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中編
緊急事態宣言
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作戦会議が終わり解散した後、豹那はある所に寄っていた。
伴の病院だ。
伴は事故で顔にひどい傷を負ってしまったことから、愛羽たちや夜叉猫のメンバーとすら会おうとしなかった。
それどころか龍玖にさえもだ。
本人が強く拒絶する以上は誰もどうにもできず、結局伴からはまだ何も話を聞けていなかった。
豹那は伴の病室の前まで行くとノックした。
『生きてるのかい?』
中からは何も返事がない。
『寝てるってことにしてバックレか?』
部屋の明かりはついている。まだ9時前だ。さすがに寝てはいないだろう。
『…おい…黙ってないでなんとか言ったらどうなんだい?』
中からは物音1つ聞こえない。
『…くそ野郎…生きてて良かったじゃないか。ガキ庇って事故ったって?人が良いにも程があるんだよ…バカ…』
顔に深い傷を負ったらしいことは病院側から聞いている。
それが彼女にとって相当心に傷がつく程のものであることも。
『いいか如月。あたしらは愛羽たちと土曜日CRSをぶっ殺してくる。お前の気がそれで済むとは思わないけどね、あたしたちは絶対に勝つと約束してやる。仕方がないから、お前の仇を必ず取ってきてやる。だから…』
あたしは悪修羅嬢王。仲間なんていらない。
この世の全てを滅ぼせと悪魔と修羅があたしに言ったんだ。
だけど、この何ヵ月かで随分変わっちまった。
『全部、片付いた時には…』
「ねぇ緋薙。今度一緒にお買い物に行きましょう?あなたどこのブランドが好きなの?服を買って、それからオシャレなレストランでランチでもしましょうよ。あなたの趣味とか気になるわ」
突っぱねる自分にニコニコしながらつきまとう伴を、心のどこかでは豹那も気を許してしまっていることに気付いていた。
大阪の時にはわざわざ神奈川から自分を助けに来た。
「緋薙。あなたはもう1人なんかじゃないわ」
『おい…如月…』
豹那は震えていた。
『お前をそんなにしやがったのは、どこのどいつだい?教えてくれ…何があったのか…誰にやられたのか…』
部屋の中から伴のすすり泣く様子が窺えた。
しかし返事はやはりなかった。
この扉の向こうにいる、自分を友達と言ってくれた伴をそんな目に合わせた敵を豹那は許せなかった。
たとえそこにどんな理由があろうとだ。
『…帰るよ。お前、食事はちゃんと取ってるんだろうね?』
最後まで伴は何も言わず、豹那は伴の病室から離れていった。
『…まぁ…無理にとは言わないさ…』
伴の病院だ。
伴は事故で顔にひどい傷を負ってしまったことから、愛羽たちや夜叉猫のメンバーとすら会おうとしなかった。
それどころか龍玖にさえもだ。
本人が強く拒絶する以上は誰もどうにもできず、結局伴からはまだ何も話を聞けていなかった。
豹那は伴の病室の前まで行くとノックした。
『生きてるのかい?』
中からは何も返事がない。
『寝てるってことにしてバックレか?』
部屋の明かりはついている。まだ9時前だ。さすがに寝てはいないだろう。
『…おい…黙ってないでなんとか言ったらどうなんだい?』
中からは物音1つ聞こえない。
『…くそ野郎…生きてて良かったじゃないか。ガキ庇って事故ったって?人が良いにも程があるんだよ…バカ…』
顔に深い傷を負ったらしいことは病院側から聞いている。
それが彼女にとって相当心に傷がつく程のものであることも。
『いいか如月。あたしらは愛羽たちと土曜日CRSをぶっ殺してくる。お前の気がそれで済むとは思わないけどね、あたしたちは絶対に勝つと約束してやる。仕方がないから、お前の仇を必ず取ってきてやる。だから…』
あたしは悪修羅嬢王。仲間なんていらない。
この世の全てを滅ぼせと悪魔と修羅があたしに言ったんだ。
だけど、この何ヵ月かで随分変わっちまった。
『全部、片付いた時には…』
「ねぇ緋薙。今度一緒にお買い物に行きましょう?あなたどこのブランドが好きなの?服を買って、それからオシャレなレストランでランチでもしましょうよ。あなたの趣味とか気になるわ」
突っぱねる自分にニコニコしながらつきまとう伴を、心のどこかでは豹那も気を許してしまっていることに気付いていた。
大阪の時にはわざわざ神奈川から自分を助けに来た。
「緋薙。あなたはもう1人なんかじゃないわ」
『おい…如月…』
豹那は震えていた。
『お前をそんなにしやがったのは、どこのどいつだい?教えてくれ…何があったのか…誰にやられたのか…』
部屋の中から伴のすすり泣く様子が窺えた。
しかし返事はやはりなかった。
この扉の向こうにいる、自分を友達と言ってくれた伴をそんな目に合わせた敵を豹那は許せなかった。
たとえそこにどんな理由があろうとだ。
『…帰るよ。お前、食事はちゃんと取ってるんだろうね?』
最後まで伴は何も言わず、豹那は伴の病室から離れていった。
『…まぁ…無理にとは言わないさ…』
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