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前編
『理由』
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『優子ちゃん先輩…優子ちゃん先輩!』
旋は説明できないほどの思いを胸に巡らせながら車の前まで走った。
『元気だった!?あたし、めぐだよ!久しぶりだね!』
優子は旋の方を見向きもしない。
『ねぇ、今…何やってるの?ほら、CRS作ったの?』
旋はそれでも夢中になって話しかけた。
『うるさい…』
『え?』
優子は急に顔を険しくさせた。
『2度とあたしの前に現れるなと言ったよな?失せろ!』
言い捨てるようにして優子はそのまま車を走らせ行ってしまった。
旋は車が走り去っていくのをずっと眺めていた。そうして立ち尽くす旋の肩を珠凛が後ろからそっと抱いてやった。
『めぐ、学校に行きましょ。遅れてしまってるわ』
『…ひどいよね。目の前に現れてきたのは、優子ちゃんの方なのに…』
珠凛は優しく頭をなでて、そのまだ新しいカーディガンの袖で旋のほほを拭ってあげた。
その日は学校に着いてからも旋は明らかに元気がなく、綺夜羅も誰もがそれに気付いていた。
『おい、めぐ…おーい!めぐってば!』
休憩時間も旋は自分の席で頬杖をつきながらボーッとしているので綺夜羅は教室の外から声をかけた。
だが旋は呼んでも全く反応しない。
綺夜羅は首をかしげながら旋の前まで行くと自分の人差し指と中指をズボッと旋の鼻の穴に突っ込んだ。
『ふがっ!ちょっちょっちょっと綺夜羅!あたしまだそこ処女!タンマタンマ!』
『なーんだ。生きてるじゃねーか。死んだ魚みてーな目ぇしてんから座りながら死んでるかと思ったぜ。それよりよ、どーした?めぐ。お前らしくねーじゃねーか。便秘か?生理か?腹減ってんのか?』
『綺夜羅あんたねぇ、めぐはあんたじゃないのよ?そんなつまんないことでめぐがこんなになる訳ないでしょ?あんたと数位よ、そんな奴』
すかさず横から突っこむがそう言っている掠もどちらかと言えばそんな奴だ。
『めぐちゃん。どうしたの?』
いつもの陽気な感じと違いすぎる旋が心配すぎて燃も声をかけずにはいられなかった。
『ん?なんでもないよ…って、燃に言ってもダメか。ごめんね、でも大丈夫だから。大したことじゃないから』
そうやって無理矢理笑うと旋は立ち上がり1人で教室を出ていってしまった。
『…なぁ珠凛。お前ら今日なんかあっただろ?』
『まぁ…あったと言えば、あったわね…』
『その前にさ、お前ボタンかけ違えてるぞ』
『え!?あ!』
珠凛は顔を真っ赤にしてカーディガンのボタンをかけ直した。
『へっへっへ、お前らしくねぇなぁ。そんなにめぐが心配か?どーしたよ。あたしらに言えねーようなことか?』
綺夜羅は珠凛が珍しくそんな調子なので面白そうにして言う。
珠凛はため息をついた。
『そうじゃないの…』
『んぁ?』
『自分の中でちゃんと消さなきゃいけないことだって、思ってるだけなの』
それを聞いて綺夜羅はすぐに言葉を返した。
『へぇ。消えないのが分かってるのにか?』
『…え?それは…どういう…こと?』
『だってよ、お前らが消さなきゃいけないって思ってるんだとしたら、そーゆー顔してるぜ?お前も、あいつも』
珠凛はそんなことなどないと思っていた。旋がそうであったとしても自分に限ってはないと、そう思っていた。
『あたしは大丈夫。あたしは強いんだ。しっかりしなきゃってさ。そう思えるのはお前のいいとこだよな。実際お前が1番しっかりしてるし、いつも助かってんだけどよ…でもお前、必ずしもそうじゃなきゃいけねーんじゃねーんだからな?しっかりしてなきゃいけねーなんてことねーんだ。ボタンだって、かけ違える日もありゃボタンなんてしたくない日もあるでいいんだ。だからお前、それ勘違いして無理すんなよな』
そうやって言いながら綺夜羅は珠凛のカーディガンのボタンを珠凛が直した側からまたチグハグにかけ違えていった。
そして最後にニカッと笑ってみせた。
綺夜羅というこの少女は本当に大した子だと思えた。
こんなに自分のことを分かってくれる。何も言わなくても分かってくれようとしてくれ支えてくれようとする。
いつも近くにいる友達だからといってもなかなかできそうでできないことだ。
珠凛はそれが今すごく嬉しかった。
だから綺夜羅に全てを話した。
