暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~

雪ノ瀬瞬

文字の大きさ
上 下
29 / 173
前編

暴走ハロウィーン

しおりを挟む
 愛羽たち暴走愛努流のメンバーは、次の日予定通り樹の親友白桐優子を探す為厚木方面に来ていた。
 6人は本厚木駅前でとりあえず単車を停めた。

『でもさ、どうやって探すの?どこ住んでるかも何してるのかも分かんないのにグルグル意味もなく走り続けたって見つからないでしょ?』

 蓮華はもっともな疑問を口にした。

『いきがってそうな奴、片っ端から声かけて聞いてけばいいんじゃねーか?』

『…あんたの言う通りにしてたらろくでもない目に合いそうね』

 玲璃がそんな声のかけ方をしたら、まず間違いなくケンカに発展する。
 もうそれはみんな分かりきっているが、まだ自分ではそのことに気付いていない。

『でも…手がかりがないんじゃ、まずはこの辺りの高校1つ1つ回って聞いてみるのが1番早そうね』

 蘭菜が言うとみんな納得し頷いた。

『なぁ…だからそれ、あたしが言ってんことと同じじゃねぇか?』

『あんたが言うと聞くより絡むに聞こえちゃうんだもん』

『けっ!信用ねーなー、ったく。人探してんのに誰が絡むかよ』

 玲璃がすねる中、みんな携帯で周辺の高校を検索し始めたが、そこで愛羽が何かに気が付いた。

『ねぇねぇ、この辺の学校って女の子も学ランなのかな?』

『は?』

 そんな学校は聞いたことがない。

 駅のロータリーに何やら学ランを着た少女の軍団がたむろしていて、先程からずっと視線を送ってきている。

『え?あれ女なの?男じゃないの?』

 蓮華が目を凝らしてよく見るがやはり少女の軍団らしい。

『そんな驚くことか?ウチにも風雅がいるじゃんか』

 玲璃はあからさまに視線を送り返す。

『うーん…それとはまたジャンルが違う気がするわね』

 蘭菜が首をかしげていると愛羽が閃いた。

『分かったぁ!仮装だよ!ほら、もうすぐハロウィンだから』

『あぁ~』『なるほどね』『納得だな』

 麗桜も風雅も玲璃も謎が解けたと笑いながらその学ラン軍団を見ていた。すると学ラン軍団も対抗するように強烈な視線を向けてきた。

『ねぇ…あたしの勘が絶対あれと接触しちゃいけないって言ってる。早く行こ』

 蓮華がこの場を立ち去ることを提案するが他の5人は全く気にしていないようだった。

 すると学ランを着た女たちはポケットに手を突っこみ肩で風を切りながら歩いて近づいてきた。

『オイ!オメーらどこのもんよ!』

 いかにも不良が第一声に発するような言葉だ。

 不良の教科書というのがあったなら多分最初の方に載っているだろう。

『ほらぁ、来ちゃったじゃん。もう行こうよー』

 蓮華は蘭菜の影に隠れた。

『オイ!聞いてんのかコラ!』

 学ラン女たちは目の前まで来てしまった。

 その中の1人が愛羽に顔で威嚇しながら向かっていく。

『この野郎、ずいぶんカッコいい単車乗ってんじゃねーか』

『え?あ、ありがとう』

『誉めてんじゃねーよ!!』

『え?でも、カッコいいって言ってくれたじゃん』

『だからそれは!』

 相手の因縁をつけるような言い回しをこの超ド天然総長は真っ正面から受け止めた。玲璃たちもその様子を見て笑いをこらえている。

『テメーら誰に許可取って厚木走ってんだって言ってんだよ!』

『いやー、あたしたち小田原から来ててちょっと人探してんだよね』

『小田原?』

 小田原と聞いて初めて学ラン女たちに動揺が見られた。

『小田原が厚木になんの用だ!』

 最初はおとなしく見ていた玲璃がついにじれったくなり声を出した。

『だ、か、らぁ!あたしら人探してるだけだって言ってんだろうが!耳付いてねぇのか!?このコスプレビーバップ野郎が!ケンカ売りてぇなら他行けってんだよ!』

 玲璃が怒鳴り散らすと学ラン女たちはさすがに1歩後ずさった。これではもう話にならない。

『まぁまぁ玲璃。えっと~、この辺で白桐優子さんって人知らないかな?元は相模原の人なんだけど、俺らその人に会いたいだけなんだ』

 見るに見かねて麗桜がその名を出すと相手は全員反応を示した。

『白桐、優子…だって?』

