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中編
奇襲
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玲璃は1人で豹那のマンションを訪れ、マンションのエントランスでインターホンをひたすら鳴らしていた。
『あれ?おっかしーなぁ。単車はある…車もある…電話は出ない…ん~?まだ寝てやがんのか?いや待てよ、風呂か?う~ん…仕方ねぇなぁ…もうちょっと待つかぁ…』
緋薙豹那は今、湘南茅ヶ崎の国道134号線、海沿いにあるマンションの最上階に住んでいる。
前は
『海沿いは潮が飛ぶからダメだ』
と1本入った国道1号線沿いのマンションに住んでいたのだが最近になって引っ越した。
その理由は
『海が見たいのさ』
ということだった。
彼女が意見のコロコロ変わる芯なし人間ということではない。彼女にルールなどないのだ。
いや、正確に言えば彼女のルールは彼女が決める。
そしてそれは彼女だけが知っていればいいのだ。
天の上にも下にも唯一緋薙豹那1人がもっとも美しく強い女なのである。
女性が思わず憧れるプロポーションの豹那は筋トレとランニングを欠かさない。
朝起きてコーヒーとタバコを済ませるとランニングに出かける。国道を江ノ島方面に向かってずっと走っていき折り返して今度は海岸を走ってくる。
豹那は正に今ランニング中だったのだ。そうと知らず玲璃は仕方なく豹那から連絡が来るのを待っていた。
『おい、そこの』
玲璃が座りこんでいるとそうやって声をかけられた。
『ん?』
見ると学ランの女が2人背後に立っていた。1人は長身の刈り上げ。そしてもう1人は全身真っ赤な女。
学ランということは間違いなくCRSの人間だ。
玲璃はすぐ立ち上がると距離をとった。
『なんだテメーら!』
豹那の家に来た、ということか?いや、その前に何故場所を知っている?
玲璃は驚きを隠せずにいた。
『燎、こいつが嬢王か?』
『いや、違いますね。手下の子じゃないですか?』
『そうか。おい、そこの。嬢王という女の仲間か?』
なんだコイツら。敵であることに間違いはなさそうだがちょっとアホそうだな。
玲璃の第一印象だった。
『だったらなんだよ。テメーらCRSだな?何しに来やがった!』
『挨拶に来た。その女を呼べ』
『挨拶?へっ、やなこった』
厚央で丁度暴れそこなっていたので玲璃はやる気満々で挑発した。
『いいのか?言うことに従わないのなら手荒になってしまうぞ?』
『上等じゃねーか。あたしはその方が助かるぜ』
『ふっ、大口を叩いていられるのも今のうちだ。よし、行け!燎!』
刈り上げの女はげんなりした顔で赤髪の女を見た。
『散々言うだけ言ってオレっすか!?』
『当たり前だ。私の相手は最強の女だからな。それとも代わるか?それなら私がやってもいいぞ』
『あぁ~!待った待った!分かりましたよ!もう…あなたって人は…』
『フフ、それでこそ燎だ。頑張れ燎~』
玲璃は相手のこのやり取りを見てイマイチ気合いが入らなかったが、とりあえず舐められていることだけは分かった。
『あたしは2対1でもいいんだぜ!』
玲璃は自分からしかけ、赤髪の女の方に飛びかかっていくと挨拶代わりにパンチを打ちこんだ。
殴り飛ばすつもりだったが顔面に当たる直前で拳を手で受け止められてしまった。
『うむ、まぁまぁいいパンチだ。なかなか筋がいいと見た。だがお前の相手は申し訳ないがそちらの者がする』
赤髪の女はそう言うと玲璃の腕を引っ張り、そのままぐるっと長身の女の方に向きを変えさせた。
