160 / 173
後編#3
最終話
しおりを挟む
最終話
『いや~。話しすぎちまったな。今日は付き合ってくれてありがとな。今日の追悼はこれで終わりだ』
その場で解散となりそれぞれ単車に乗った者から引き上げていったが樹はまだそこから動かなかった。
まだ名残惜しい気持ちがやはりあるのだ。
誰よりも大切な親友が目の前で自分をかばって撃たれて死んだのだ。そんなすぐ立ち直れる訳はない。
静火と唯がそれを見て一緒に残った。3人はしばらく何も言わず、ただ海を眺めていた。
『ずっとそこにいるつもりかい?』
声がして3人が振り向くと豹那が1人立っていた。どうやら海を眺める3人をずっと後ろで見ていたらしい。
豹那はタバコに火をつけると歩いて向かってきた。そして樹の隣まで来るとドサッと腰を下ろした。
『ここにはさ、死んで灰になっちまったあたしのガキが砂と風になっているんだよ』
『…え?』
樹は思わず顔を見てしまった。そんな話は聞いたことがない。いや、それはそうかと思いながらも樹はリアクションに困ってしまった。静火も唯もだ。
『…まぁだからそういう訳でね、あんたの気持ちは分かるつもりだよ』
豹那はタバコをただ咥えたまま遠くの方を見つめている。
『あたしがそうなんだよ。忘れようとしても忘れられなくて、結局こんな目の前にマンション借りてまで戻って来ちまってさ。望まない死の、それを受け入れられないで生きることのその辛さって言ったらね、ひどいもんさ。未だに赤ん坊の夢にうなされる』
樹は話に聞くアイドルになるはずだったのにならなかった理由というのがそれであるらしいと理解した。
『だからさ、あんたにはね、あたしみたいになってほしくなかったんだ』
豹那はポケットから白い百合の花を2つ取り出した。花の根元で茎がカットされている。
『あたしは気が向いたら1人でここに花を持ってくるんだ。今度からお前の友達にも持ってくることにするよ。あのアホは面倒見てやるからガキのことよろしく頼むよってね。あんたのこと死んでも守ってくれるような奴だ。きっとガキの面倒位見てくれるんだろ?』
樹は目を涙でいっぱいにした。
『あぁ…優子なら…間違いねぇよ…』
きっと立派に育ててくれる。樹はそう確信するように声を絞り出した。
『さて、早速だ。どっかのバカに付き合ったせいで腹減っちまったよ。お前たちウチでご飯食べていきなよ。仕方ないからあたしがご馳走しよう』
あたしもだよ優子。あんたのこと、ずっとずっと大好きだよ。
どこにいてもずーっと一緒だよ。
優子は最後樹の腕の中で眠りについた。それは豹那が言うように望まない死だったかもしれない。
でもきっと、それが優子の1番望む死に方だったのだ。
樹の中ではツラい記憶として生き続けていくかもしれないが
優子の中では永遠に幸せな記憶として残るのだろう…残るのだろう…残るのだろう…
『いや~。話しすぎちまったな。今日は付き合ってくれてありがとな。今日の追悼はこれで終わりだ』
その場で解散となりそれぞれ単車に乗った者から引き上げていったが樹はまだそこから動かなかった。
まだ名残惜しい気持ちがやはりあるのだ。
誰よりも大切な親友が目の前で自分をかばって撃たれて死んだのだ。そんなすぐ立ち直れる訳はない。
静火と唯がそれを見て一緒に残った。3人はしばらく何も言わず、ただ海を眺めていた。
『ずっとそこにいるつもりかい?』
声がして3人が振り向くと豹那が1人立っていた。どうやら海を眺める3人をずっと後ろで見ていたらしい。
豹那はタバコに火をつけると歩いて向かってきた。そして樹の隣まで来るとドサッと腰を下ろした。
『ここにはさ、死んで灰になっちまったあたしのガキが砂と風になっているんだよ』
『…え?』
樹は思わず顔を見てしまった。そんな話は聞いたことがない。いや、それはそうかと思いながらも樹はリアクションに困ってしまった。静火も唯もだ。
『…まぁだからそういう訳でね、あんたの気持ちは分かるつもりだよ』
豹那はタバコをただ咥えたまま遠くの方を見つめている。
『あたしがそうなんだよ。忘れようとしても忘れられなくて、結局こんな目の前にマンション借りてまで戻って来ちまってさ。望まない死の、それを受け入れられないで生きることのその辛さって言ったらね、ひどいもんさ。未だに赤ん坊の夢にうなされる』
樹は話に聞くアイドルになるはずだったのにならなかった理由というのがそれであるらしいと理解した。
『だからさ、あんたにはね、あたしみたいになってほしくなかったんだ』
豹那はポケットから白い百合の花を2つ取り出した。花の根元で茎がカットされている。
『あたしは気が向いたら1人でここに花を持ってくるんだ。今度からお前の友達にも持ってくることにするよ。あのアホは面倒見てやるからガキのことよろしく頼むよってね。あんたのこと死んでも守ってくれるような奴だ。きっとガキの面倒位見てくれるんだろ?』