『知ってるのか!?』

 麗桜は思わぬ反応に期待が一気に高まったが話はすんなりとはいかなかった。

『知ってるも何も優子さんはウチらの頭だ!…分かったぞ。テメーらさては夜叉猫だな?』

『はぁ?』

 ここでまた話はこじれる。

『おい、みんなに連絡だ。夜叉猫が優子さん狙って本厚に乗り込んできてるってよ!』

『えぇっ!?ちょっちょっちょっ、あたしたち夜叉猫とは仲良いけど夜叉猫のメンバーじゃないよ!?』

 訳も分からず愛羽は誤解を解こうとしたが相手に聞く耳はなさそうだ。

『言い訳してんじゃねーよ。小田原で族車乗ってて夜叉猫じゃないだぁ?舐めんのもいい加減にしろよコラ!』

 そう言った学ランの女の1人が愛羽の胸ぐらをつかんだ。
 するとすかさず横からその手を風雅がつかんだ。

『その手を放せ…』

 風雅が怒っている。そのまま風雅はつかんだ手に力を込めた。

『いてててて!は、放しやがれ!』

『その手を放すのが先だ』

 たまらず相手は愛羽から手を放してしまった。

『なぁ、頼むからさ、その優子って人に会わせてくれよ。俺らその人に会わせてあげたい人がいるだけなんだ』

『そんな見え透いた罠にはまると思ってんのか?』

『嘘じゃない。相模原の、鬼音姫の樹さんって人なんだ。優子って人の相棒だった人なんだよ。なんとか話せないかな?』

『鬼音姫の樹?ウチの優子さんと?そんな話聴いたことねぇよ。でたらめ言いやがって』

 相手はとぼけているのではなく本当に知らないようだ。

『そんな…』

 白桐優子は生きて確かに存在している。

 しかし麗桜はやはり話が少しおかしいことを感じながら前日の豹那の言葉を思い出していた。

 それから考える間もなく、そこに1台の車が停まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

暴走♡アイドル ~ヨアケノテンシ~

雪ノ瀬瞬
青春
アイドルになりたい高校1年生。暁愛羽が地元神奈川の小田原で友達と暴走族を結成。 神奈川は横浜、相模原、湘南、小田原の4大暴走族が敵対し合い、そんな中たった数人でチームを旗揚げする。 しかし4大暴走族がにらみ合う中、関東最大の超大型チーム、東京連合の魔の手が神奈川に忍びより、愛羽たちは狩りのターゲットにされてしまう。 そして仲間は1人、また1人と潰されていく。 総員1000人の東京連合に対し愛羽たちはどう戦うのか。 どうすれば大切な仲間を守れるのか。 暴走族とは何か。大切なものは何か。 少女たちが悩み、葛藤した答えは何なのか。 それは読んだ人にしか分からない。 前髪パッツンのポニーテールのチビが強い! そして飛ぶ、跳ぶ、翔ぶ! 暴走アイドルは出てくるキャラがみんなカッコいいので、きっとアイドルたちがあなたの背中も押してくれると思います。

最強!最凶?理不尽賢者ローズマリーを夜露死苦!

日置弓弦
ファンタジー
茨城の女暴走族・狼図魔龍鰔(ローズマリー)の総長兼特攻隊長時計坂桜は敵対する悪琉棲斗露滅離悪(アルストロメリア)の総長とタイマンを張ることになるが、罠に嵌められ事故に巻き込まれてしまう。気が付くとそこは桜のいた世界ではなく、人間やエルフが魔王によって脅かされている異世界だった。桜は古に予言された魔王を倒す「大賢者」だということが判明し、大賢者ローズマリーとして魔王を倒すことになり……無慈悲にまた理不尽に世界を冒険する物語である。 ライトにサクサク読めるように書きました。1部あたり平均2000文字です。プロローグは読まなくても先に進めます。小説家になろうサイトでも未改訂版が連載完結しております。

燦歌を乗せて

河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。 久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。 第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

「親の介護のこととか」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
高齢になった親との暮らしのことなどを、エッセイ風に綴ります。

処理中です...