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第90話 曙光
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窶れ果てた表情のまま雪兎は夜の帳に包まれた街を、荒野を、放棄された基地を黙って歩き渡っていく。
ただでさえ数少ない人類の生存可能地域にも関わらず、雪兎の視界の中には明かり一つ入らない。
神話級害獣の侵攻を恐れて逃げたのか、せめて一矢報いようと戦いに赴いたのかは定かではないが、唯一確実なのはサンドマンと雪兎の戦いが社から遠い所で生きる人々にまで影響を及ぼしていたことだけ。
『こうやって遠出するのも懐かしいですねユーザー、昔一緒に首領に地獄のハイキングに引っ張り出されたときのことを思い出すようです』
『そんな馬鹿げたことをやってたのかリンは。 自分が出来ることは努力を重ねれば他人も出来るようになると考える悪癖は結局抜けなかったんだね……』
天に輝く月の光を浴びて黄金の髪をきらきらと瞬かせながらカルマが懐かしげに語ると、それを聞いたグレイスが呆れたような表情をして天を仰ぐ。
誰にも邪魔をされずこうやって雪兎と一緒にいられるのが嬉しいのか、珍しくカルマの表情は明るく綻んでおり、苦笑いしながら応対するグレイスの心中も釣られるように緩んでいった。
既にカルマもグレイスも雪兎が向かっている場所を察しているのか、出発直後のような深い懸念は拭われ、二人の取り留めも無い雑談が黙って先を歩く雪兎の鼓膜を揺らす。
しかし二人の態度と反して雪兎の表情は依然として固く、口を開く素振りすら見せない。
ただ延々と歩いて歩いて歩き続け、ようやく辿り着いたのは雪兎自身も建設に参加した要塞都市。
胸を焦がすような憎しみを抱きながらも、命を賭して雪兎を救った女傑が今も昏々と眠り続ける場所。
「ジェスター、結局僕も君と同じムジナの穴だった。 必死になって君を止めようとしたけど、同じ立場になった途端に僕も迷わず君と同じ選択をした。 挙げ句の果て、殺された人自身に引き留められる立場になってしまったよ」
蚕魂とジェスターを取り込んだまま未だに動かない繭のそばまで、雪兎はゆっくりと歩み寄りつつぼんやりと話しかける。
誰かに同意を求める訳でも否定されたがっている訳でもなく、胸を引き裂かれそうな悲しみから少しでも逃れようと、雪兎は眠り続けるジェスターへ言葉を紡ぐ。
この星で唯一、自分と同じ感情を共有できるであろう者へ縋るように。
「あの人はそんなことを望んでいないって、そんな無責任なことをする奴は皆殺しにしてやろうと思っていたけど、まさか本当に哀華さんが止めようとするなんて……こんな残酷なこと僕は信じたくなかったんだ……!」
正負問わずあらゆる感情の坩堝となった自らの心に翻弄され、雪兎は無意識のうちに掌から血が滴るほどの剛力で両手を握り込みながら言葉を振り絞ると、ふとよろめいた身体を咄嗟に繭を掴んで支えた。
滑らかな手触りの奧から微かに響いてくる何かの鼓動。
それがまだジェスターの生命の証であることを願いながら、雪兎は繭の表面で手から血を拭いつつ項垂れた。
「あの砂野郎はどんな手段を使っても何年かかっても何処まで逃げても必ず見つけ出して殺す。 だがそのあと、僕はあいつらをどうするべきなんだろうな」
奪われ穢された憎しみを晴らすべきか、それとも哀華が示した慈悲に準じるべきなのか、衆愚の醜い笑みと雪兎の目の前で生を受けた赤ん坊の泣き顔が同時に脳裏を過り、苦悩する。
しかしそうやって考え込むのも束の間、掌から感じる鼓動が突然強まったのを感じた刹那、雪兎はカルマとグレイスを咄嗟に抱きかかえて跳躍した。
『ちょっと、どうされたのです!?』
「分からない! でも碌でもない何かが出て来るってのだけは理解できる!」
鉄獄蛇や星海魔にも酷似した圧倒的な気配を察した雪兎が爪と牙を剥き出しにして遠のくと共に、雪兎の血痕が付着した部分からゆっくりと繭が割れ、内部で健やかに成長してきたものが真っ赤な粘液と半透明な液体を撒き散らしつつ外気に身を晒す。
ギリシア彫刻の如く筋骨隆々とした肉体と骨格を持ち、伸縮自在の成長金属の皮膚を全身に纏わせ、絹のようにしなやかな紐状の物体で雄々しい翼と頭髪を形成した天使。
再構成元となった蚕魂とは似ても似つかない獣。
