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中編
メデューサ
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前から人が歩いてくる。視線が間違いなくこちらを向いている。
琉花は瞬と別れた後、自宅までの道のりを歩いていた。
前から来るのはずいぶんファンキーな女のようだ。頭中何本もの三つ編みで、シルエットだけならまるでメデューサだ。
元からそういう目なのか目つきが悪く、琉花からは完全に睨んでいるように見える。
(ちぇっ、何こいつ。コスプレ?気持ち悪っ!)
そう思ったのはその女が青い学ランを着ていたからだ。
琉花は視線を外し、さっさとすれ違おうとした。
だが…
(来る!)
すれ違う間合いに入った時直感が走った。
豪速球のようなパンチが顔をかすめた。
殺気というか、そういうものが相手からあまりにも滲み出すぎていたおかげかギリギリよけることができた。
『へぇ?さすがボクサー。よくよけたな。すごい反射神経だ』
反射神経もそうだが危機回避能力というべきだろう。直感、繰り出されるパンチの匂い、放つオーラ、そういう目では見えない何かを琉花は感じたのだ。
(危なかった…まともにくらってたら多分、なかなかヤバかった)
『誰あんた。いきなり何すんのさ』
しかし女は答えず続けて攻撃を繰り出してきた。
大振りのパンチが何発も放たれる。琉花はそれを冷静によけていく。
『ほーう、動きはまぁまぁだな。さすがは元チャンピオン』
琉花はゾッとした。何故そんなことを知っている?いや…知っていて自分に挑んでくる意味も分からない。
するといつの間にか囲まれていることに気がついた。
(ちっ、そういうことか。まずい…多いな)
今度は三つ編みの女の他に四方から何人もの学ラン女たちがつかみかかってきた。
琉花はつかみにくる女たちを殴り飛ばしながら三つ編みともやり合う。
その対応力は正に天才的という他なかった。
『はっ!やるじゃねぇか!だが、いつまでもつかな!?』
四方からの攻撃に対応していた琉花だったが真後ろからつかみに来られ、あえなく羽交い締めにされてしまった。
『放せ!』
必死にもがくがこれでは力が入らない。そこに三つ編みの拳が容赦なく打ち込まれていく。
『いいぜ、まだ寝るなよ?あたしのスパーリングに付き合ってもらう』
三つ編みはそう言うとボクシングの真似をし始め琉花に近づいてきた。ケンカは慣れているようだがボクシングの動きではない。琉花にはそれがすぐに分かった。
『何そのへなちょこパンチ。そんなんでボクシングの真似すんのやめてくれる?』
この状況で相手を挑発している。
『あ?てめー、いい根性してんな』
三つ編みは大振りのパンチを琉花の顔面に叩きこんだ。
脳が揺れる。やはり打撃はなかなか思い。続いて次の拳は腹に連打だ。
『オラ!オラ!え!?まだ!起きてろ!よ!』
やりたい放題やられ、さすがに琉花は相当効いてはいるがまだ全てを諦めている訳ではなかった。
だから痛みも意識が飛びそうなのも屈辱もギリギリ耐えて踏ん張っていた。
『はぁっ…はぁっ…え?おい七条琉花。まだ生意気な口きけんならきいてみろよテメー』
何十発にも渡りサンドバッグにされ、殴っていた三つ編みの息が上がっている位だが、まだかろうじて琉花は意識があった。
プライドが傷つく程ボコボコのその顔でニヤリと笑って琉花は言った。
『へへっ…ヘナチョコ…』
『この野郎!』
挑発に乗せられた三つ編みがまた琉花の顔面に向かっておもいきり振りかぶってパンチにきた。
その瞬間琉花はすれすれ首の動きだけでそれをかわすと三つ編みの拳はすり抜け琉花をつかんでいた女にクリーンヒットした。
深く踏み込んでくる渾身の一撃をずっと待っていたのだ。
それを見逃さず琉花は羽交い締めから逃れた。
すぐに構え三つ編みに拳を叩きつける。
『うっ!』
琉花の拳は完全にクリーンヒット。更に琉花は三つ編みに強い眼差しを向けた。
『…あんた、あたしと殴り合う覚悟できてんの?』
『あ?』
三つ編みは琉花の勢いに思わず足を1歩引いてしまった。
散々タコ殴りにされておきながら見せたその気迫には正直背筋を冷たくさせる何かがあった。
(この野郎…)
この時三つ編みは天才七条琉花を少し舐めていたことを思っていた。
彼女には負けるはずのない理由があったがそれを持ってしてもこの琉花とここからまだ殴り合うことは正直気が引けた。
体はかなりダメージを受けているが琉花は下がらず三つ編みの女に向かっていく。
(…あぁ、悔しい。こんなクソッタレ共にこんなにされて…瞬、あたし決めたわ。やっぱりも1回、ボクシングやるわ…)
琉花はそのまま倒れてしまった。
琉花は瞬と別れた後、自宅までの道のりを歩いていた。
前から来るのはずいぶんファンキーな女のようだ。頭中何本もの三つ編みで、シルエットだけならまるでメデューサだ。
元からそういう目なのか目つきが悪く、琉花からは完全に睨んでいるように見える。
(ちぇっ、何こいつ。コスプレ?気持ち悪っ!)