自分のこと。旋のこと。優子のこと。
そして、自分の中にずっと引っかかっているあることも。
旋は説明できないほどの思いを胸に巡らせながら車の前まで走った。
『元気だった!?あたし、めぐだよ!久しぶりだね!』
優子は旋の方を見向きもしない。
『ねぇ、今…何やってるの?ほら、CRS作ったの?』
旋はそれでも夢中になって話しかけた。
『うるさい…』
『え?』
優子は急に顔を険しくさせた。
『2度とあたしの前に現れるなと言ったよな?失せろ!』
言い捨てるようにして優子はそのまま車を走らせ行ってしまった。
旋は車が走り去っていくのをずっと眺めていた。そうして立ち尽くす旋の肩を珠凛が後ろからそっと抱いてやった。
『めぐ、学校に行きましょ。遅れてしまってるわ』
『…ひどいよね。目の前に現れてきたのは、優子ちゃんの方なのに…』
珠凛は優しく頭をなでて、そのまだ新しいカーディガンの袖で旋のほほを拭ってあげた。
その日は学校に着いてからも旋は明らかに元気がなく、綺夜羅も誰もがそれに気付いていた。
『おい、めぐ…おーい!めぐってば!』
休憩時間も旋は自分の席で頬杖をつきながらボーッとしているので綺夜羅は教室の外から声をかけた。
だが旋は呼んでも全く反応しない。
綺夜羅は首をかしげながら旋の前まで行くと自分の人差し指と中指をズボッと旋の鼻の穴に突っ込んだ。
『ふがっ!ちょっちょっちょっと綺夜羅!あたしまだそこ処女!タンマタンマ!』
『なーんだ。生きてるじゃねーか。死んだ魚みてーな目ぇしてんから座りながら死んでるかと思ったぜ。それよりよ、どーした?めぐ。お前らしくねーじゃねーか。便秘か?生理か?腹減ってんのか?』
『綺夜羅あんたねぇ、めぐはあんたじゃないのよ?そんなつまんないことでめぐがこんなになる訳ないでしょ?あんたと数位よ、そんな奴』
すかさず横から突っこむがそう言っている掠もどちらかと言えばそんな奴だ。
『めぐちゃん。どうしたの?』
いつもの陽気な感じと違いすぎる旋が心配すぎて燃も声をかけずにはいられなかった。
『ん?なんでもないよ…って、燃に言ってもダメか。ごめんね、でも大丈夫だから。大したことじゃないから』
そうやって無理矢理笑うと旋は立ち上がり1人で教室を出ていってしまった。
『…なぁ珠凛。お前ら今日なんかあっただろ?』
『まぁ…あったと言えば、あったわね…』
『その前にさ、お前ボタンかけ違えてるぞ』
『え!?あ!』
珠凛は顔を真っ赤にしてカーディガンのボタンをかけ直した。
『へっへっへ、お前らしくねぇなぁ。そんなにめぐが心配か?どーしたよ。あたしらに言えねーようなことか?』
綺夜羅は珠凛が珍しくそんな調子なので面白そうにして言う。
珠凛はため息をついた。
『そうじゃないの…』
『んぁ?』
『自分の中でちゃんと消さなきゃいけないことだって、思ってるだけなの』
それを聞いて綺夜羅はすぐに言葉を返した。
『へぇ。消えないのが分かってるのにか?』
『…え?それは…どういう…こと?』
『だってよ、お前らが消さなきゃいけないって思ってるんだとしたら、そーゆー顔してるぜ?お前も、あいつも』
珠凛はそんなことなどないと思っていた。旋がそうであったとしても自分に限ってはないと、そう思っていた。
『あたしは大丈夫。あたしは強いんだ。しっかりしなきゃってさ。そう思えるのはお前のいいとこだよな。実際お前が1番しっかりしてるし、いつも助かってんだけどよ…でもお前、必ずしもそうじゃなきゃいけねーんじゃねーんだからな?しっかりしてなきゃいけねーなんてことねーんだ。ボタンだって、かけ違える日もありゃボタンなんてしたくない日もあるでいいんだ。だからお前、それ勘違いして無理すんなよな』
そうやって言いながら綺夜羅は珠凛のカーディガンのボタンを珠凛が直した側からまたチグハグにかけ違えていった。
そして最後にニカッと笑ってみせた。
綺夜羅というこの少女は本当に大した子だと思えた。
こんなに自分のことを分かってくれる。何も言わなくても分かってくれようとしてくれ支えてくれようとする。
いつも近くにいる友達だからといってもなかなかできそうでできないことだ。
珠凛はそれが今すごく嬉しかった。
だから綺夜羅に全てを話した。
自分のこと。旋のこと。優子のこと。
そして、自分の中にずっと引っかかっているあることも。
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