上 下
13 / 26

恩人

しおりを挟む
 俺が高校の時は文字通りの喧嘩の毎日と言っても過言ではないくらいに暴れてた。そんなときに見かねた剣館長に組手を申し込まれ、やぁーってやるぜ!と意気込んだものの…完敗だった。

 こっちの攻めは多少なりとも当たるのだけど相手は怯まずに攻めてくるし、逆に剣館長の攻撃は全てが俺にクリーンヒットする。そして、拳を通しての会話というのはおかしいが、館長のお陰で色々なことを学ばせてもらった。
「本当の意味」での「力」とは…。


「お久しぶりです、剣館長」

頭を深くさげる。

「おぉ、久しいな七梨よ。元気そうでなによりだ!」

「館長こそ、相変わらずですね」

60歳になる筈だが、姿勢、身体の大きさは俺がここにいたときと変わらない。

「ところで、その娘か?お前が話していた転入希望者は」

「いえ、わたもが!?」

真紀が変なことを言う前に口を抑える。

「そうなんです!せめて高校は卒業させたくて!」

「ふむ、で名前はなんという?」

真紀の口から手を離す。

「ほれ!自己紹介!」

真紀が睨んでくるが仕方がない。

「深川真紀です」

「深川 真紀か…なるほど、ならば!これから転入試験を始める!!」

「はぁ!?」

 真紀の素がでているが、そりゃ当然の態度だと思う。初めて来た高校でロクに説明も受けず転入試験を受けることになるんだもんな。

「え!?でも私何も持ってきてませんよ!それにロクに勉強もしてきてませんし!」

「学力は問題ではない!問題なのは心なのだ!どんなに優秀だろうが!心無くしては真に優れているとは言わん!七梨よ!これから試験を行う故に席を外してくれないか?」

「なら、廊下で待ってますよ」

「うむ!」

 真紀が渾身の睨み付けをしているが…しらなーい!俺は廊下に出る。

 廊下にて学校のお知らせ等が張り出している。
空手部全国制覇達成!とか相撲部準優勝!とか剣道部新人戦優勝とか…格技ばっかりだな。

 5分くらいかな?館長室が開いて真紀が中に招き入れる。

「どうだった?」
「あ、あの」

「合格だ!!深川真紀よ!最後の2学期からになるがここ!覇道館でしっかりと学び!己を鍛え上げ!更なる高みへと目指すのだ!わーっははは!」


 良かった、どうやら合格だったらしい。俺は館長に必要な書類を渡しその場を後にする。そうだ職員室への真紀の紹介を忘れていた!

 先生達への挨拶もそこそこに俺と真紀はバイクへ戻る。

「良かったな!合格して!」
「うん、でもいいのかな?あんなので…」

「あんなの?」

「うん、剣館長から「お前の目指すものはなんだ?」とか「その手で掴みたいものはなんだ?」とかの質問だったよ」

 相変わらず、熱い館長だ。

「そうだ、剣館長がこんなことを言っていたよ」

「ぬ?なんだよ?」

「昔から今も、私は修練を怠っておらん!いつか七梨タカあの男の本気と組み合ってみたいものだってさ」

 はぁ、流石館長だな。一体どこまで見切られてるのやら。武術家としては本気を出さないのは失礼な話なんだけども…恩人相手に本気を出すほど若くないしな。

「まぁ、機会があったらな!」

「なにそれ?」

 不機嫌だった真紀はどこへと行ったのやら、2人で笑いながら七竜へと帰る。

「じゃ、教科書と制服の新しいのは近いうちに家に届くようにするから。」

「うん、分かった。」

 七竜の入り口を開ける。

「いらっしゃいませー!」

 ぬ?真由子ママの声じゃないか。モップを掛けながら声を出していた。

「声だしをさせてるのか?」

「はい、声だしは全ての基本ですからどんな状況でも声を出せるようにしないと。」

 やはり、みどりが店長でいいのでは?と思う。

「ほれ!真紀も行ってこい」

「え?」

「夏休みの間は七竜ここでアルバイトだ!働かざる者食うべからず!ってな!」

「え~!?」

 真紀もみどりに任せて俺は深川新居へと向かう。

 今度は、匡だ。彼もこちらの中学へと移す。そして朝の新聞配達のバイトをさせる予定だ。問題は…ちびっ子達…どうするかな?まだまだ2人で留守番をさせる訳には行かないし…。

 真紀と匡が夏休みの間は時間交代で見てもらって終わったら考えよう!

