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中編

退いて

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 風雅は神楽に電話しても全く出ないので自宅マンションを訪ねに来ていた。
 しかしインターホンを鳴らしても一向に出てくる気配はなかった。

 まだ寝ている?いや、それにしたってさっきからずっと連絡している。
 もし仮に具合が悪かったんだとしたら申し訳ないが彼女なら連絡位返すだろう。
 携帯を忘れて出かけてしまったのだろうか?

『…ってことは、もうお店なのかな?』





 神楽は目を疑った。そこに立っていたのは瞬だったのだ。

『お前…何やってんだ?』

 瞬は目を合わそうとはせず下を向いている。だいぶバツの悪そうな顔だ。

『…まさかとは思うけどさぁ、お前それ一体どーゆーことだい?』

 神楽の声にも瞬は答えようとはせず、その代わりに鷹爪が喋り始めた。

『先生、お願いしましたよ。こいつに勝てるのは先生だけです』

 鷹爪はふざけているような物の言い方だったが瞬は少しも笑わないどころか反応すらしなかった。
 そのやり取りを見て神楽もその不自然さに気づいた。

『お前もバカだねぇ。こんなクサレヤクザに弱み握られちまったのかい?』

 瞬は何も言わない。ただ悲しそうな苦しそうな表情が見て取れた。

『答えろよ!!』

 神楽は声を荒げた。この汚いやり方にイラつきキレる寸前だ。

 そこでようやく、瞬も重い感じで口を開いた。

『君とは戦いたくない。お願いだからどうかこの人たちの言うことを聞いてほしい』

『なんだって?』

 それを聞いて鷹爪が拍手した。

『先生はとてもお優しいようだ。どうだ神楽。先生の言うとおりおとなしくあたしの言うことを聞いてみないか?なに、お前たちのバックには鷹爪組がいるってことになる。それだけのことだ。難しいことじゃないだろ?』

『ふざけるんじゃないよ。誰があんたみたいな三流チンピラバックに据えるもんかい。さっきから聞いてりゃ口ばっか動かしてんだけでなんもできねぇくせに、あたしとタイマンの1つでも張って勝ってから言ってくれるかい?ジョーダンじゃないんだよ!あんたらさぁ、何様のつもりか知らないけどね、舐めすぎだよ』

 神楽は目を鋭く尖らせて言い放った。しかしその前には瞬が立ちはだかった。

『お願い…やるからには負けられないの。退いて…』

『そんなのこっちだって一緒なんだよ。待ってな。お前の後で全員叩きのめしてそこから引きずり出してやる』

 神楽は瞬と向かい合い構えた。対する瞬も構えるしかなかった。







『都河泪さん、そして七条琉花さんと龍千歌さんはとある場所で監禁していますが場所を知っているのはごく一部の者だけです。変に嗅ぎ回ったり余計な詮索はしない方が3人の為とだけは言っておきます。それと、万が一にでも鷹爪さんの命令に背いたり危害を加えたりした場合は都河泪さんを突き落とせと言われています。何かあっても我々は事故で済ませられますが都河さんはどうでしょうね。近頃体の反応がよく見えるというのを聞いています。彼女がどうなるかはあなたにかかっていますので余計なことを口走らないように注意して下さい。あなたにはこれから我々と同行してもらいます』
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