なんだこの女は。いいパンチだと?今のはキャッチボールをしていて球を取る位の動きだった。
『よし、ラウンド1ファイッ!燎~、油断してると負けるぞ~』
ふざけている。ふざけているがこの女、只者ではない。
今こうして後ろに立たれていると思うと、すごく気持ち悪くて嫌だった。
しかしこんな舐められたままで引き下がる玲璃ではなかった。
『くっそぉ!』
玲璃は振り返りその勢いでまた拳を打ちこんだ。だが今度は羽毛の如くかわされ足をかけられ玲璃はすっ転んでしまった。
『おいおい。こっちじゃないって言ってるだろう?そんなに私が好きか?』
もう玲璃にそんなものは関係ない。飛び起きると助走をつけ飛び蹴りにいった。
それをかわされると蹴りの連続技で追いかけていく。
その中で玲璃は恐ろしさを覚えた。
当たらないのだ。蹴りを連続でいっても更にパンチを交えていってもかすりもしないのだ。
こんなに完璧に攻撃をかわされたのは初めてだった。ドーピングを使用した瞬と戦った時はとんでもないバケモノだと思ったものだが、この女の場合はまるで幽霊と戦っているみたいだ。
すると今度は横から拳が飛んできた。刈り上げの女の方だ。
『こらこら。心愛さんがせっかくやる気になってくれてんのに余計なことすんじゃねーよ。君の相手はオレだから!』
玲璃は横からもろに殴り飛ばされた。一見ひょろっとした体に見えたがとんでもない、重いパンチだ。この女もただの雑魚ではないらしい。
(参ったな。とりあえず流れに乗って刈り上げとやり合うしかねーか。くそっ、せめて愛羽か風雅を連れてくるんだった)
玲璃がどうするか考える中、霞ヶ﨑は玲璃のその先の人物に気づいた。
『ん?あ!心愛さん!あれ!あれがそうですよ!嬢王豹那だ!』
『なに?』
道路の向こう側、ランニングを終え自宅マンション前の浜辺までたどり着き呼吸を整え海を眺める緋薙豹那がいた。
『よし燎、こっちは任せたぞ』
八代はそう言うと浜辺へ向かった。
『あれ?おっかしーなぁ。単車はある…車もある…電話は出ない…ん~?まだ寝てやがんのか?いや待てよ、風呂か?う~ん…仕方ねぇなぁ…もうちょっと待つかぁ…』
緋薙豹那は今、湘南茅ヶ崎の国道134号線、海沿いにあるマンションの最上階に住んでいる。
前は
『海沿いは潮が飛ぶからダメだ』
と1本入った国道1号線沿いのマンションに住んでいたのだが最近になって引っ越した。
その理由は
『海が見たいのさ』
ということだった。
彼女が意見のコロコロ変わる芯なし人間ということではない。彼女にルールなどないのだ。
いや、正確に言えば彼女のルールは彼女が決める。
そしてそれは彼女だけが知っていればいいのだ。
天の上にも下にも唯一緋薙豹那1人がもっとも美しく強い女なのである。
女性が思わず憧れるプロポーションの豹那は筋トレとランニングを欠かさない。
朝起きてコーヒーとタバコを済ませるとランニングに出かける。国道を江ノ島方面に向かってずっと走っていき折り返して今度は海岸を走ってくる。
豹那は正に今ランニング中だったのだ。そうと知らず玲璃は仕方なく豹那から連絡が来るのを待っていた。
『おい、そこの』
玲璃が座りこんでいるとそうやって声をかけられた。
『ん?』
見ると学ランの女が2人背後に立っていた。1人は長身の刈り上げ。そしてもう1人は全身真っ赤な女。
学ランということは間違いなくCRSの人間だ。
玲璃はすぐ立ち上がると距離をとった。
『なんだテメーら!』
豹那の家に来た、ということか?いや、その前に何故場所を知っている?
