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プロローグ ~~今は昔の物語~~
しおりを挟むその村は豊かな生活をおくっていた。
心やさしい村長を筆頭に畑に酪農、狩猟と汗を流していた。
そんな穏やかな生活をしていたある日、太陽が欠けた。
村人は恐ろしいと震える者…これは珍しいと楽観的な者と様々な反応であった。
数日して太陽はもとの姿に戻り村人達は胸を撫で下ろした。
しかし、異変は直ぐそこまで迫ってきていることに誰も気が付いていなかった。
徐々に作物の育ちが悪くなり山からも動物が数が減ってきた。
それでも今年は冬が駆け足で着たからだと村人は問題視していなかった。
呑気にも秋の感謝祭の用意について話し合いをし始めた。
今年は例年より不作の為規模を縮小しよう、いや、こんな時だからこそ備蓄を多少なりとも崩してでも盛り上げて冬に備えよう。
そんな話し合いが平行して進むなか、決定的なことが起こってしまう。
早朝、村のマダム達が旦那の愚痴や息子自慢をしながら朝食の用意のため井戸へと集まる。
これから何を作る?今日の予定は?などと話していると。
「あれ…?」
手押しポンプを何度も押しても出てこない。
何時までたっても水が出ない。
何をやっているんだ。貸してみろ。
マダム達は代わる代わる水を出そうと奮起するが…直ぐに意気消沈。
食の準備前なので汗をかきたくない…手を汚したくないと思っていたマダム達は意を決して井戸の蓋を開けて中を見る。
最初から確認しろと言いたくなるだろうが…汚れないで水がでたらそれでいいと考えている。
井戸の中に土や小石が入らないように気を付けながら開けると…。
そこに見えるはずの水が見えない。
井戸の底の方にあるのではないか?
一番近くの家のマダムが小走りで家に戻って灯りとまだ寝ていたであろう旦那を連れてきた。
寝起きでテンションが低い旦那を誉めて担いでその気にさせてから覗き込んでもらう。
「…あれ??」
覗き込んだ旦那は首をかしげながら戻る。
これは可笑しいと…対には村中の男達が集まって井戸を調べることになった。
1番身軽な男の腹にロープを巻きゆっくりと井戸の底へと下ろしていく。
下ろし始めて5分10分と時間は進んでいき。
「お~い!上げてくれぇぇぇい!!」
その声を合図によしきたと男達はロープを引っ張る。
地上へと戻ってきた男の顔は青ざめいていて…。
「どうだった?水はあったのか?」
「大変なことになってる…。」
「どうした?」
「底にも水がない。井戸の底に大きな横穴が空いていたから、そこから流れていったのだと思う…。」
「そんなバカな…。」
この事は直ぐに村中に行き渡り… 村人は感謝祭どころでは無くなった。
今まで井戸水が少なくなる事はあっても無くなるということは無かったのだから…。
それでも村人達は希望を捨てず、近くに流れる沢の水を汲み上げ、ろ過し沸騰させて浄化した水を飲むようにしたが…これは時間稼ぎ程度の苦肉の策であった。
村人達の頑張りに反してどんどん事態は悪化していった。
作物への水が圧倒的に足りないので、どんどん枯れそれでも辛うじて収穫できた作物は微々たる量。
そればかりか暫くすると、山で見る獣の姿も少なくなってきた。
人に害をなす獣が居なくなるのは山の幸を収穫するのには丁度いいが…食用となる獣達まで姿を見せなくなった。
山に生えている木の実や果実など山野草がまだあるからと言っても今のが無くなると次に収穫出来るのは来年になってしまう…。
しかし食べ物が少ない村人は山に入り少ない収穫するしかない。
次第に沢から取れていた魚も数が減り始め備蓄を崩しても今年の冬は絶望的になってきた。
どうしたものか…。
あの太陽が欠けた日から、今までに無い状態が続いているのは何かの『呪い』ではないのか?と囁きが聞こえ始めた。
しかし、いったい何の呪いなのか?