樹は目を涙でいっぱいにした。
『あぁ…優子なら…間違いねぇよ…』
きっと立派に育ててくれる。樹はそう確信するように声を絞り出した。
『さて、早速だ。どっかのバカに付き合ったせいで腹減っちまったよ。お前たちウチでご飯食べていきなよ。仕方ないからあたしがご馳走しよう』
あたしもだよ優子。あんたのこと、ずっとずっと大好きだよ。
どこにいてもずーっと一緒だよ。
優子は最後樹の腕の中で眠りについた。それは豹那が言うように望まない死だったかもしれない。
でもきっと、それが優子の1番望む死に方だったのだ。
樹の中ではツラい記憶として生き続けていくかもしれないが
優子の中では永遠に幸せな記憶として残るのだろう…残るのだろう…残るのだろう…
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
暴走♡アイドル ~ヨアケノテンシ~
雪ノ瀬瞬
青春
アイドルになりたい高校1年生。暁愛羽が地元神奈川の小田原で友達と暴走族を結成。
神奈川は横浜、相模原、湘南、小田原の4大暴走族が敵対し合い、そんな中たった数人でチームを旗揚げする。
しかし4大暴走族がにらみ合う中、関東最大の超大型チーム、東京連合の魔の手が神奈川に忍びより、愛羽たちは狩りのターゲットにされてしまう。
そして仲間は1人、また1人と潰されていく。
総員1000人の東京連合に対し愛羽たちはどう戦うのか。
どうすれば大切な仲間を守れるのか。
暴走族とは何か。大切なものは何か。
少女たちが悩み、葛藤した答えは何なのか。
それは読んだ人にしか分からない。
前髪パッツンのポニーテールのチビが強い!
そして飛ぶ、跳ぶ、翔ぶ!
暴走アイドルは出てくるキャラがみんなカッコいいので、きっとアイドルたちがあなたの背中も押してくれると思います。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
その花は、夜にこそ咲き、強く香る。
木立 花音
青春
『なんで、アイツの顔見えるんだよ』
相貌失認(そうぼうしつにん)。
女性の顔だけ上手く認識できないという先天性の病を発症している少年、早坂翔(はやさかしょう)。
夏休みが終わった後の八月。彼の前に現れたのは、なぜか顔が見える女の子、水瀬茉莉(みなせまつり)だった。
他の女の子と違うという特異性から、次第に彼女に惹かれていく翔。
中学に進学したのち、クラスアート実行委員として再び一緒になった二人は、夜に芳香を強めるという匂蕃茉莉(においばんまつり)の花が咲き乱れる丘を題材にして作業にはいる。
ところが、クラスアートの完成も間近となったある日、水瀬が不登校に陥ってしまう。
それは、彼女がずっと隠し続けていた、心の傷が開いた瞬間だった。
※第12回ドリーム小説大賞奨励賞受賞作品
※表紙画像は、ミカスケ様のフリーアイコンを使わせて頂きました。
※「交錯する想い」の挿絵として、テン(西湖鳴)様に頂いたファンアートを、「彼女を好きだ、と自覚したあの夜の記憶」の挿絵として、騰成様に頂いたファンアートを使わせて頂きました。ありがとうございました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
暴走♡アイドル2 ~ヨゾラノナミダ~
雪ノ瀬瞬
青春
夏だ!旅行だ!大阪だ!
暁愛羽は神奈川の暴走族「暴走愛努流」の総長。
関東最大級の東京連合と神奈川4大暴走族や仲間たちと激闘を繰り広げた。
夏休みにバイク屋の娘月下綺夜羅と東京連合の総長雪ノ瀬瞬と共に峠に走りに来ていた愛羽は、大阪から1人で関東へ走りに来ていた謎の少女、風矢咲薇と出会う。
愛羽と綺夜羅はそれぞれ仲間たちと大阪に旅行に行くと咲薇をめぐったトラブルに巻きこまれ、関西で連続暴走族襲撃事件を起こす犯人に綺夜羅が斬られてしまう。
その裏には1人の少女の壮絶な人生が関係していた。
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
未完成の絵
倉木元貴
青春
高校2年生の本庄《ほんじょう》いちこは、毎日同じ時間のバスに乗って登下校をしている。そんな生活を1年以上続けているせいで、毎日同じ顔合わせで、誰がどこで乗り降りするかも覚えてしまっていた。そんな毎日に飽き飽きしていたある日、いちこと同じくらいの男子がバスに乗っていた。虚しげで寂しげな彼の横顔に惹かれてしまったいちこであったが、過去に1度失敗をしており、物事全てに消極的であった。「私なんかが」と躊躇しているうちに彼がバスから姿を消す。再び彼がバスに現れた時、いちこは話しかけることができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる