【R18】翼神のイタズラ PLAYER No.037 大橋道哉の場合

LOADING

星とドライブと

　田口あかり　side.

「ふーー・・高速道路緊張する～～」

　お手洗いを済ませて、
　車内の空ペットボトルを捨てて
　新しい飲み物を買う。

　このサービスエリア限定の
　ラベルが貼られたお茶は・・
　あまり特色のない普通の緑茶だった。
　 
　カシャッ！

「・・・」

　メッセージアプリで
　お茶のラベルの写真を送信して
　考え考え、メッセージを打つ。

『お父さんに車を貸してもらえたので
　星を見に展望台に向かってます。』　

『明日の朝、
　お土産を買って帰ります。
　もし、明日ご迷惑でなければ、
　お土産を持っていこうかなと思います。
　いつでも良いのでお返事くださいね』

　ここまで打って、
　クマさんがお願いしますと
　おねだりしているスタンプを送信した。
　 
　～♪♪
　 
　もう少し休憩するなら
　何か食べようかなぁ・・
　などと考えていたら、
　スマホが鳴る。

　メッセージアプリの通話機能が起動していて、
　そこには”大橋君“の表示。

（・・・？？）

　失礼なメッセージではなかったと思うけど・・
　少し不安になりつつ、通話ボタンを押す。

『あの・・もしもし、大橋君ですか？』
『田口！・・・あ、いや、大橋だけど、
　あの、ゴメンね。
　今、運転中じゃないよね？』

『はい。
　休憩中ですから、大丈夫ですよ。
　どうしたんですか？』

『・・・えと・・俺・・・・』

　いつも元気で快活な大橋君にしては珍しく、
　歯切れが悪い。

『・・・・・』

『あの、大橋君、何かあったんですか？』

『・・いや・・明日・・というか、
　多分1週間くらい会えないんだ。
　だから、お土産のこととかは気にしないで・・』

『そうなんですか・・』

　お喋り好きな大橋君のことなので、
　会えない間に何をする予定なのか、
　楽しそうに話してくれるのを
　期待して続きを待つ。

『あーー・・うん。
　いや、そうじゃなくて・・』

　モゴモゴと言い淀む大橋君は
　本当にいつもとはまったく別人のようだ。
　よく分からないけれど、
　とにかく嫌な予感がする。

『あの！！
　長く会えなくなるなら、
　その前に会いたいです！
　急いでお家に行くので・・
　2時間だけ待っててください！』

　・・まだ小中学生の夏休みには入ってないから、
　家族旅行の車は少なくて
　道路もそこまでは混んでない！
　多分2時間以内には戻れる！
　・・そう思って駐車中の車の方に走る。

『いや・・ホントに大丈夫だから
　・・・・ゴメン俺、
　テンパっちゃってただけで・・』

　電話の先の大橋君の声は
　本当に困っているようなのに、
　まだモゴモゴと本題を話してくれない。

（もし、行って何もなければ、
　帰ればいいだけだし！）

　車の電子キーの『ドアを開く』ボタンを押した時だった。
　 
　―――　来るのか？　歓迎するぞ


（？）

　声が頭の中で響いた気がする。

　開かれたドアの先から
　何かに手を掴まれて
　車の中に勢いよく飛び込んでしまったのは
　その直後のことだった。