村長の家に今後についてを話し合う為に集まった重役達が首をかしげる。
幾ら話し合いをしても原因も解決も見付からず…ため息ばかりが木霊する。
トントン…と村長の家のドアのノック音が鳴る。
「失礼しますよ~…。」
不躾に家に入ってきた男。
身なりも汚くギョロギョロとした両眼は黄色く濁っていて皮膚も所々ただれている。
長いこと身体を洗っていないだろう、頭にはハエが飛び回り男のなんとも言い難い体臭が部屋に広がる。
その風貌はどことなく死神を連想させる。
「お前は…!」
この男はいつからか村外れの廃れた豚小屋に住み着いた男で時より小屋の窓からじーっと子供を見つめている。
その風貌も相成って誰も近寄ろうとしない。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…お困りですね~皆さま方…。」
この男を見るのも嫌な1人がその感情を声に出す。
「何をしに来た?ここはお前の来るところではないし!我々もお前に用はない!!さっさと豚小屋に帰れ!!」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…。」
笑った口の間から隙間だらけの歯が見え隠れしている。
「お前は我々をバカにしに来たのか!?」
男の言動が更にカチンとさせる。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…。」
「お前!!!」
男は懐からあるものを取り出してテーブルの真ん中に置く。
「これは!?!?」
目の前には紅く熟した果実が1つ。
大きさはソフトボール位と言ったところか…。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…。」
「これをいったい何処から!?」
「まさか盗んできたのか!?」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…こんな荒れた土地の何処に果実があるのかねぇ~…?」
男は器用に果実を2つに割り口に運ぶ。
しゃりしゃりとした咀嚼音が鳴り…残り半分の果実の蜜が黄色く光る。
汚ならしい男の懐からでた果実だとしても数日まともに食事をしていない者にとってしてはご馳走に見える。
「これは~…旨いね~…。」
しゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃり。
2つに割った果実の残りを口に運ぶ。
ぐぅ~………。
「お~やぁ?ヒヒッ…な~んの音だねぇ…?」
1人が顔を果実のように赤くしていた。
空腹が限界なのだろう。
「それで、何の用でここへ来たんだ?」
「その果実を食べる様を見せつけに来たのか?」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…。」
懐からもう1つの果実を取り出してテーブルへ置く。
「私はねぇ…『神』の友人なんだなぁ…。」
「お前は何を言っているんだ?」
「神は忙しくてな…今手が放せないんだなぁ…。」
「???」
「ふぇっふぇっふぇっ…このままだともっと悲惨なことになるわなぁ~…飲み水は枯れ…食べ物も無い…それに…。」
「それに?」
「ふぇっふぇっ…今年の冬は越せないだろうなぁ~…。」
「ふざけるのもいい加減にしろ!!!」
「さっさと出ていけ!!!」
「ふぇっふぇっふぇっ…私はいつでも納屋にいますのでなぁ……。」
テーブルの上に果実を2つ置いて男は去っていく。
男が家を出るのと入れ違いで村長の娘が部屋に入ってくる。
今年で11歳になる少女。村長の一人娘。
彼女も余りモノを食べていないので痩せていて若干やつれている。
「おとさん、何かあったの…?」
大事な一人娘なので彼女の為にもこの状況を打破しなければと村長は必死になる。
「いや、なんでも無いよ。大丈夫。」
「そう…?」
「さぁ、大事な話し合いだからお前はゆっくりおやすみ。余計な体力を使わないようにね…。」
「うん。」
自室へと戻る娘を窓の外からギョロギョロとした眼が見つめていた。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…。」
次の日また次の日と水が減っていくのが目に見えて解る…あと何日もつのか…。
村人の希望の火も今や風前の灯…。
「せめて…雨さえ降ってくれれば……。」
村長は1人窓から外を見て嘆く。
畑や山が潤ってくれれば…多少なりとも食べ物が育つはず…と願いの眼差しで空を見上げると雲1つ無い快晴…。
ため息をつきながら視線を戻すとテーブルの上に美味しそうな果実が1つ…?
