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DAY 2.

パラメータ

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「よく来たな。道哉、あかりよ。
 ご苦労だな。トニよ。」

「ご・・ご招待?
 ありがとうございます!!」

「うむ。」

 緊張気味に言う田口に頷いたあと、
 エロースは俺に目を合わせる。

「おはよーございます。」

「我々は時々
 人間をケモノに変える罰を下すが・・・」
 棒読みの俺に
 エロースがニマニマしながら言う。

「ご招待ありがとうございます!」

 ・・満足気だ。

 むしろ、
 振られるのを待ってたんじゃないかと思う。

 ノリの良い神様もいたもんだ。

『エロース様、
 プシュケー様、
 ヘードネー様、
 ご機嫌麗しゅうて何よりでございます。』

 トニがそこまで言って水槽の中で一回転した。

「ああ、道哉とあかりは初対面であったな。」

 エロースはそこまで言って
 左に座る背中に蝶の羽を生やし
 た妖精みたいな銀髪美人にニコリと微笑んだ。

「妻のプシュケー」

 銀髪美人さんは
 俺と田口にニッコリと微笑みかける。

「良くいらっしゃいました。
 歓迎いたします。
 夫の享楽にお付き合いくださってありがとう。」

 続けてエロースは右に座る
 金髪美人にも優しく微笑んだ。

「娘のヘードネーだ」

「はじめまして。ヘードネーです。
 お2人とも
 お友達の様に接してくださると嬉しいです。」

「それで、これからゲームの詳細の話をしよう。
 トニよ。
 2人に通信の腕輪は渡したな?」

『はいお渡ししました。
 道哉さん、あかりさん、
 腕輪をエロース様にお見せください。』
 
 俺達は昨日受け取った腕時計を見せた。

 今朝、出掛ける時に
 トニが『着けて行ってください』と言ったので
 着けたのだが聞いた話によると
 コレはスマホのようなものだ。

 遠く離れた相手と通話できるし、
 右横のボタンを開けば
 利用者の目の前に
 ホログラムディスプレイみたいな
 ディスプレイを表示させて
 音声認識されたキーワードを元に
 必要な情報を表示したりできる。

 エロースは俺達が『通信の腕輪』を
 着けているのを確認して頷くと、
 メモ帳を開かせた。

「ゲームの起動ワード位は
 メモしておけ。
 『エローススタート037』だ。」

 メモした事を確認すると、エロースが促す。

「では、通信の腕輪に向かってキーワードを入力しなさい。」

 言われた通りに腕時計に話しかけると、
 ディスプレイが表示されて音声で話しかけられた。

『プレイヤーネームを確認します。
 お名前をお話しください。』

「大橋道哉」

『本人確認致します。
 ディスプレイ上に表示される赤い点を
 3秒間見続けてください。

 1・・2・・3・・ 

 本人確認終了しました。

 大橋道哉さん レベル3
 レベル10までのミッションを実施可能です。』

 音声はそこまで言って一旦停止した。

 目の前のディスプレイには
 幾つかのメニューが表示されている。

「メニューをタップするか
 発話するかでメニュー実行できる。
 まずは、ステータス表示してみろ」

 何故か、エロースが得意気で、
 プシュケーさんとヘードネーさんが
 クスクス笑ってその様子を見ている。

「『ステータス表示』」

 発話すると
 既に表示されているメニュー画面に
 重なる様に左側に何かが表示された。

「んー・・
 めっちゃ画面重なってて見えない。」

『道哉さん、【画面固定】と発話すれば、
 メニュー画面の位置は固定されますから、
 【画面固定と発話した後に
 視線を他に移してくだされば
 ステータスがきちんと見えると思いますよ。』

 トニの言葉に従って、
 画面固定した後に、視線を逸らすと
 視界の左側にステータスと5本のバーが見える。

 割と小さい表示で見えづらいので
 試しにピンチアウトしてみる。

【大橋道哉 レベル3】
【次のレベルまでの必要経験値 132】
【感度                           1】
【長さ                       9.5】
【太さ                       8.4】
【性欲                     8/28】
【興奮                      1/15】
【快楽                     3/15】
【安心                     4/10】
【オーガニズム      0/10】

 ・・・ないわーー!!