それは破れた繭からゆっくりと上半身を抜き出すと、不気味な沈黙を保ったまま3人を見下ろした。
『蝕甚天!?』
『馬鹿な! ただの細胞から本人が湧いて出てくるなんて有り得ないぞ!』
以前雪兎に語っていた世界樹自身の血を受け継ぐ三体のうち最後の一体。
それが突然至近距離に現れたことにカルマとグレイスは驚愕し、急いでドラグリヲを生成しようと周囲の物体を取り込み始める。
間合いから考えても到底間に合わないことは目に見えているが、当の蝕甚天自身は全く殺気を見せないまま佇み続ける。
まるで足下で這い回る虫に一切興味を示さない人間のように。
その様に雪兎は訝しいものを感じるも、星海魔にそのまま言葉が通じたことを思い出し危険も顧みず声を張り上げた。
「お前がどういう存在で何故今さらツラを出したか何てどうだっていいが一つだけ答えろ! ジェスターは……その繭の中にいたはずの女性はどうしたんだ!」
カルマとグレイスから注意を逸らすよう位置取りをし、圧倒的な存在感に気圧されないよう牙を噛み締めながら敵の動きを待つ雪兎。
離脱か応答かそれとも攻撃か相手の出方が一切見えず、極度の緊張が微かな震えという形なって牙を鳴らす。
病的と言っても過言ではない神経質な雪兎の行動。
それに対し蝕甚天の反応はとても軽くフランクなものだった。 壁の中へ溶けていくカルマとグレイスの姿を一瞥した後、その筋骨隆々とした天使は自らの手で喉元の皮を引き剥がし、その奧で昏々と眠るジェスターと思われる小麦色の柔らかな肢体を指し示して見せる。
心配は無用であると、わざわざ敵である雪兎を気遣うよう顔の筋肉を微笑むように変形させる余裕さえ見せた。
「生きて……いるのか……!?」
安堵と戸惑いの入り混じった表情を浮かべて雪兎が再度問いかけると、蝕甚天は人間の笑みのもの真似を続けながら黙って頷く。
そして隆々とした両腕を組んだまま上空へ飛び立ち、眼下にいる3人を挑発するかのように手招きをすると、そのまま地平の彼方へ消えていった。
微かな黄金の軌跡を残して。
『呼んでいるのですか? 敵であるはずの彼が私達を?』
『どうやらそうみたいだ。 俺の身体に宿る世界樹の細胞が教えてくれている。 俺達が殺すべき奴が一体どこに隠れ潜んでいるのかを』
『……どうするのですユーザー、奴が正しい情報を伝えているとも限らないのですよ』
グレイスの言葉を疑っている訳ではないが、仮にも敵である相手が一方的に示してきたことを鵜呑みには出来ないとカルマは誰よりも信頼する主の返答をただジッと待つ。
もっとも、生きているジェスターの姿を見せ付けられた雪兎の答えは最初から決まっていた。
「奴が僕を騙くらかすつもりならその理不尽を真正面から叩き潰す。 そうでないのなら臨機応変に考えて対処するまでの話だ」
『はぁ、そうですよね。 当然行きますよね貴方なら』
一瞬咎めるような表情を浮かべるが、これでこそ己の主人であるとすぐさま気持ちを改めると、グレイスと意識を同調させて地面の下で生成を完了をした雪兎の現し身同然のものを目覚めさせた。
直後、天と地を揺るがす咆哮が轟くと共に、陰陽の力を体現する鋼の龍が天を貫いた。
既に開放されていたコックピット内部に雪兎を回収して全ての機能を覚醒させたその龍は、蝕甚天の残した軌跡が浮かぶ方角へ機首を向けると、ゆっくりと上昇を開始する。
するとその時、ちょうど夜明けを迎えたようで丸まった水平線の向こうから太陽が昇り始めていた。
暗黒からやがては青へと徐々に白んでいく空の下を、ドラグリヲはゆっくりと音もなく穏やかに羽ばたく。
「……ちょっと眩しいな」
眩すぎる光を少しでも避けるため、雪兎はカメラアイを下方向へ動かす。
別に何か思ったわけではなくただ反射的に行った行動であったが、改めて映し出された光景を見て雪兎は思わず目を見開いた。
新たにメインモニターへ投影されたのは、シャチ型生体戦艦の修復を急ぐ人々の背中と、ドラグリヲの背中に悪意ではない視線を投げ掛ける民衆と、各々言いたいことを胸に収めて雪兎を見送る七人の意思。
『兄ちゃんどうした? なんか変な物でも見えたのかい?』
「さあ、どうだか」
ほんのちょっと目尻を緩ませた雪兎を訝しむようにグレイスがサブモニターに顔を出すと、雪兎は適当にはぐらかして一気にドラグリヲの出力を上げた。
今さら掌を返した人の視線を避けるのか、それともただの照れ隠しなのか、その理由を雪兎以外誰にも知れないままドラグリヲは咆哮と共に高度を上昇させ、雲の向こうへと姿を消した。
