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愉快な仲間。
その 1
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疑心暗鬼の目を向けられている。
そりゃそうだ…目を覚ましたら知らないベットに知らない男だ……身の危険を感じない訳にもいくまい。
ぐぅぅぅぅ~~……。
「ん?」
「………。」
「食べるか?」
「………うん。」
女は無造作にピザの一切れを手に取り口に入れる。
「うまっ。」
「カルボナーラも食べるか?」
「うん。」
カルボナーラが入った紙皿 を手にフォークで器用に麺を巻き取り口に運ぶ。
食べている間にキッチンへと行きグラスに氷を入れて戻ってくる。
そんなに時間を掛けたつもりは無かったが…カルボナーラは完食されていた。
何も食べてなかったのだろうか…?
グラスに烏龍茶を注ぐと「ありがと。」と口にする。
女はぐいっと烏龍茶を飲み干してから「ふぅ」とため息をついた。
「ねぇ、ここには1人で住んでるの?」
「あぁ俺1人だ。」
「こんな広い部屋で1人暮らしなんて…お金持ちなんだね…。」
「この部屋の窓から見える景色が好きだからな。」
「ふぅ~ん……もしかして親が医者とか……議員?」
やけに聞いてくるな……余り身の上話は話したくは無いけど、勝手に家に連れてきてしまったし……仕方がない……。
「家族は…いないガキの頃に……な……。」
「あぁ……ごめん…。」
察してくれたのか女のテンションが下がる。
「ねぇ事故だったの?それとも病気……とか?」
死に方が事故や病気だったとしたらそちらの方が断然良かったと今でも思う。それで家族を亡くされた方には申し訳無いが…。
俺の両親は…2人とも俺の目の前で殺された。家族での旅行中の出来事だった。
父親の家族サービスという事で豪華客船での船旅。格安の部屋だったけど幼心には充分な部屋だった。
晩御飯のバイキングを食べて部屋で寛いでいたときだった。
自分が乗っていた船が海賊に襲われたんだ。自分はある人に助けられたが…母は鉈のような刃物で頭を割られ…父親は散弾銃の様なもので胸を打ち貫かれた。
本来ならその様な所業を目のあたりにしたら心が壊れて廃人になったりする恐れがあるのだけれど…。
いや、違う…確かにあの時の俺の心は壊れた…壊された…そんな俺を救ってくれた人がいた。
その人のお陰で俺は助かったし…今も生きていけてる。
その時のお礼をしたいと言っても「なんとかなるかな?と思ったらなんとかなっただけだから。」と返された。
「ふぅ~ん…凄い人だね…。」
「あぁ…本来ならこの部屋の住人になるハズだったんだが…「俺は見下ろすより見上げていたい。あぁ卑屈で言っている訳でないよ。常に目標は高く!ってね。」と断られた。」
「…そんな人…実際にいるなんて……ちょっと信じられないな…。」
心なしか女の表情が曇る。
「で、次はお前の」
「ねえ、貴方の名前は?」
「は?」
「名前。名前が無いと呼べないでしょ?」
「そ…それはそうだが…。」
「そうでしょ。ね、教えて。」
「神代桜華だ…。」
「解った、カミシロさんね。」
「お前の名前は」
「悪いんだけどカミシロさん。お風呂貸して!」
「風呂?」
「そう!もう身体中ベトベトでさ!さっぱりしたいの!お願い。」
「風呂なら向こうのドアの先だ…。」
「ありがと!じゃ借りるね。」
タッタッタ…バタン。
完全にイニシアチブを握られてしまった。
ガチャ。
再び開いたドアから女が顔をだす。
「今度はなんだ?」
「葵。」
「あおい?」
「葵。私の名前。」
そう言ってバタンとドアを閉めて女は姿を消した。
…やれやれ。
そりゃそうだ…目を覚ましたら知らないベットに知らない男だ……身の危険を感じない訳にもいくまい。
ぐぅぅぅぅ~~……。
「ん?」
「………。」
「食べるか?」
「………うん。」
女は無造作にピザの一切れを手に取り口に入れる。
「うまっ。」
「カルボナーラも食べるか?」
「うん。」
カルボナーラが入った紙皿 を手にフォークで器用に麺を巻き取り口に運ぶ。
食べている間にキッチンへと行きグラスに氷を入れて戻ってくる。
そんなに時間を掛けたつもりは無かったが…カルボナーラは完食されていた。
何も食べてなかったのだろうか…?
グラスに烏龍茶を注ぐと「ありがと。」と口にする。
女はぐいっと烏龍茶を飲み干してから「ふぅ」とため息をついた。
「ねぇ、ここには1人で住んでるの?」
「あぁ俺1人だ。」
「こんな広い部屋で1人暮らしなんて…お金持ちなんだね…。」
「この部屋の窓から見える景色が好きだからな。」
「ふぅ~ん……もしかして親が医者とか……議員?」
やけに聞いてくるな……余り身の上話は話したくは無いけど、勝手に家に連れてきてしまったし……仕方がない……。
「家族は…いないガキの頃に……な……。」
「あぁ……ごめん…。」
察してくれたのか女のテンションが下がる。
「ねぇ事故だったの?それとも病気……とか?」
死に方が事故や病気だったとしたらそちらの方が断然良かったと今でも思う。それで家族を亡くされた方には申し訳無いが…。
俺の両親は…2人とも俺の目の前で殺された。家族での旅行中の出来事だった。
父親の家族サービスという事で豪華客船での船旅。格安の部屋だったけど幼心には充分な部屋だった。
晩御飯のバイキングを食べて部屋で寛いでいたときだった。
自分が乗っていた船が海賊に襲われたんだ。自分はある人に助けられたが…母は鉈のような刃物で頭を割られ…父親は散弾銃の様なもので胸を打ち貫かれた。
本来ならその様な所業を目のあたりにしたら心が壊れて廃人になったりする恐れがあるのだけれど…。
いや、違う…確かにあの時の俺の心は壊れた…壊された…そんな俺を救ってくれた人がいた。
その人のお陰で俺は助かったし…今も生きていけてる。
その時のお礼をしたいと言っても「なんとかなるかな?と思ったらなんとかなっただけだから。」と返された。
「ふぅ~ん…凄い人だね…。」
「あぁ…本来ならこの部屋の住人になるハズだったんだが…「俺は見下ろすより見上げていたい。あぁ卑屈で言っている訳でないよ。常に目標は高く!ってね。」と断られた。」
「…そんな人…実際にいるなんて……ちょっと信じられないな…。」
心なしか女の表情が曇る。
「で、次はお前の」
「ねえ、貴方の名前は?」
「は?」
「名前。名前が無いと呼べないでしょ?」
「そ…それはそうだが…。」
「そうでしょ。ね、教えて。」
「神代桜華だ…。」
「解った、カミシロさんね。」
「お前の名前は」
「悪いんだけどカミシロさん。お風呂貸して!」
「風呂?」
「そう!もう身体中ベトベトでさ!さっぱりしたいの!お願い。」
「風呂なら向こうのドアの先だ…。」
「ありがと!じゃ借りるね。」
タッタッタ…バタン。
完全にイニシアチブを握られてしまった。
ガチャ。
再び開いたドアから女が顔をだす。
「今度はなんだ?」
「葵。」
「あおい?」
「葵。私の名前。」
そう言ってバタンとドアを閉めて女は姿を消した。
…やれやれ。
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