「確か2つの果実があったはず…。」
しゃりしゃりしゃり………。
「ん?」
この音の出所に近づいて行くと、お腹を鳴らした重役の1人が鬼の形相で果実を貪っていた。
「旨い、旨い、これは旨いぞ……。」
しゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃり…。
「お…おい。」
たまらず声をかける村長だが男の食は止まらない。
しゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃり…。
「旨い…旨い…。」
しゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃりしゃり…。
「おいっ!!」
止まらぬ咀嚼に恐怖を感じた村長は男に掴みかかる…。
「放せっ…腹が減ってるんだ!!しゃりしゃりしゃりしゃりしゃり…。」
「落ち着け!しっかりしろ!!」
「しゃりしゃりしゃりしゃりしゃり。」
「落ち着いてくれ!!」
「しゃりしゃりしゃりしゃ…うっぐぐ!!」
突然苦しみ出す男。
「ん?さては喉に詰まらせたな!?」
村長は男の背中を叩く。
「んーっ!んーっ!んーっ…。」
「おい!大丈夫か!?」
「んーっ!んーっ!んー………。」
喉を押さえる手が床に落ちる。
「おい!おい!!」
食べ残りの果実から…果汁の雫が落ちる。
あの男はこの果実をどこから持ってきたのか?
「まさか、本当に『神の友人』なのか…。」
この日を堺に2人、3人と空腹で命を落とす者がでてきた。
既に限界を越えている。
村長は迷ってはいられなかった…なんとかしなければ…。
藁をも掴む思いであの豚小屋に向かい歩き出す。
「なんとか、しなくては…。」
豚小屋に到着すると入り口にあの男が立っていた。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ、いらっしゃい。」
「………。」
「やっと来たねぇ…待ってたよ。」
男の口ぶりは村長が来るのを予期していたかのようだ。
「…お前は本当に『神』の友人なのか?」
「…そうさぁ、ここに来たってことは信用したのだろう?」
「本当になんとか出来るのか…?」
「それは神に聞かないとねぇ…アイツは気紛れなところがあるからねぇ~…ふぇっ、ふぇっ…。」
男はよぼよぼとした足取りで山へと歩き出した。
「では、行ってきますよ~…。」
村長は男の背中が見えなくなるまで見ていた。
次の日になると、再び太陽が欠けた。
今度はどんな災いが起こるのか村人達は恐怖したが逆であった。
今の状況を嘆き枯れた井戸に身を落とそうとした女が井戸の蓋を開けると澄んだ水が直ぐそこまで溢れていた。
とうとう頭が可笑しくなったと女は悲しくなったが幻想の中だとしても水が飲みたいと手を伸ばした。
冷たい…。
今の幻想は温度まで感じるのかと手ですくう。
「………!?」
これは…水だ!!