そう思ったのはその女が青い学ランを着ていたからだ。
琉花は視線を外し、さっさとすれ違おうとした。
だが…
(来る!)
すれ違う間合いに入った時直感が走った。
豪速球のようなパンチが顔をかすめた。
殺気というか、そういうものが相手からあまりにも滲み出すぎていたおかげかギリギリよけることができた。
『へぇ?さすがボクサー。よくよけたな。すごい反射神経だ』
反射神経もそうだが危機回避能力というべきだろう。直感、繰り出されるパンチの匂い、放つオーラ、そういう目では見えない何かを琉花は感じたのだ。
(危なかった…まともにくらってたら多分、なかなかヤバかった)
『誰あんた。いきなり何すんのさ』
しかし女は答えず続けて攻撃を繰り出してきた。
大振りのパンチが何発も放たれる。琉花はそれを冷静によけていく。
『ほーう、動きはまぁまぁだな。さすがは元チャンピオン』
琉花はゾッとした。何故そんなことを知っている?いや…知っていて自分に挑んでくる意味も分からない。
するといつの間にか囲まれていることに気がついた。
(ちっ、そういうことか。まずい…多いな)
今度は三つ編みの女の他に四方から何人もの学ラン女たちがつかみかかってきた。
琉花はつかみにくる女たちを殴り飛ばしながら三つ編みともやり合う。
その対応力は正に天才的という他なかった。
『はっ!やるじゃねぇか!だが、いつまでもつかな!?』
四方からの攻撃に対応していた琉花だったが真後ろからつかみに来られ、あえなく羽交い締めにされてしまった。
『放せ!』
必死にもがくがこれでは力が入らない。そこに三つ編みの拳が容赦なく打ち込まれていく。
『いいぜ、まだ寝るなよ?あたしのスパーリングに付き合ってもらう』
三つ編みはそう言うとボクシングの真似をし始め琉花に近づいてきた。ケンカは慣れているようだがボクシングの動きではない。琉花にはそれがすぐに分かった。
『何そのへなちょこパンチ。そんなんでボクシングの真似すんのやめてくれる?』
この状況で相手を挑発している。
『あ?てめー、いい根性してんな』
三つ編みは大振りのパンチを琉花の顔面に叩きこんだ。
脳が揺れる。やはり打撃はなかなか思い。続いて次の拳は腹に連打だ。
『オラ!オラ!え!?まだ!起きてろ!よ!』
やりたい放題やられ、さすがに琉花は相当効いてはいるがまだ全てを諦めている訳ではなかった。
だから痛みも意識が飛びそうなのも屈辱もギリギリ耐えて踏ん張っていた。
『はぁっ…はぁっ…え?おい七条琉花。まだ生意気な口きけんならきいてみろよテメー』
何十発にも渡りサンドバッグにされ、殴っていた三つ編みの息が上がっている位だが、まだかろうじて琉花は意識があった。
プライドが傷つく程ボコボコのその顔でニヤリと笑って琉花は言った。
『へへっ…ヘナチョコ…』
『この野郎!』
挑発に乗せられた三つ編みがまた琉花の顔面に向かっておもいきり振りかぶってパンチにきた。
その瞬間琉花はすれすれ首の動きだけでそれをかわすと三つ編みの拳はすり抜け琉花をつかんでいた女にクリーンヒットした。
深く踏み込んでくる渾身の一撃をずっと待っていたのだ。
それを見逃さず琉花は羽交い締めから逃れた。
すぐに構え三つ編みに拳を叩きつける。
『うっ!』
琉花の拳は完全にクリーンヒット。更に琉花は三つ編みに強い眼差しを向けた。
『…あんた、あたしと殴り合う覚悟できてんの?』
『あ?』
三つ編みは琉花の勢いに思わず足を1歩引いてしまった。
散々タコ殴りにされておきながら見せたその気迫には正直背筋を冷たくさせる何かがあった。
(この野郎…)
この時三つ編みは天才七条琉花を少し舐めていたことを思っていた。
彼女には負けるはずのない理由があったがそれを持ってしてもこの琉花とここからまだ殴り合うことは正直気が引けた。
体はかなりダメージを受けているが琉花は下がらず三つ編みの女に向かっていく。
(…あぁ、悔しい。こんなクソッタレ共にこんなにされて…瞬、あたし決めたわ。やっぱりも1回、ボクシングやるわ…)
琉花はそのまま倒れてしまった。
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