今日も1日長くなりそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白鬼

藤田 秋
キャラ文芸
 ホームレスになった少女、千真(ちさな)が野宿場所に選んだのは、とある寂れた神社。しかし、夜の神社には既に危険な先客が居座っていた。化け物に襲われた千真の前に現れたのは、神職の衣装を身に纏った白き鬼だった――。  普通の人間、普通じゃない人間、半分妖怪、生粋の妖怪、神様はみんなお友達?  田舎町の端っこで繰り広げられる、巫女さんと神主さんの(頭の)ユルいグダグダな魑魅魍魎ライフ、開幕!  草食系どころか最早キャベツ野郎×鈍感なアホの子。  少年は正体を隠し、少女を守る。そして、少女は当然のように正体に気付かない。  二人の主人公が織り成す、王道を走りたかったけど横道に逸れるなんちゃってあやかし奇譚。  コメディとシリアスの温度差にご注意を。  他サイト様でも掲載中です。

呪いの三輪車――え、これホラー? いや、色々な意味で。

されど電波おやぢは妄想を騙る
キャラ文芸
 表題通り、大枠で合ってます。  ――何処が⁉︎(笑)  ある意味と言うか、色々違う意味でホラー。  作風に抑圧された筆者が、ギャグニウム補填と言う崇高な目的の為に晒している、筆者による筆者の為の筆者的気分転換な内容がないよう〜な怪文書、みたいな?  ふう。  そこ、笑ちゃうトコね。(-.-;)y-~~~  そして原則、全編ギャグです。  そして原則、全編ギャグなんです!  大事なことなので、二度記しておきます。  ま、サラっと読み捨てて下さい。(笑)  ふう。ここも、笑うトコね。(-.-;)y-~~~

カフェひなたぼっこ

松田 詩依
キャラ文芸
 関東圏にある小さな町「日和町」  駅を降りると皆、大河川に架かる橋を渡り我が家へと帰ってゆく。そしてそんな彼らが必ず通るのが「ひより商店街」である。   日和町にデパートなくとも、ひより商店街で揃わぬ物はなし。とまで言わしめる程、多種多様な店舗が立ち並び、昼夜問わず人々で賑わっている昔ながらの商店街。  その中に、ひっそりと佇む十坪にも満たない小さな小さなカフェ「ひなたぼっこ」  店内は六つのカウンター席のみ。狭い店内には日中その名を表すように、ぽかぽかとした心地よい陽気が差し込む。  店先に置かれた小さな座布団の近くには「看板猫 虎次郎」と書かれた手作り感溢れる看板が置かれている。だが、その者が仕事を勤めているかはその日の気分次第。  「おまかせランチ」と「おまかせスイーツ」のたった二つのメニューを下げたその店を一人で営むのは--泣く子も黙る、般若のような強面を下げた男、瀬野弘太郎である。 ※2020.4.12 新装開店致しました 不定期更新※

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。 狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか! 四社の狐に天狐が大集結。 第七弾始動! ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。

下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆ 下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。 車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。 そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。 彼にも何かの能力が? そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__ 雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!? ☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆ イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。

スーサイドアップガール

釧路太郎
キャラ文芸
僕は大学生の時にイギリスから来た小学生のソフィアとアリスと知り合い、いつの間にか僕はアリスと仲良くなっていた。 大学卒業後に母校の教師になった僕。 その数年後にはソフィアの担任になり、ソフィアの立ち上げた部活の顧問にもなっていた。 僕とソフィアは部室でもある視聴覚準備室を舞台に、生徒達の悩みを聞いていくこととなる。 思春期特有の悩みの奥にある何かを探す事で、ソフィアは徐々に成長していく。 この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「ノベルアッププラス」にも掲載しています。

処理中です...