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中編

やっと会えたと思ったら

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『やぁやぁ!お前がアカツキアイハか!』

 戦国原から連絡を受け愛羽たちはすぐに合流した。

『ん?あーあーおったおった。最後ちょろっと顔見たわ。なんや君がアカツキアイハやったんか、思てたんと違ったわ。あっはっは!』

 眩は1人で喋り1人で笑っている。夏の時はあーやったこーやったと聞いてもないことを長々と一方的に話され、さすがの愛羽も少し困っている。

『あ、あの~…それで、あたしに用って…』

『用はまずこれや。この指輪、誰のか知っとるやろ?』

 愛羽はその指輪を数秒見つめたが、その口からは持ち主の名は出てこなかった。

『え?これ?』

『あぁ、そうや。これや』

 眩はニコニコしながら答えを待っている。

『…ん?…あぁ、これ…誰のだろ…あれ?…うーん…』

 散々考え、もしくは考えたフリをして出た答えは
『…すいません…ちょっと分かりません…』
 という笑顔だった。

 眩は吹き出しながら倒れた。

『えぇ~!!嘘やろ!?嘘や!!』

 すると横から麗桜が入っていった。

『あれ?これ、樹さんのじゃねぇかな?なんかちょっと見覚えあるような…』

 途端に眩が笑顔を取り戻した。

『おぉ!そやろ!?そやねん!イツキっちゅー姉ちゃんかルハナっちゅー子のどっちかであるのは間違いないねん!』

『琉花ちゃんはこんなごっついのしないよ。もっと可愛いの着けてたよ』

 蓮華はちゃんとそういう所を見ている。

『じゃあ樹さんので決まりだね。よかった~、あたしせっかく来てくれたのに全然見覚えないからどーしよーかと思っちゃった』

 愛羽はまだ人の着けているアクセサリーなどに目がいかない。

 眩はとりあえず持ち主が分かり、今回神奈川に来てやっと手応えをつかめたことに感動していた。

『ぃやったで煌!どうなることや思たけど、なんとかここまで来れたわ!』

『ちょっ…姉さん…』

 喜びのあまり眩は抱きつき煌はまた顔を赤くしているが今回は照れているようだ。

『姉さん…それより、もう1つ話が』

 姉に抱きつかれうっとりする妹に言われると眩は話を続けた。

『そや!ほんでな、実はあたしと煌ともう1人疎井冬が一緒に来たんやけど、学校の前におったら妙な外人女の集団に誘拐されてしもたんや』

 その言葉を聞いて愛羽たちの時が止まり、何秒かすると理解して今度は一斉に全員で声をあげた。

『え"ぇ~~~!?』

 その後しばらく沈黙が続いた。

『え?なんで?何が?どうして?』

『そんなんあたしが一番聞きたいわ。ほんでガキ共に土曜日川崎の246にあしゅら?と一緒に来いゆーとけ!やて。なぁ、今何がどーなってこないなっとんねん』

『それが、実は…』

 愛羽たちは今の神奈川の状況を眩たちに説明した。


『ふふ、無様ね。人質取られていいように使われてるなんていい気味だわ』

 煌は今瞬が捕らわれの身であることを聞くと嘲り微笑んだ。

『おい。そりゃ言いすぎだろ』

 麗桜が反論して強い視線を向けたが煌は構わずに続けた。

『東京、という都市の暴走族をまとめあげた女だなんて言ってたのにガッカリ。それがなんてザマなのよ。私が何か間違ったこと言ってる?』

 麗桜が立つよりも早く玲璃が煌の前に立った。

『てめぇ表出ろ』

 玲璃は今にも殴りかからんといった勢いだが煌は澄ました顔で言った。

『誰にケンカ売ってるか、分かってるの?』

 対する煌は上から見下して言う。

 緊迫したその嫌な空気の中、次に声を出したのは蓮華だった。

『ねぇ…助ける気あんの?』

 蓮華にしてはかなり不機嫌な顔だ。

『あんたたちのプライドとか意地とか、今そういうの必要ある?玲璃も麗桜も今ここでケンカしてどっちかが参るか気が済むかまでやってどーすんの?天王道さんたちもそう。人質取られた以上はあんたたちだって一緒でしょ?今に同じ目に合うよ。今こうしてる間にも琉花ちゃんも千歌さんも疎井さんもどんな目に合ってるか分かんない。都河泪ちゃんだって点滴とかちゃんとされてなかったら、すごい危険な状態にあるかもしれないんだよ?瞬さんが今どんな気持ちでいるか分からないの?1分1秒でも早く助けてあげなきゃいけないんだよ!でもどこで捕まってるかも分かんなくて、どうしようか話そうって時じゃん。なのにそんなくだらないことでみんなの気持ち挫くようなことするなら止めないから早く行けば?そんでもういいから帰って、邪魔だから。天王道さんも悪いけど分かってくれないなら手は借りれないし貸せないから』

 勢いよく言いきると蓮華は席を立ってタバコを吸いに行ってしまった。
 愛羽と蘭菜は玲璃と麗桜のことを目を細めて視線を送っている。
 2人はバツが悪そうにそっぽを向いた。

『煌。どっちにするかは勝手や、好きにせぇ。けど、決めんのは今や』

 姉に言われて煌も視線を下に落としてしまった。

 場の空気は最悪になってしまったが本当は煌に悪意がないことを眩だけが分かっていた。
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