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前編
トンガリちゃん
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『よぉ!』
綺夜羅は廊下ですれ違う時におもいきって声をかけた。
『あたし月下綺夜羅だ。よろしくな!』
『あたしに話しかけないで』
旋は綺夜羅が言い終わるのを最後まで聞かず目も合わさずに言い通り過ぎていった。
『暗い奴~。綺夜羅、あんなの放っときなよ』
掠は言ったが綺夜羅はうなずかなかった。
その日、当然のように上級生の団体が旋をシメようと動きだした。
もうすぐ下校という時、旋は1人ホームルームも受けず先に校舎の外で珠凛が来るのを待っていたが、それよりも先に上級生たちが目の前に現れた。
旋のことをぐるっと囲むと1人が前に出てきて凄んだ。
『ガキぃ。逃げられねーぞ』
『逃げる?あたしが逃げんと思ってんの?ここでやってやるからかかってこいよ!』
旋は構わずつかみかかっていったが何人か殴り飛ばすもすぐ押さえつけられた。
『バカかお前。こっちの人数見ろっての。焦んな、ちゃんとぶっ殺してやんから』
軽く30人はいよう人数に旋もさすがに抵抗できず校舎の裏へと連れていかれた。
『よーし、みんなでワンノーやろ。絶対逃がさないでねー』
上級生たちは輪になり旋を囲んだ。ワンノーとはワンバンノーバンという向かい合ったり円になったりしながらサッカーボールを蹴り合い地面にノーバウンド、もしくはワンバウンドしかさせないで続けていくという遊びだ。
それをつまり人間でやろうということらしい。
『さぁ、始めるよー』
旋は後ろからおもいきり蹴り飛ばされると今度は目の前の女に殴られ、また違う方へと追いやられた。
旋には休む時間など与えられない。
女たちも最初はゲーム感覚だったが、段々と暴行を加えることに楽しみを覚え始めると次は自分だ、自分もだと積極的に前に出るようになっていった。
旋がひざを着いてもそれを許さない。
『あー、止まっちゃったよ。最後に蹴った奴1ミスねー。おいボール、立てよオラ!』
髪を引っ張られ無理矢理立たされ、また暴行は繰り返された。
人間の怖い所だ。みんな手を出しながら笑っている。
きっと自分がやられようものなら死ぬ程恐怖し泣きながら許しを乞うのだろうが、やっている側になればここまで残酷になれてしまう。
そんなことを思うとまた怒りがこみ上げてきたが、もはや体中ボロボロで手も足も出せなかった。
だから旋は渾身の力を振り絞って目の前の女の顔につばを吐いてやった。
『この野郎、汚ねぇなクソガキィ!』
そこから更に暴行はエスカレートしていった。
(こいつら…やりたい放題やりやがって…)
心の中で思うものの、まだ中学1年のその小さな体は続く暴行に打ちひしがれ、とうとう限界へときてしまっていた。
(…死んだら…お姉ちゃんに、会えるのかな…)
旋には7つ年上の姉がいた。
面倒見がよく、しっかりしていて、旋が生まれた時から初めての妹のことをとても可愛がっていた。
オムツなど母親よりも率先して替えてやっていたほどで哺乳瓶でミルクをあげることをいつも楽しみにしていた。
歳もそれだけ離れているとケンカもなく仲の良い姉妹で、とにかく姉が優しかったので旋も姉のことが大好きだった。
勉強もその他のことも誰よりも姉が教えてくれた。
旋が生まれた時すでに小学生で旋が小学生に上がる時にはもう中学2年。確かに歳は離れてはいるがだからこそ旋にとって姉は尊敬できる憧れの年上だった。
これがまた偶然というのか驚くことに、その姉の名前が優子だったのだ。
綺夜羅は廊下ですれ違う時におもいきって声をかけた。
『あたし月下綺夜羅だ。よろしくな!』
『あたしに話しかけないで』
旋は綺夜羅が言い終わるのを最後まで聞かず目も合わさずに言い通り過ぎていった。
『暗い奴~。綺夜羅、あんなの放っときなよ』
掠は言ったが綺夜羅はうなずかなかった。
その日、当然のように上級生の団体が旋をシメようと動きだした。
もうすぐ下校という時、旋は1人ホームルームも受けず先に校舎の外で珠凛が来るのを待っていたが、それよりも先に上級生たちが目の前に現れた。
旋のことをぐるっと囲むと1人が前に出てきて凄んだ。
『ガキぃ。逃げられねーぞ』
『逃げる?あたしが逃げんと思ってんの?ここでやってやるからかかってこいよ!』
旋は構わずつかみかかっていったが何人か殴り飛ばすもすぐ押さえつけられた。
『バカかお前。こっちの人数見ろっての。焦んな、ちゃんとぶっ殺してやんから』
軽く30人はいよう人数に旋もさすがに抵抗できず校舎の裏へと連れていかれた。
『よーし、みんなでワンノーやろ。絶対逃がさないでねー』
上級生たちは輪になり旋を囲んだ。ワンノーとはワンバンノーバンという向かい合ったり円になったりしながらサッカーボールを蹴り合い地面にノーバウンド、もしくはワンバウンドしかさせないで続けていくという遊びだ。
それをつまり人間でやろうということらしい。
『さぁ、始めるよー』
旋は後ろからおもいきり蹴り飛ばされると今度は目の前の女に殴られ、また違う方へと追いやられた。
旋には休む時間など与えられない。
女たちも最初はゲーム感覚だったが、段々と暴行を加えることに楽しみを覚え始めると次は自分だ、自分もだと積極的に前に出るようになっていった。
旋がひざを着いてもそれを許さない。
『あー、止まっちゃったよ。最後に蹴った奴1ミスねー。おいボール、立てよオラ!』
髪を引っ張られ無理矢理立たされ、また暴行は繰り返された。
人間の怖い所だ。みんな手を出しながら笑っている。
きっと自分がやられようものなら死ぬ程恐怖し泣きながら許しを乞うのだろうが、やっている側になればここまで残酷になれてしまう。
そんなことを思うとまた怒りがこみ上げてきたが、もはや体中ボロボロで手も足も出せなかった。
だから旋は渾身の力を振り絞って目の前の女の顔につばを吐いてやった。
『この野郎、汚ねぇなクソガキィ!』
そこから更に暴行はエスカレートしていった。
(こいつら…やりたい放題やりやがって…)
心の中で思うものの、まだ中学1年のその小さな体は続く暴行に打ちひしがれ、とうとう限界へときてしまっていた。
(…死んだら…お姉ちゃんに、会えるのかな…)
旋には7つ年上の姉がいた。
面倒見がよく、しっかりしていて、旋が生まれた時から初めての妹のことをとても可愛がっていた。
オムツなど母親よりも率先して替えてやっていたほどで哺乳瓶でミルクをあげることをいつも楽しみにしていた。
歳もそれだけ離れているとケンカもなく仲の良い姉妹で、とにかく姉が優しかったので旋も姉のことが大好きだった。
勉強もその他のことも誰よりも姉が教えてくれた。
旋が生まれた時すでに小学生で旋が小学生に上がる時にはもう中学2年。確かに歳は離れてはいるがだからこそ旋にとって姉は尊敬できる憧れの年上だった。
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