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中編
戦国原のパズル
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『あれ?今日冥ちゃんは?』
次の日愛羽は学校に着くとすぐ戦国原を探した。
『今日はまだ来てないみたいね』
『寝坊じゃねーのか?』
『え~。クッキーどうだったか聞きたかったのに~…』
愛羽は電話してみたが戦国原は出ないようだ。
『ま、しょうがないか。じゃ、予定通り1時限目終わったら早退して厚木に出発しよっか』
その頃、戦国原は優子と車で走っていた。
『で、どうなんだ?お前のそっちの高校生活は』
『順調ですよ。むしろ厚央より居心地いいです』
『ははっ、それはそうだろうな。じゃあもうCRSなんてやめて本当にそっちに行っちまったらどうだ?お前にはその方が合ってる気がするぞ』
『それもいいかもしれませんね』
困るでもふざけるでも怒るでもなくニコニコした顔で言う戦国原のことを見て優子の方が困ってしまった。
『あれ?あそこ、なんか揉めてますよ?学ランの子たち厚央の1年の子じゃないですか?』
『ったく、朝っぱらから何やってんだよ』
優子は面倒くさいのでそのまま無視して通りすぎるつもりだった。
しかし、その相手を見て優子は顔色を変えた。
それがかつての後輩、旋と珠凛だったからだ。
優子は黙って通りすぎることができず、気付けばおもいきりクラクションを鳴らしていた。
そして厚央の学ランたちに睨みをきかせると即立ち去るよう命令した。
そこで旋に自分だと気付かれてしまったのだ。
しかし優子は特に話すこともせず、それどころか突き放すようなことを言ってその場を去ってしまった。
『ねぇ優子さん。なんであの子たち助けたんですか?』
『助けた?あたしはくだらない揉め事を起こすなと言ったんだが?』
『あの子たち放っといてよかったんですか?知り合いなんでしょ?』
優子は明らかに動揺していた。戦国原はそれをずっとニコニコしながら、生きた虫の羽に針を刺すような気持ちで見ていた。
『知り合い?そんなんじゃない。昔ちょっと喋ったことがあるだけだ。馴れ馴れしい』
『へぇ…釣れないなぁ。ボクにはそうは思えなかったけど。…それに、見えてますよ』
『…何がだよ』
虫がまだ生きているのか、これからどうやって死んでいくのかを見るように優子の顔を覗きこんだ。
『あなたの後悔する姿ですよ』
戦国原は旋と珠凛の顔を知っている。
愛羽たちの携帯で何回か写真を見たことがある。
まさかここにそんなつながりがあったなど知りもしなかったが、かなり深い関係であることは分かる。
『全く、お前だけは何考えてるか分かんねぇや』
優子は困り顔で話を終わらせようとした。
『ふふ、そうでしょうね』
自分の思惑など誰も分かるはずはない。
戦国原はパズルの最後のピースをやっと見つけたような気分だった。
次の日愛羽は学校に着くとすぐ戦国原を探した。
『今日はまだ来てないみたいね』
『寝坊じゃねーのか?』
『え~。クッキーどうだったか聞きたかったのに~…』
愛羽は電話してみたが戦国原は出ないようだ。
『ま、しょうがないか。じゃ、予定通り1時限目終わったら早退して厚木に出発しよっか』
その頃、戦国原は優子と車で走っていた。
『で、どうなんだ?お前のそっちの高校生活は』
『順調ですよ。むしろ厚央より居心地いいです』
『ははっ、それはそうだろうな。じゃあもうCRSなんてやめて本当にそっちに行っちまったらどうだ?お前にはその方が合ってる気がするぞ』
『それもいいかもしれませんね』
困るでもふざけるでも怒るでもなくニコニコした顔で言う戦国原のことを見て優子の方が困ってしまった。
『あれ?あそこ、なんか揉めてますよ?学ランの子たち厚央の1年の子じゃないですか?』
『ったく、朝っぱらから何やってんだよ』
優子は面倒くさいのでそのまま無視して通りすぎるつもりだった。
しかし、その相手を見て優子は顔色を変えた。
それがかつての後輩、旋と珠凛だったからだ。
優子は黙って通りすぎることができず、気付けばおもいきりクラクションを鳴らしていた。
そして厚央の学ランたちに睨みをきかせると即立ち去るよう命令した。
そこで旋に自分だと気付かれてしまったのだ。
しかし優子は特に話すこともせず、それどころか突き放すようなことを言ってその場を去ってしまった。
『ねぇ優子さん。なんであの子たち助けたんですか?』
『助けた?あたしはくだらない揉め事を起こすなと言ったんだが?』
『あの子たち放っといてよかったんですか?知り合いなんでしょ?』
優子は明らかに動揺していた。戦国原はそれをずっとニコニコしながら、生きた虫の羽に針を刺すような気持ちで見ていた。
『知り合い?そんなんじゃない。昔ちょっと喋ったことがあるだけだ。馴れ馴れしい』
『へぇ…釣れないなぁ。ボクにはそうは思えなかったけど。…それに、見えてますよ』
『…何がだよ』
虫がまだ生きているのか、これからどうやって死んでいくのかを見るように優子の顔を覗きこんだ。
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愛羽たちの携帯で何回か写真を見たことがある。
まさかここにそんなつながりがあったなど知りもしなかったが、かなり深い関係であることは分かる。
『全く、お前だけは何考えてるか分かんねぇや』
優子は困り顔で話を終わらせようとした。
『ふふ、そうでしょうね』
自分の思惑など誰も分かるはずはない。
戦国原はパズルの最後のピースをやっと見つけたような気分だった。
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