勇ましい咆哮の残滓たる山彦を微かに残して。
ただでさえ数少ない人類の生存可能地域にも関わらず、雪兎の視界の中には明かり一つ入らない。
神話級害獣の侵攻を恐れて逃げたのか、せめて一矢報いようと戦いに赴いたのかは定かではないが、唯一確実なのはサンドマンと雪兎の戦いが社から遠い所で生きる人々にまで影響を及ぼしていたことだけ。
『こうやって遠出するのも懐かしいですねユーザー、昔一緒に首領に地獄のハイキングに引っ張り出されたときのことを思い出すようです』
『そんな馬鹿げたことをやってたのかリンは。 自分が出来ることは努力を重ねれば他人も出来るようになると考える悪癖は結局抜けなかったんだね……』
天に輝く月の光を浴びて黄金の髪をきらきらと瞬かせながらカルマが懐かしげに語ると、それを聞いたグレイスが呆れたような表情をして天を仰ぐ。
誰にも邪魔をされずこうやって雪兎と一緒にいられるのが嬉しいのか、珍しくカルマの表情は明るく綻んでおり、苦笑いしながら応対するグレイスの心中も釣られるように緩んでいった。
既にカルマもグレイスも雪兎が向かっている場所を察しているのか、出発直後のような深い懸念は拭われ、二人の取り留めも無い雑談が黙って先を歩く雪兎の鼓膜を揺らす。
しかし二人の態度と反して雪兎の表情は依然として固く、口を開く素振りすら見せない。
ただ延々と歩いて歩いて歩き続け、ようやく辿り着いたのは雪兎自身も建設に参加した要塞都市。
胸を焦がすような憎しみを抱きながらも、命を賭して雪兎を救った女傑が今も昏々と眠り続ける場所。
「ジェスター、結局僕も君と同じムジナの穴だった。 必死になって君を止めようとしたけど、同じ立場になった途端に僕も迷わず君と同じ選択をした。 挙げ句の果て、殺された人自身に引き留められる立場になってしまったよ」
蚕魂とジェスターを取り込んだまま未だに動かない繭のそばまで、雪兎はゆっくりと歩み寄りつつぼんやりと話しかける。
誰かに同意を求める訳でも否定されたがっている訳でもなく、胸を引き裂かれそうな悲しみから少しでも逃れようと、雪兎は眠り続けるジェスターへ言葉を紡ぐ。
この星で唯一、自分と同じ感情を共有できるであろう者へ縋るように。
「あの人はそんなことを望んでいないって、そんな無責任なことをする奴は皆殺しにしてやろうと思っていたけど、まさか本当に哀華さんが止めようとするなんて……こんな残酷なこと僕は信じたくなかったんだ……!」
正負問わずあらゆる感情の坩堝となった自らの心に翻弄され、雪兎は無意識のうちに掌から血が滴るほどの剛力で両手を握り込みながら言葉を振り絞ると、ふとよろめいた身体を咄嗟に繭を掴んで支えた。
滑らかな手触りの奧から微かに響いてくる何かの鼓動。
それがまだジェスターの生命の証であることを願いながら、雪兎は繭の表面で手から血を拭いつつ項垂れた。
「あの砂野郎はどんな手段を使っても何年かかっても何処まで逃げても必ず見つけ出して殺す。 だがそのあと、僕はあいつらをどうするべきなんだろうな」
奪われ穢された憎しみを晴らすべきか、それとも哀華が示した慈悲に準じるべきなのか、衆愚の醜い笑みと雪兎の目の前で生を受けた赤ん坊の泣き顔が同時に脳裏を過り、苦悩する。
しかしそうやって考え込むのも束の間、掌から感じる鼓動が突然強まったのを感じた刹那、雪兎はカルマとグレイスを咄嗟に抱きかかえて跳躍した。
『ちょっと、どうされたのです!?』
「分からない! でも碌でもない何かが出て来るってのだけは理解できる!」
鉄獄蛇や星海魔にも酷似した圧倒的な気配を察した雪兎が爪と牙を剥き出しにして遠のくと共に、雪兎の血痕が付着した部分からゆっくりと繭が割れ、内部で健やかに成長してきたものが真っ赤な粘液と半透明な液体を撒き散らしつつ外気に身を晒す。
ギリシア彫刻の如く筋骨隆々とした肉体と骨格を持ち、伸縮自在の成長金属の皮膚を全身に纏わせ、絹のようにしなやかな紐状の物体で雄々しい翼と頭髪を形成した天使。
再構成元となった蚕魂とは似ても似つかない獣。
それは破れた繭からゆっくりと上半身を抜き出すと、不気味な沈黙を保ったまま3人を見下ろした。
『蝕甚天!?』
『馬鹿な! ただの細胞から本人が湧いて出てくるなんて有り得ないぞ!』
以前雪兎に語っていた世界樹自身の血を受け継ぐ三体のうち最後の一体。
