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中編
頭大丈夫
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『大丈夫かい?玲璃』
豹那は自分の部屋で玲璃の傷の手当てをしてやっていた。
霞ヶ﨑に何度も転ばされた上、最後に後ろからもろに蹴りをくらい激しく転倒し玲璃はすり傷だらけだった。
『大丈夫だよ、こんなすり傷。あんたこそ頭の傷それ平気なのかよ。ゴルフのやつで殴られたんだろ?』
『こんなものは大したことないけど、あたしの綺麗な顔に傷つけられたってとこは大問題だよ。次はあいつをゴルフボールみてーにボコボコの面にしてやらないとこのイライラは治まりそうもないねぇ』
『あ…そう…』
『全く、イライラしたら腹減っちまったよ。よし玲璃、ご飯食べるかい?あたしもどうせこれからだからさ、作ってやるよ』
『本当に!?やった!腹減ってたんだよ!』
『ふふ、待ってな。話はそれからだ』
『もぉ~、ビビりましたよ。嬢王、鬼のような顔してオレのことにらんでんすもん。心愛さんぶっ倒れてんし…あー痛ぇ、まだ痛ぇよ。あのクソ力、本当に化物みたいな女でしたね。オレには角と羽根と尻尾が見えましたよ』
『そうか?』
『そうですよ!心愛さん地べたに寝かすなんてもうそりゃ人間の仕業じゃないですもん!』
少なくとももう目の前に立ちたくない。
帰りの単車の上、霞ヶ﨑は今日の感想をいつものように愚痴っていた。
何せ本当はそんなはずじゃなかったのに成り行きから神奈川最強の女に蹴り転がされる羽目にあってしまったのだ。
『フッフッ、すぐ怒るな燎。まぁ、確かに言われるだけのことはある女だったな』
『いや~どうします?心愛さん1人で勝てないとなると優子さんに託すしかないっすかね?うぉ~!ナイスアイデア!つーかオレその戦い見たい気がする!』
『燎。あいつは確かに強かったが化物ではなかったぞ』
『いやいやいや、それどーゆーことっすか?』
『どうだい玲璃、美味いだろ?』
『うん!おいひぃ!』
『そうだろ?最近コツを覚えてね。我ながら才能あるかもなんて思ってるんだ』
豹那は当分昔から1人暮らしなので出来ないことではなかったが、ここ最近料理をすることに楽しみを覚え始めていた。
彼女の中で何が変わったのかは分からないが何かが変わり始めているのは確かで、だが本人にそんな自覚はなく周りにいる者も目で見て分かるということもないが玲璃には感じていることがあった。
『なんか豹那さ、最近変わった?』
『何がだい?あたしはあたしじゃないか』
『いや、なんてゆーか…優しくなった?』
『失礼な奴だねぇ。あたしは元から優しいじゃないか。おだてたってなんも出ないからね』
『べ、別にそんなつもりじゃねーし!ん~…なんてゆーのかな~』
『ほら、早く食べないと冷めちゃうじゃないか』
豹那がそう言って笑ったのを見て玲璃は分かった。
そっか…なんか明るくなった。
『嬢王豹那はどーゆー女だと言っていた?』
『え?悪修羅嬢王は冷酷非道。悪魔と修羅の上に立つような女で、まず目的の為に手段は選ばない。味方の人間さえ味方と思わない。そして血も涙もない。屍の山の上に君臨する鬼って感じすかね』
『奴が最強を謳われる実力だということは間違ってないだろう。だが実際は自分の頭にアイアンで一振りくれた私より、あの金髪を蹴り飛ばしたお前の方を優先するような女だった。どういうことか分かるか?仲間が大切ってことだ。そう思えるあいつはもう化物などではない。人間だ。昔はそうだったのかもしれないがな、少しずつ変わってきているんだろうと私は思う。ならばいかに奴が強かろうと弱点がない訳じゃない。それが今日の収穫だ。それを燎、後で戦国原にでも伝えといてやれ』
『戦国原参謀副総長殿にすか?あいつ、でも今確か…』
『レディとの連絡係はあいつなんだ。適当にメッセージでも送ればいい』
『はぁ…分かりました』
その頃愛羽たちは数と燃がギブアップし、やっと缶蹴りをやめさせてもらえた所だった。
2人は足を引きずりながらベンチにたどり着くと倒れこんだ。
『おい…燃…これからの神奈川のこと考えてるとか言ってなかったか?…今の缶蹴りは…どう説明つけてくれんだオメー…』
『ごめん数…今、あたしに喋りかけないで…そっとしといて…』
2人はかなり走らされたようだ。バカバカしいと思いながらも数はやるからには張り合わずにいられず、燃は愛羽に求められると断れなかった。
『しっかし恐るべしはあいつの体力だな。あいつ見ろよ。てんで平気な顔してるぜ?』
酸欠状態の2人に愛羽はニコニコしながら近づいてきた。
『あ~楽しかったね!ねーね数ちゃん、ピーチとマスカットどっちがいい?』
『は?今度はなんだよ、いきなり…』
愛羽はポケットからキャンディを取り出した。
『あっ!グレープもあるよ!どれがいーい?』
『ど、どれでもいーよ』
『じゃーあ、か・ぞ・え・だからグレープあげる。はい!』
そう言ってニコニコの笑顔でキャンディを手渡され数は、か・ぞ・え・だからグレープの意味を心の中で何度も考えたが何回考え直してもその意味は分からなかった。
(こいつ、頭大丈夫か?)