(数値化されたくねぇーーー!!)

 微妙な心持ちになる。
 性欲、興奮、快楽、安心、オーガニズムについた
 バーのゲームが微かに左へ右へと
 動いているのも生々しい。

 長さと太さは俺の分身だろう。

 勃起してる最中にこのパラメータが
 どうなるかは多少興味はあるものの、
 この数値化は萎える。

「技術提供は私とプシュケーとヘードネーだ。」

 もうずっと、
 エロースは楽しそうに見えるのは
 なんなんだろう。

 田口の方はどうだろうと、
 横を見ると赤くなって目を見開いている田口が
 視界に入ったところで
 視界右側にステータスとバーが5本増える。

【田口あかり レベル1】
【次のレベルまでの必要経験値 100】
【感度                           3】
【膣内感度                    1】
【性欲                      1/  8】
【興奮                      1/10】
【快楽                      1/10】
【安心                      0/10】
【オーガニズム      0/10】

 田口を視界に入れれば
 田口のパラメータを
 俺も見られるという事らしい。

「た・・田口?」

 真っ赤になって
 呆然と前を見つめている田口が
 心配になって、声を掛ける。

 田口は真っ赤な顔と焦点の定まらない目を
 こちらに向けた。

「・・・!!」

 爆発音が聞こえたのは気のせいだろう。

 田口がふらっと尻餅をつきそうになるのを
 支える。

「ちょ!田口?!」
『あかりさん!』

 ・・・・・
 ・・・

「少し、興奮してしまわれたんでしょう。
 落ち着かれましたから、心配なさらずに」

 ビオンさんが、田口の顔色を見て言う。

「ビオンさん、大橋君ありがとう。
 皆さん、ごめんなさい。
 本当にもう大丈夫です。」

 濡らしたタオルを手渡した俺と
 神殿内の一角に
 休めるスペースを作ってくれたビオンさんに
 お礼を言いながら
 田口が力無く笑う。

 ビオンさんはにっこり笑って出ていった。

「あかりには刺激が強かったか?」

 エロースと
 プシュケーさん、ヘードネーさんは
 高いところから降りてきて、
 田口の前に用意された椅子に腰掛けた。

「エロース様、ごめんなさい。」

「なに、気にするな。」

 エロースは本当に何も気にしていないらしく、
 ビオンさんが淹れたお茶を楽しんでいる。

「それに・・良い機会だった。
 あかりのパラメータの【安心】の項目を
 見てみるといい。」

 パラメータ表示の消し方が分からないので、
 俺達のパラメータは表示されっぱなしだ。

【安心                      2/10】

(あー・・元々幾つだっけ?)

 田口のパラメータが見えた事と、
 項目的には【膣内感度】がインパクト大で
 細かい数値は未確認だった。

「元は0/10だ。
 こうして、少し落ち着いて
 数値が上がっただろう。」

「・・・」

 前の数値を覚えていないだけに
 実感が湧かない。

「えっと・・このパラメータを見ながらシろと?」

 この項目ならセックス中は
 大きく変わるだろうけど、
 田口がこんなのを見ながらのセックスに
 耐えられるとは思えない。
 俺は溜息を吐いた。

「いや、
 行為中はこのパラメータ画面を
 見ないのが基本だ。
 【ステータス表示終了】で、
 パラメータ画面は閉じるぞ。」

 自分で開かせておいて
 エロースはけろりとして言う。

「そもそも!!
 自分が与える快楽に震える妻や恋人の
 顔や身体は至極の美!!
 それを見ずにこんな数値を見ているなぞ、
 無粋な行為だからな。」

「いや、だったらなんで?」

 芝居掛かったセリフを吐きながら
 恍惚としているエロースは
 絡みやすいのか絡みにくいのか
 よく分からない。
 ・・いや、分かる。
 絡みづらい。

「道哉とあかりが参加しているのが
 ゲームだからだ。」
 エロースはニコッと笑う。

「このゲームに勝敗はないが
 クリア条件は必要で、
 クリア条件を公正に判断する為に
 必要な情報をパラメータとして数値化した。」

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