それが突然至近距離に現れたことにカルマとグレイスは驚愕し、急いでドラグリヲを生成しようと周囲の物体を取り込み始める。
間合いから考えても到底間に合わないことは目に見えているが、当の蝕甚天自身は全く殺気を見せないまま佇み続ける。
まるで足下で這い回る虫に一切興味を示さない人間のように。
その様に雪兎は訝しいものを感じるも、星海魔にそのまま言葉が通じたことを思い出し危険も顧みず声を張り上げた。
「お前がどういう存在で何故今さらツラを出したか何てどうだっていいが一つだけ答えろ! ジェスターは……その繭の中にいたはずの女性はどうしたんだ!」
カルマとグレイスから注意を逸らすよう位置取りをし、圧倒的な存在感に気圧されないよう牙を噛み締めながら敵の動きを待つ雪兎。
離脱か応答かそれとも攻撃か相手の出方が一切見えず、極度の緊張が微かな震えという形なって牙を鳴らす。
病的と言っても過言ではない神経質な雪兎の行動。
それに対し蝕甚天の反応はとても軽くフランクなものだった。 壁の中へ溶けていくカルマとグレイスの姿を一瞥した後、その筋骨隆々とした天使は自らの手で喉元の皮を引き剥がし、その奧で昏々と眠るジェスターと思われる小麦色の柔らかな肢体を指し示して見せる。
心配は無用であると、わざわざ敵である雪兎を気遣うよう顔の筋肉を微笑むように変形させる余裕さえ見せた。
「生きて……いるのか……!?」
安堵と戸惑いの入り混じった表情を浮かべて雪兎が再度問いかけると、蝕甚天は人間の笑みのもの真似を続けながら黙って頷く。
そして隆々とした両腕を組んだまま上空へ飛び立ち、眼下にいる3人を挑発するかのように手招きをすると、そのまま地平の彼方へ消えていった。
微かな黄金の軌跡を残して。
『呼んでいるのですか? 敵であるはずの彼が私達を?』
『どうやらそうみたいだ。 俺の身体に宿る世界樹の細胞が教えてくれている。 俺達が殺すべき奴が一体どこに隠れ潜んでいるのかを』
『……どうするのですユーザー、奴が正しい情報を伝えているとも限らないのですよ』
グレイスの言葉を疑っている訳ではないが、仮にも敵である相手が一方的に示してきたことを鵜呑みには出来ないとカルマは誰よりも信頼する主の返答をただジッと待つ。
もっとも、生きているジェスターの姿を見せ付けられた雪兎の答えは最初から決まっていた。
「奴が僕を騙くらかすつもりならその理不尽を真正面から叩き潰す。 そうでないのなら臨機応変に考えて対処するまでの話だ」
『はぁ、そうですよね。 当然行きますよね貴方なら』
一瞬咎めるような表情を浮かべるが、これでこそ己の主人であるとすぐさま気持ちを改めると、グレイスと意識を同調させて地面の下で生成を完了をした雪兎の現し身同然のものを目覚めさせた。
直後、天と地を揺るがす咆哮が轟くと共に、陰陽の力を体現する鋼の龍が天を貫いた。
既に開放されていたコックピット内部に雪兎を回収して全ての機能を覚醒させたその龍は、蝕甚天の残した軌跡が浮かぶ方角へ機首を向けると、ゆっくりと上昇を開始する。
するとその時、ちょうど夜明けを迎えたようで丸まった水平線の向こうから太陽が昇り始めていた。
暗黒からやがては青へと徐々に白んでいく空の下を、ドラグリヲはゆっくりと音もなく穏やかに羽ばたく。
「……ちょっと眩しいな」
眩すぎる光を少しでも避けるため、雪兎はカメラアイを下方向へ動かす。
別に何か思ったわけではなくただ反射的に行った行動であったが、改めて映し出された光景を見て雪兎は思わず目を見開いた。
新たにメインモニターへ投影されたのは、シャチ型生体戦艦の修復を急ぐ人々の背中と、ドラグリヲの背中に悪意ではない視線を投げ掛ける民衆と、各々言いたいことを胸に収めて雪兎を見送る七人の意思。
『兄ちゃんどうした? なんか変な物でも見えたのかい?』
「さあ、どうだか」
ほんのちょっと目尻を緩ませた雪兎を訝しむようにグレイスがサブモニターに顔を出すと、雪兎は適当にはぐらかして一気にドラグリヲの出力を上げた。
今さら掌を返した人の視線を避けるのか、それともただの照れ隠しなのか、その理由を雪兎以外誰にも知れないままドラグリヲは咆哮と共に高度を上昇させ、雲の向こうへと姿を消した。
勇ましい咆哮の残滓たる山彦を微かに残して。
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