豹那は自分の部屋で玲璃の傷の手当てをしてやっていた。
霞ヶ﨑に何度も転ばされた上、最後に後ろからもろに蹴りをくらい激しく転倒し玲璃はすり傷だらけだった。
『大丈夫だよ、こんなすり傷。あんたこそ頭の傷それ平気なのかよ。ゴルフのやつで殴られたんだろ?』
『こんなものは大したことないけど、あたしの綺麗な顔に傷つけられたってとこは大問題だよ。次はあいつをゴルフボールみてーにボコボコの面にしてやらないとこのイライラは治まりそうもないねぇ』
『あ…そう…』
『全く、イライラしたら腹減っちまったよ。よし玲璃、ご飯食べるかい?あたしもどうせこれからだからさ、作ってやるよ』
『本当に!?やった!腹減ってたんだよ!』
『ふふ、待ってな。話はそれからだ』
『もぉ~、ビビりましたよ。嬢王、鬼のような顔してオレのことにらんでんすもん。心愛さんぶっ倒れてんし…あー痛ぇ、まだ痛ぇよ。あのクソ力、本当に化物みたいな女でしたね。オレには角と羽根と尻尾が見えましたよ』
『そうか?』
『そうですよ!心愛さん地べたに寝かすなんてもうそりゃ人間の仕業じゃないですもん!』
少なくとももう目の前に立ちたくない。
帰りの単車の上、霞ヶ﨑は今日の感想をいつものように愚痴っていた。
何せ本当はそんなはずじゃなかったのに成り行きから神奈川最強の女に蹴り転がされる羽目にあってしまったのだ。
『フッフッ、すぐ怒るな燎。まぁ、確かに言われるだけのことはある女だったな』
『いや~どうします?心愛さん1人で勝てないとなると優子さんに託すしかないっすかね?うぉ~!ナイスアイデア!つーかオレその戦い見たい気がする!』
『燎。あいつは確かに強かったが化物ではなかったぞ』
『いやいやいや、それどーゆーことっすか?』
『どうだい玲璃、美味いだろ?』
『うん!おいひぃ!』
『そうだろ?最近コツを覚えてね。我ながら才能あるかもなんて思ってるんだ』
豹那は当分昔から1人暮らしなので出来ないことではなかったが、ここ最近料理をすることに楽しみを覚え始めていた。
彼女の中で何が変わったのかは分からないが何かが変わり始めているのは確かで、だが本人にそんな自覚はなく周りにいる者も目で見て分かるということもないが玲璃には感じていることがあった。
『なんか豹那さ、最近変わった?』
『何がだい?あたしはあたしじゃないか』
『いや、なんてゆーか…優しくなった?』
『失礼な奴だねぇ。あたしは元から優しいじゃないか。おだてたってなんも出ないからね』
『べ、別にそんなつもりじゃねーし!ん~…なんてゆーのかな~』
『ほら、早く食べないと冷めちゃうじゃないか』
豹那がそう言って笑ったのを見て玲璃は分かった。
そっか…なんか明るくなった。
『嬢王豹那はどーゆー女だと言っていた?』
『え?悪修羅嬢王は冷酷非道。悪魔と修羅の上に立つような女で、まず目的の為に手段は選ばない。味方の人間さえ味方と思わない。そして血も涙もない。屍の山の上に君臨する鬼って感じすかね』
『奴が最強を謳われる実力だということは間違ってないだろう。だが実際は自分の頭にアイアンで一振りくれた私より、あの金髪を蹴り飛ばしたお前の方を優先するような女だった。どういうことか分かるか?仲間が大切ってことだ。そう思えるあいつはもう化物などではない。人間だ。昔はそうだったのかもしれないがな、少しずつ変わってきているんだろうと私は思う。ならばいかに奴が強かろうと弱点がない訳じゃない。それが今日の収穫だ。それを燎、後で戦国原にでも伝えといてやれ』
『戦国原参謀副総長殿にすか?あいつ、でも今確か…』
『レディとの連絡係はあいつなんだ。適当にメッセージでも送ればいい』
『はぁ…分かりました』
その頃愛羽たちは数と燃がギブアップし、やっと缶蹴りをやめさせてもらえた所だった。
2人は足を引きずりながらベンチにたどり着くと倒れこんだ。
『おい…燃…これからの神奈川のこと考えてるとか言ってなかったか?…今の缶蹴りは…どう説明つけてくれんだオメー…』
『ごめん数…今、あたしに喋りかけないで…そっとしといて…』
2人はかなり走らされたようだ。バカバカしいと思いながらも数はやるからには張り合わずにいられず、燃は愛羽に求められると断れなかった。
『しっかし恐るべしはあいつの体力だな。あいつ見ろよ。てんで平気な顔してるぜ?』
酸欠状態の2人に愛羽はニコニコしながら近づいてきた。
『あ~楽しかったね!ねーね数ちゃん、ピーチとマスカットどっちがいい?』
『は?今度はなんだよ、いきなり…』
愛羽はポケットからキャンディを取り出した。
『あっ!グレープもあるよ!どれがいーい?』
『ど、どれでもいーよ』
『じゃーあ、か・ぞ・え・だからグレープあげる。はい!』
そう言ってニコニコの笑顔でキャンディを手渡され数は、か・ぞ・え・だからグレープの意味を心の中で何度も考えたが何回考え直してもその意味は分からなかった。
(こいつ、頭大丈夫か?)
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