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DAY 1.
翼の神の名は
しおりを挟む「ふむ。
名乗っていなかったのでは、
不遜も無理はないか・・。
私の名前は『エロース』」
(それは不憫!)
人名で『エロース』はあんまりだ。
「ははっ!
本当に不敬極まりないな!
エロス故に私がエロースなのではない。
私がエロースであるが故のエロスなのだ。」
立ち絵でない美男子は今度こそ、
真顔でなく爽やかに笑うが・・
もう、目の前の男が
何を言っているのかわからない。
「もう少し、俺にもわかるように
話して頂けないでしょうか?」
「まぁ、お前の考えは、
これ以上読む必要がないな。
情報は大体出揃った。
だが、道哉よ、
私に求めるだけでなく
お前も私の話を理解するように努めよ。」
「・・頑張ります。」
「では、あかりという娘をここに連れてこよう。」
あかりというと、
田口 あかり(たぐち あかり)
ーーー俺の彼女を指しているとしか思えない。
「いや!困りますって!
田口をこんな状況に巻き込んだら・・」
慌てる俺を無視して
エロースは机の上に置かれた
メッセージアプリ起動中のスマホを
手慣れた様子でいじってこちらによこした。
スマホ画面は田口を呼び出し中になっている。
慌ててキャンセルしようとしたが、
キャンセルする前に
田口が通話に出てしまった。
「私が娘をここに運ぶから、
道哉よ、
お前は娘に私によって
運ばれる事を伝えると良いだろう」
(いやいやいや・・・
なんも良くないんだけど・・・)
もうずっと、
この男が何を言っているのか分からない。
『あの・・もしもし、大橋君ですか?』
・・・
もう、彼女になんと言ったものか、
いや、それ以前に運ぶって
何のことだと混乱しながら
何とも身のない話を続けていたところ、
イライラしたエロースが
不意に何もない空間に手を伸ばした。
伸ばした手の先の空間が
一瞬歪んだかと思うと
エロースに引っ張り込まれるように
田口が姿を現した。
・・・そして現在に至る。
ーーーここまでいくらか
(特に妄想の下りを)省略しながら
話して俺は、疲れて項垂れる。
「・・・・」
田口は困ったように黙っている。
「信じられないかもしれないけど、
嘘じゃないんだ。」
「え・・と、夢を見ているとか」
田口の言葉に俺と田口は
各々自分の頬を引っ張る。
「「・・・」」
・・痛い。
・・・・・
「その・・とんでもないことしてゴメン」
「あ、いえ!大橋君が謝る事じゃないです。
それに、びっくりはしましたし、
本当のところ何が起こったかは分かりませんが、
大きな問題は今のところないじゃないですか」
「うん・・?」
俺の中では
ゲームから謎の羽生やした男が出てきて
ここにいるだけでも大問題なのだが
・・そういえば彼女は
この部屋に来てから一度も、
この、エロースと目を合わせていない。
「コンセントまで抜いたなら、
ゲームは強制終了ですし、
ここは大橋君のお部屋です。
危険はないですし・・
えっと、お父さんに借りた車は、
タクシーとかで取りに行けば
きっと大丈夫です。」
田口は、一生懸命に
何も問題は起こっていない理由を挙げていく・・
「道哉よ・・
あかりにはまだ私は見えないぞ。」
エロースは
当たり前とでも言いたげに俺に言った。
「ええと・・何ででしょうか?」
「この娘はまだゲームに参加させていないから、
ゲームキャラクターとして登場する私を
認識することはできない。」
なるほどとは思わないけど、
一旦理解した事にする。
「ところで、このまま参加すると
ゲーム内時間の365日で
過去、お前がしてきた妄想を全て
彼女とこなす事がゲームクリアの条件になるが、
問題ないか?」
エロースはさらりと尋ねてくる。
「それは問題ありますね!」
そりゃ、もう問題ある。
最近の妄想はともかく、
彼女に惚れて、
付き合って、
初体験に失敗をするまでの期間となると、
地に足がついてなくて、
妄想が膨らみに膨らんでいた時期だ。
かなり一般的でない妄想を膨らませ続けていた。
『田口、俺に縛られたまま○○させて欲しい。
そのあとそのまま××して
△△してくれたらゲームクリアできる。
さぁしよう!』
・・などと言ったら、
優しい田口といえど、
幻滅して一生口も聞いてもらえなくなるだろう。
「このゲームではメインプレイヤーであるお前の
『心が望む愛の希望』が
ゲームクリア条件として設定される。」
・・つまり、妄想じゃないか・・?
「例えば
『肉欲を伴わない愛を育む』と設定するには
お前が心からそう希望する必要がある。」
「18歳の男がそんな事、
心の底から願えるとか思いますか?
もう、ゲームプレイしないで終わるとか
無理なんですか?」
「ゲームオーバーのペナルティを
受け入れるならできるが、
・・・良いのか?
警告にあった『持っている愛を失う』
という事は、
神器の力であの娘に永遠に嫌われて
終わるという事だぞ?」
ぶっちゃけ、警告なんて読んでなかった。
「ごめんなさい。勘弁してください。」
ツンツンッ
不意に膝の上の握り拳を指で突かれた。
「ええと・・大橋君、
一体誰と話しているんですか?」
田口が困ったように俺を見上げて尋ねる。
エロースが見えていない田口には
不気味に見えるかもしれない。
・・といっても
どこから説明したものかを考えていると
エロースが不意に立ち上がった。
「埒が開かぬから1時間ほど席を外そう。
娘の顔でも見ながら考えをまとめよ。」
エロースが消える。
俺は少しホッとして
目の前の田口を
ぬいぐるみよろしく抱き込んだ。
「誰と話してたかは、後でちゃんと説明する。
ちょっとだけ先に別の話したいんだけど」
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