玲璃は驚きを隠せずにいた。
『燎、こいつが嬢王か?』
『いや、違いますね。手下の子じゃないですか?』
『そうか。おい、そこの。嬢王という女の仲間か?』
なんだコイツら。敵であることに間違いはなさそうだがちょっとアホそうだな。
玲璃の第一印象だった。
『だったらなんだよ。テメーらCRSだな?何しに来やがった!』
『挨拶に来た。その女を呼べ』
『挨拶?へっ、やなこった』
厚央で丁度暴れそこなっていたので玲璃はやる気満々で挑発した。
『いいのか?言うことに従わないのなら手荒になってしまうぞ?』
『上等じゃねーか。あたしはその方が助かるぜ』
『ふっ、大口を叩いていられるのも今のうちだ。よし、行け!燎!』
刈り上げの女はげんなりした顔で赤髪の女を見た。
『散々言うだけ言ってオレっすか!?』
『当たり前だ。私の相手は最強の女だからな。それとも代わるか?それなら私がやってもいいぞ』
『あぁ~!待った待った!分かりましたよ!もう…あなたって人は…』
『フフ、それでこそ燎だ。頑張れ燎~』
玲璃は相手のこのやり取りを見てイマイチ気合いが入らなかったが、とりあえず舐められていることだけは分かった。
『あたしは2対1でもいいんだぜ!』
玲璃は自分からしかけ、赤髪の女の方に飛びかかっていくと挨拶代わりにパンチを打ちこんだ。
殴り飛ばすつもりだったが顔面に当たる直前で拳を手で受け止められてしまった。
『うむ、まぁまぁいいパンチだ。なかなか筋がいいと見た。だがお前の相手は申し訳ないがそちらの者がする』
赤髪の女はそう言うと玲璃の腕を引っ張り、そのままぐるっと長身の女の方に向きを変えさせた。
なんだこの女は。いいパンチだと?今のはキャッチボールをしていて球を取る位の動きだった。
『よし、ラウンド1ファイッ!燎~、油断してると負けるぞ~』
ふざけている。ふざけているがこの女、只者ではない。
今こうして後ろに立たれていると思うと、すごく気持ち悪くて嫌だった。
しかしこんな舐められたままで引き下がる玲璃ではなかった。
『くっそぉ!』
玲璃は振り返りその勢いでまた拳を打ちこんだ。だが今度は羽毛の如くかわされ足をかけられ玲璃はすっ転んでしまった。
『おいおい。こっちじゃないって言ってるだろう?そんなに私が好きか?』
もう玲璃にそんなものは関係ない。飛び起きると助走をつけ飛び蹴りにいった。
それをかわされると蹴りの連続技で追いかけていく。
その中で玲璃は恐ろしさを覚えた。
当たらないのだ。蹴りを連続でいっても更にパンチを交えていってもかすりもしないのだ。
こんなに完璧に攻撃をかわされたのは初めてだった。ドーピングを使用した瞬と戦った時はとんでもないバケモノだと思ったものだが、この女の場合はまるで幽霊と戦っているみたいだ。
すると今度は横から拳が飛んできた。刈り上げの女の方だ。
『こらこら。心愛さんがせっかくやる気になってくれてんのに余計なことすんじゃねーよ。君の相手はオレだから!』
玲璃は横からもろに殴り飛ばされた。一見ひょろっとした体に見えたがとんでもない、重いパンチだ。この女もただの雑魚ではないらしい。
(参ったな。とりあえず流れに乗って刈り上げとやり合うしかねーか。くそっ、せめて愛羽か風雅を連れてくるんだった)
玲璃がどうするか考える中、霞ヶ﨑は玲璃のその先の人物に気づいた。
『ん?あ!心愛さん!あれ!あれがそうですよ!嬢王豹那だ!』
『なに?』
道路の向こう側、ランニングを終え自宅マンション前の浜辺までたどり着き呼吸を整え海を眺める緋薙豹那がいた。
『よし燎、こっちは任せたぞ』
八代はそう言うと浜辺へ向かった。
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