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前編

暴走ハロウィーン

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 愛羽たち暴走愛努流のメンバーは、次の日予定通り樹の親友白桐優子を探す為厚木方面に来ていた。
 6人は本厚木駅前でとりあえず単車を停めた。

『でもさ、どうやって探すの?どこ住んでるかも何してるのかも分かんないのにグルグル意味もなく走り続けたって見つからないでしょ?』

 蓮華はもっともな疑問を口にした。

『いきがってそうな奴、片っ端から声かけて聞いてけばいいんじゃねーか?』

『…あんたの言う通りにしてたらろくでもない目に合いそうね』

 玲璃がそんな声のかけ方をしたら、まず間違いなくケンカに発展する。
 もうそれはみんな分かりきっているが、まだ自分ではそのことに気付いていない。

『でも…手がかりがないんじゃ、まずはこの辺りの高校1つ1つ回って聞いてみるのが1番早そうね』

 蘭菜が言うとみんな納得し頷いた。

『なぁ…だからそれ、あたしが言ってんことと同じじゃねぇか?』

『あんたが言うと聞くより絡むに聞こえちゃうんだもん』

『けっ!信用ねーなー、ったく。人探してんのに誰が絡むかよ』

 玲璃がすねる中、みんな携帯で周辺の高校を検索し始めたが、そこで愛羽が何かに気が付いた。

『ねぇねぇ、この辺の学校って女の子も学ランなのかな?』

『は?』

 そんな学校は聞いたことがない。

 駅のロータリーに何やら学ランを着た少女の軍団がたむろしていて、先程からずっと視線を送ってきている。

『え?あれ女なの?男じゃないの?』

 蓮華が目を凝らしてよく見るがやはり少女の軍団らしい。

『そんな驚くことか?ウチにも風雅がいるじゃんか』

 玲璃はあからさまに視線を送り返す。

『うーん…それとはまたジャンルが違う気がするわね』

 蘭菜が首をかしげていると愛羽が閃いた。

『分かったぁ!仮装だよ!ほら、もうすぐハロウィンだから』

『あぁ~』『なるほどね』『納得だな』

 麗桜も風雅も玲璃も謎が解けたと笑いながらその学ラン軍団を見ていた。すると学ラン軍団も対抗するように強烈な視線を向けてきた。

『ねぇ…あたしの勘が絶対あれと接触しちゃいけないって言ってる。早く行こ』

 蓮華がこの場を立ち去ることを提案するが他の5人は全く気にしていないようだった。

 すると学ランを着た女たちはポケットに手を突っこみ肩で風を切りながら歩いて近づいてきた。

『オイ!オメーらどこのもんよ!』

 いかにも不良が第一声に発するような言葉だ。

 不良の教科書というのがあったなら多分最初の方に載っているだろう。

『ほらぁ、来ちゃったじゃん。もう行こうよー』

 蓮華は蘭菜の影に隠れた。

『オイ!聞いてんのかコラ!』

 学ラン女たちは目の前まで来てしまった。

 その中の1人が愛羽に顔で威嚇しながら向かっていく。

『この野郎、ずいぶんカッコいい単車乗ってんじゃねーか』

『え?あ、ありがとう』

『誉めてんじゃねーよ!!』

『え?でも、カッコいいって言ってくれたじゃん』

『だからそれは!』

 相手の因縁をつけるような言い回しをこの超ド天然総長は真っ正面から受け止めた。玲璃たちもその様子を見て笑いをこらえている。

『テメーら誰に許可取って厚木走ってんだって言ってんだよ!』

『いやー、あたしたち小田原から来ててちょっと人探してんだよね』

『小田原?』

 小田原と聞いて初めて学ラン女たちに動揺が見られた。

『小田原が厚木になんの用だ!』

 最初はおとなしく見ていた玲璃がついにじれったくなり声を出した。

『だ、か、らぁ!あたしら人探してるだけだって言ってんだろうが!耳付いてねぇのか!?このコスプレビーバップ野郎が!ケンカ売りてぇなら他行けってんだよ!』

 玲璃が怒鳴り散らすと学ラン女たちはさすがに1歩後ずさった。これではもう話にならない。

『まぁまぁ玲璃。えっと~、この辺で白桐優子さんって人知らないかな?元は相模原の人なんだけど、俺らその人に会いたいだけなんだ』

 見るに見かねて麗桜がその名を出すと相手は全員反応を示した。

『白桐、優子…だって?』

『知ってるのか!?』

 麗桜は思わぬ反応に期待が一気に高まったが話はすんなりとはいかなかった。

『知ってるも何も優子さんはウチらの頭だ!…分かったぞ。テメーらさては夜叉猫だな?』

『はぁ?』

 ここでまた話はこじれる。

『おい、みんなに連絡だ。夜叉猫が優子さん狙って本厚に乗り込んできてるってよ!』

『えぇっ!?ちょっちょっちょっ、あたしたち夜叉猫とは仲良いけど夜叉猫のメンバーじゃないよ!?』

 訳も分からず愛羽は誤解を解こうとしたが相手に聞く耳はなさそうだ。

『言い訳してんじゃねーよ。小田原で族車乗ってて夜叉猫じゃないだぁ?舐めんのもいい加減にしろよコラ!』

 そう言った学ランの女の1人が愛羽の胸ぐらをつかんだ。
 するとすかさず横からその手を風雅がつかんだ。

『その手を放せ…』

 風雅が怒っている。そのまま風雅はつかんだ手に力を込めた。

『いてててて!は、放しやがれ!』

『その手を放すのが先だ』

 たまらず相手は愛羽から手を放してしまった。

『なぁ、頼むからさ、その優子って人に会わせてくれよ。俺らその人に会わせてあげたい人がいるだけなんだ』

『そんな見え透いた罠にはまると思ってんのか?』

『嘘じゃない。相模原の、鬼音姫の樹さんって人なんだ。優子って人の相棒だった人なんだよ。なんとか話せないかな?』

『鬼音姫の樹?ウチの優子さんと?そんな話聴いたことねぇよ。でたらめ言いやがって』

 相手はとぼけているのではなく本当に知らないようだ。

『そんな…』

 白桐優子は生きて確かに存在している。

 しかし麗桜はやはり話が少しおかしいことを感じながら前日の豹那の言葉を思い出していた。

 それから考える間もなく、そこに1台の車が停まった。
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