女は残りの体力を使い皆の元へと走り出した。
「水だ!水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ水だ…!!」
「??」
人が集まる中「井戸に水がっ………!」と言うとそのまま倒れた。
この女はついに狂って妄想を見だしたんだと思われ倒れた女はそのままの状態で放置されたが、何人かがいても立っても居られず井戸に走る。
「水がある!?」
「本当だった!!」
そして、山では首を吊ろうとした老人がいた。
残り僅かな食料を老い先短い自分ではなく、自分の子供や孫へ回すため、少しでも生きていてもらうため、己の命を終わらせようとロープを木に縛る。
梯子に登りロープの輪っかに首を乗せようとすると老人の目の前には大きな果実が実っていた。
「おぉ…?」
反射的に手を伸ばすとバランスを崩して梯子から落ちてしまった。
「痛っ…。」
痛めてしまった腰を擦るとその手には紅い果実が握られている。
老人は慌てながらも袖で果実を拭き、口に運んでみる。
「旨い…。」
老人は見上げるともう1つ生っているのが見えた…いや、1つではない2つ3つ…数えきれないほど実が生っている。
「なんということだ…奇跡だ…!」
老人は「神よ感謝します…。」と果実を頬張り、体力気力が戻っていくのを実感した。
他に生っている果実をもぎ取り服で包み家族の元へと急ぐ。
大事な食料を落とすまいと、老人の手に力が入るが、次の瞬間その手から力が抜け果実を足元へ落としてしまった。
「そんな…まさか……。」
老人の視界では水鳥が大きな魚を頬張っている。
「鳥が…帰ってきた…それに魚もいるのか…?」
老人は果実を拾い次は落とさないようにと改めて強く握り、涙で視界が曇る帰り道をゆっくり歩いた。
「もう大丈夫、大丈夫だぞぅ…。」
老人は自分の家に戻り家族皆で果実を食べながらその事を話す。
希望が見え生気を取り戻した村の男達は山に果実の収穫をしに歩き出した。
半信半疑だった者も居たが熟れた果実を見て目の色が変わった。
背負っている籠が一杯になるまで果実を取ってもまだまだ実っていた。
それどころか、他にもキノコや山菜など山の幸が豊富に実っている。
笑顔で戻ってくる男衆を更なる笑顔で迎えてくれる家族達。
実は山へ収穫に行けない子供達、老人達が水が戻った沢で魚を大量に釣り上げていた。
その夜、村人達は宴を開き大いに盛り上がった。
絶望的な状況からの脱却で皆で幸福に酔いしれていた。
「ふぇっふぇっふぇっ…。」
村長の前にあの男が現れた。
「お前は…本当に神に頼んだのか…?」
「神のヤツめ…気が向いたようだのうぅ…。」
「ありがとう。この村を救ってくれて…お前は英雄だ!!」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ、ところで村長さん…あんたに頼みがあるのだがのぅ…?」
「あぁ、いいとも村の英雄の頼みだ何でも言ってくれ。」
「では、今晩にでも伺いますわなぁ~。」
男は振り返り歩いていく…。
「ん?何処へ行くんだ?」
「ふぇっふぇっふぇっ…人混みが苦手でしてなぁ~…。」
夜も更けて宴も落ち着き村人達は各々家に戻っていった。
明日から忙しい、冬に向けての食料の備蓄を始めなければならない。やることは山ほどある。
トントン…。
家で落ち着いている村長のドアが鳴る。
「おお、来たか?」
「お邪魔しますよぅ。」
「確か頼みごとだったな?何か困ったことでもあるのか?」
「ふぇっふぇっふぇっ…勿体ぶることもなし…村長さん。」
「なんだね?」
「村長さんの娘を嫁にくれんかねぇ~。」
「なんだと!?」
「ふぇっふぇっ、いいんじゃないかね?英雄の嫁。よき響きじゃないかねぇ…。」
「娘はまだ11だぞ?嫁にやるにしても早すぎる!!」
「あ~…よきかな、よきかなぁ~ふぇっふぇっふぇっ…。」
男は両手を擦り合わせてから『パン!』と叩く。
「えぇゆぅの嫁になるのは誉れよのぉぉ…?」
「………あぁ、娘は英雄の嫁……めめ、め…。」
「んん??」
「あー…!だ!駄目だ!!娘は…駄目だ…!」
「ん~…もうひと息だのうぅ。」
「なんの話だ?」
「ふぇっふぇっふぇっ…なぁに、こっちの話だわなぁ~…。」
男は再び『パン!』と手をたたく…。
「ぐぁっ!?あ、頭が…頭が痛い…?」
「おんや~?村長さんは娘のことになると効きが悪いわなぁ~…。」
『パン!』
『パン!』
『パン!』
