世界で言うところの
 ピルを飲む事になった。

 正直、薬を田口に飲ませるのは
 俺が嫌なのだが、この世界では俺達の世界で
 普通に売られていた避妊具が
 全然売られていない。

 ピルは、避妊目的というよりも
 一部の病気治療用に作られているらしく、
 意外と手に入りやすいらしい。

「大丈夫ですよ。
 生理痛も軽くなると聞きますし、
 相談できるお医者さんも
 紹介していただきましたし、安心です。」
 この件では、
 むしろ田口の方が俺よりけろりとしている。


 もう1つは仕事に関する事。

 来月からは、家賃も支払うので、
 俺たちも働いた方が安心だ。

 ミッションをこなしつつ、
 この世界に慣れつつということになるので、
 あまり長時間拘束されない事が条件になる。

「それなら、日雇いの仕事募集カレンダーを
 通信の腕輪で見られる様にしておきましょう。」

 人間の仕事の事ならと呼ばれたビオンさんが
 俺達の通信の腕輪をいじった。

 日雇いの仕事募集カレンダーは
 スマホのアプリの様なもので仕事募集したい人が
 仕事を登録して、
 仕事を受けたい人が応募するものだ。

 あまり稼げる仕事が多くないものの
 仕事をしたい日に仕事ができるのは
 今の状況では嬉しい。

「この神殿でも、
 大掃除や補修などの時にこのカレンダーで
 お手伝いしてくださる方を募集する事が
 あるんですよ。
 お2人も予定が合えば是非応募してください。」

 ビオンさんがにこやかに言ってくれた。

 そんな訳で、少なくとも俺達としては、
 聞くべき事はちゃんと聞けたわけだ。

 そう思って腰を上げかけると、
 プシュケーさんが口を開いた。

「このゲームは
 夫が道楽でやっているものなんですが・・
 プレイヤーはちゃんと選んでいるんですよ。」

「は・・はぁ?」

 唐突に話し始めたプシュケーさんの意図が
 分からず俺はどう答えたものか首を傾げた。

「沢山のプレイヤーがいた様ですし、
 今もプレイしていらっしゃる方は多いのですが、
 夫が私やヘードネーに会わせたプレイヤーは
 道哉さん、あかりさんが初めてです。」

 プシュケーさんが何歳かは分からないけど、
 中学生の女の子みたいに笑って続ける。

「だから、お2人には女神プシュケーから
 特別にゲーム攻略に繋がるヒントを
 差し上げましょう。」

 そう言ってプシュケーさんは
 俺に視線をよこした。

「道哉さん。
 焦ったり、悲観したりするとお悩みは
 続いてしまいます。
 慣れていけば意外と早いうちに
 解決するでしょう。」

 あーこれは、俺の早漏の事だろう。
 女神様のお墨付きで
 『意外と早いうちに』と言ってもらえると
 心強い?
 ・・いや、女神様に保証させるコトだろうか?

 横で田口は目をぱちくりさせている。

 俺ばかりが危なっかしいのかもしれないが、
 プシュケーさんは俺から視線を外さずに言う。

「それから、『慣れる』のは
 今までよりも難しくないでしょう。
 お菓子を少しでもかじって
 甘いと知った子は、
 次もお菓子が欲しいと思うでしょう?」

 ・・・ほーー・・

 俺は田口に目線を送る。

 田口は知ってか知らずか明後日の方を見た。

「・・といってもお菓子をあげ続けると、
 体を壊すし・・たまにはお預けしてお菓子を
 我慢する時間を持つのもいいかもしれません。」

 プシュケーさんの言葉に
 ヘードネーさんがくすくす笑う。

 エロースの影響なのか、
 割と女神様方は堂々とこういう話を
 なさるようだ。

「我慢した後のお菓子は至極の味ですからね」

 ・・・それは、俺が我慢できるかどうか・・

 俺がモヤモヤしていると、
 プシュケーさんは田口に目線を映す。

「怖がらなくても、仮に身体を開かなくても、
 今、彼の愛は貴女のものです。
 それは心の女神が保証しましょう。

 あかりさんが今後、不安に思う事があったら
 トニを通して、私にも相談なさいね。」

「あ・・ありがとうございます。プシュケー様」
 田口は、顔色良くお礼を言ってニコッと笑った。


 ヘードネーさんがその様子を見ながら、
 唐突に言う。

「ところで2人はなんで
 家の名前でお互いを呼んでいるのかしら?」

「えっと・・付き合う様になるまでに割と
 長かったから名前呼びするタイミングを
 逃したというか・・」

 俺としては、付き合い始めた日に
 『あかり』と呼んだんだけど、
 当時の彼女はそう呼ぶと、真っ赤になって
 逃げ出してしまっていたから、諦めたんだった。

 お互いに身体を見せ合う位まで発展した今・・
 まだ、名前呼びを我慢するのも
 おかしい気がする。

「タイミングを逃しただけなら、
 お互いの名前で呼んだ方が絶対に良いわ!!
 達する時に家の名前で呼ばれるよりも、
 名前を呼ばれる方が嬉しいものよ。」

(同意!)

 少なくとも俺の妄想の中の田口の喘ぎ声は
 『道哉君』だった。

 ・・・

「そうですね!
 だよね?あかり!!」

 即座に同意した俺から視線は田口に集まる。

「・・ど・・努力します。・・道哉・・くん。」

 緊張した面持ちの田口・・いや、あかり。
 俺はもう、これだけでも
 2人の女神にひれ伏したい気分だった。
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