男が手をたたく度に村長の頭痛が酷くなる…。
「私に何をしたぁ!?」
「ふぇっふぇっ…なぁに…ちょっとなぁ…!」
村長は近くにあった花瓶を手に取り男へと投げる。
「くらえっ!!」
至近距離で投げた花瓶は男顔面に命中。
「ぎゃぁ。」
男はその場に倒れて床一面に男の血が広がっていく。
村長は息を整えながら倒れてる男へ近く。
「なんなんだ?コイツは…。」
近づくにつれ村長の頭にあるイメージがフラッシュバックし更なる頭痛と眩暈が襲ってくる。
「コレは何なんだ!?」
床に膝を着く村長。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「今度は何だ!?」
響く娘の悲鳴に部屋まで行くと鍵がかかっているのか開かない。
「どうした!?おい!開けろ!!」
「お父さん!お父さん!!」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…。」
この笑い声はと倒れている男を振り返ると床一面に広がる血も倒れているはずの男もそこには無かった。
「いったい何がどうなっているんだ!?」
村長は立て掛けてある斧を持ってきてドアを叩き壊す。
「待ってろ待ってろよ!!」
なんとかドアをこじ開けると…。
「どうした………。」
部屋は暗く静かで助けを呼んだ娘も男の姿もない。
血の気の引いた村長は震えながら部屋を探す。
「お~い…どこだ…!お~い…。」
窓も内側の鍵が掛かっているし入り口は1つしかない…どこにも行けるはずがないのだ。
それでも居ない娘とえたいの知れない男…。
村長の目の前は暗くなりそのまま意識を失ってしまった。
次に目を覚ますと。
自分は綺麗な花束で埋め尽くされていた。何事かと思ったが身体は縛られて身動きが出来ない。
「村長…やっと村も良くなるってときに病気なんてなぁ…悔しいなぁ。」
村人が1人また1人と涙を流しながら花を枕元に置いていく。
「これは何の冗談だ!おい!私は死んでいないぞ!!おい!聞いているのか!?」
「ふぇっ…ふぇっ…ふぇっ…。」
あの笑い声が聞こえる。
「英雄様。」
「英雄様。」
「私も最後の挨拶をするけぇ、皆は準備しい…病気は燃やすのが一番だぁ…。」
英雄と呼ばれた男は周りに居た人を散らし村長へと近づく。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…村長さん。」
「貴様…!これはなんだ!どうなっているんだ?お前は何故生きてる!?」
「村長は病死したのだから燃やさんとなぁ~病気が周りに移るとならんからなぁ~…ふぇっふぇっ…。」
「病気だと!?私は生きてるぞ!おーい!皆ー助けてくれー!!おーい!!!」
「ふぇっふぇっ…無駄なんだなぁ~…誰にも村長さんの声は聞こえんのだよ~。」
「どうなってるんだ?」
「ふぇっふぇっふぇっ…解らんことが幸せってこともあるわなぁ~…。」
男は村長に背を向けて村人へ合図を出す。
「燃やせ。」
村長の足元に松明が数本投げられ火が全体に回っていく。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ…。」
村長は燃やされている熱さに加えて頭が割れるような頭痛にも襲われていた。
走馬灯…。
枯れた井戸…。
干からびた沢…。
枯れた樹木…。
走馬灯…。
神の友人…。
熟れた果実…。
死んだはずの男…。
消えた娘…。
走馬灯………?…いや、違う…!!!
井戸には水があった…!
沢の水もあった…!
魚も居た…!
動物も居た…!
果実も実っていた…!
そして………娘は目の前で凌辱されていた…!!
総てあった…目の前にあった…何故見えなかった……。
焼けた涙腺から村長の最後の1滴が溢れたが直ぐに蒸発してしまう。
「………………………………………………………………………………………………………………………!!…………………………………………!!」
村長は声にならない叫び声と共に灰と消えていった。
それをギョロギョロとした眼で見ながら男は笑みを浮かべる。
「ふぇっふぇっふぇっ………。」
男の正体は解らぬままであったが…翌年、死んだ村長の呪いか本物の神の逆鱗に触れたのか、崖崩れに巻き込まれ巨岩に押し潰されて命を落とした。
これは、今は昔の物語………。
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