20 / 173
前編
優子ちゃん先輩
しおりを挟む
『はは、なんだよあいつら。てんで大したことねぇのに威張りくさりやがって。お前らケガ大丈夫か?』
大したことない?いや、それは分からないがこの女とてつもなく強かった。
『あの…ありがとうございました』
『本当、なんとお礼を言っていいか…』
2人はこのリーゼントの女にもうすでに興味を持ち、憧れのような気持ちを抱いてしまっていた。
『いいっていいって。あたし本当に通りかかっただけなんだ。どこの学校にもあーゆーことってあるんだな。目ぇ付けられねーようにしな』
他の上級生とは違い、優しく笑う人だった。
『あ、あの、あたし雛葉旋でこの子赤松珠凛です。先輩、名前教えてもらってもいいですか?』
『先輩なんてやめてくれよ。あたしは白桐優子。あたしからしたらお前らの方が先輩だぜ。まだ転校してきたばっかでさぁ、右も左も分かんねーんだ。そもそもさっきも道よく分かんなくて迷っててよ。あっはは!よろしくな』
『えっ!優子って言うの?どっから来たんですか?』
『めぐ、馴れ馴れしいわよ。すいません白桐先輩。どこから引っ越されてきたんですか?』
優子は笑ってしまっていた。
『だからいいって、そんなにかしこまんなくて。優子~でも、ちゃんでもくんでも好きなように呼んでくれよ。あたし後輩より友達の方が欲しいんだよ』
そう言われてもいきなりは難しいものだ。
『ん~。じゃ~優子ちゃん先輩!』
『もう。めぐ、それじゃ呼ばれる方も恥ずかしいわよ。優子ちゃ…ちゃ?…ゆ、優子さんって呼ばせてもらってもいいですか?』
『あっはっは!お前ら本当にでこぼこコンビだな!あたしは相模原から来たんだ』
それから3人はよくつるむようになっていった。
3人はその後も不良グループに狙われ囲まれることもあったがその度に優子が1人で圧倒的な強さでコテンパンにやっつけた。
その内3人にからんでくる者もいなくなり、しばらく平和な日を過ごしていた。
優子は2人に相模原の親友で今は離れ離れの相棒のことや、自分がいじめられっこのパシリだったこと。初めての家出のことから、それでもキックボクシングを始め相模原を統一したことなど自分のことをなんでも話した。
もちろん、樹と2人で毎日のように語ったあのことも。
『これ見ろよ。あたしが考えたチーム名、相棒がデザインしてくれたんだ。カッコいいだろ?』
『C…R…S?』
優子は樹が描いてくれたデザインを2人に自慢気に見せた。
『CRSってのはさ、元々ある暴走族なんだけど、あたしらで女だけのCRSを作ろうって言ってたんだ』
作りたかった。作るはずだった。
優子は、そんな言葉が口から出てしまいそうになるのを自分の中で抑えていた。
『へぇ~。この絵、上手だね!カッコいい~。なんて書いてあるか分かんないけど』
描かれた特攻服のデザインやチーム名を見て旋は目を輝かせた。
優子の話を聞いてからそれらを見るともはや宝物のように見えてくる。
『クレイジービーナス、レッドクイーン、セクシーマリアよ。めぐ、あなた英語位読めるようになんなさいよ』
珠凛はちょいちょい保護者感を出してくる。
『じゃあさじゃあさ!優子ちゃん先輩はさ、卒業したらそっちでチーム作るの!?』
『…え?』
その言葉は優子の時を止め、彼女の中で何回も繰り返された。
『だってだって、今は中学生だからしょうがないけど、高校はあっち行くこともできるでしょ!?そしたらあたしも2人のチームに入りたいもん!』
旋に言われるまでそんなこと考えもしなかったが。
(そうか。そう考えたらあとたった何ヵ月か違う中学ってだけでまた一緒になれるんだ)
言われてみればその通りで自分はつまらないことでくよくよしてしまっていたと優子は思えていた。
『…そうだな。あたしもそうしたいと今思ったよ』
最初に優子が言った通り、3人は歳が2つ違いではあったが友達として打ち解けることがすぐにでき、特に優子は転校したばかりの新天地でとても心の支えになる嬉しい出会いとなった。
『もしもし?よぉ優子。そっちはどうだ?なんか困ってねーか?』
『はは、大丈夫だよ。子供じゃねぇんだから。そんなにあたしが心配なのか?あ、分かった。さてはもう寂しくなっちゃったんだ』
『は?はぁ?何言ってんだこの女。あたしは単純に心配しただけですぅ』
『あら、そうですか?全く樹は素直じゃないんだから』
優子が引っ越してからというもの、毎日2人は連絡を取り合っていた。
やはり樹の方が地元を1人離れてしまった優子のことをとにかく心配していたのだが、優子はそんな風に樹をからかったりして安心させようとしていた。
『まぁ心配しないでよ。相模原一家として恥ずかしくないようにちゃんとやってるからさ』
優子は樹に同じ高校に行こうとは言わなかった。
時期が来たら伝えて驚かせるつもりだった。
大したことない?いや、それは分からないがこの女とてつもなく強かった。
『あの…ありがとうございました』
『本当、なんとお礼を言っていいか…』
2人はこのリーゼントの女にもうすでに興味を持ち、憧れのような気持ちを抱いてしまっていた。
『いいっていいって。あたし本当に通りかかっただけなんだ。どこの学校にもあーゆーことってあるんだな。目ぇ付けられねーようにしな』
他の上級生とは違い、優しく笑う人だった。
『あ、あの、あたし雛葉旋でこの子赤松珠凛です。先輩、名前教えてもらってもいいですか?』
『先輩なんてやめてくれよ。あたしは白桐優子。あたしからしたらお前らの方が先輩だぜ。まだ転校してきたばっかでさぁ、右も左も分かんねーんだ。そもそもさっきも道よく分かんなくて迷っててよ。あっはは!よろしくな』
『えっ!優子って言うの?どっから来たんですか?』
『めぐ、馴れ馴れしいわよ。すいません白桐先輩。どこから引っ越されてきたんですか?』
優子は笑ってしまっていた。
『だからいいって、そんなにかしこまんなくて。優子~でも、ちゃんでもくんでも好きなように呼んでくれよ。あたし後輩より友達の方が欲しいんだよ』
そう言われてもいきなりは難しいものだ。
『ん~。じゃ~優子ちゃん先輩!』
『もう。めぐ、それじゃ呼ばれる方も恥ずかしいわよ。優子ちゃ…ちゃ?…ゆ、優子さんって呼ばせてもらってもいいですか?』
『あっはっは!お前ら本当にでこぼこコンビだな!あたしは相模原から来たんだ』
それから3人はよくつるむようになっていった。
3人はその後も不良グループに狙われ囲まれることもあったがその度に優子が1人で圧倒的な強さでコテンパンにやっつけた。
その内3人にからんでくる者もいなくなり、しばらく平和な日を過ごしていた。
優子は2人に相模原の親友で今は離れ離れの相棒のことや、自分がいじめられっこのパシリだったこと。初めての家出のことから、それでもキックボクシングを始め相模原を統一したことなど自分のことをなんでも話した。
もちろん、樹と2人で毎日のように語ったあのことも。
『これ見ろよ。あたしが考えたチーム名、相棒がデザインしてくれたんだ。カッコいいだろ?』
『C…R…S?』
優子は樹が描いてくれたデザインを2人に自慢気に見せた。
『CRSってのはさ、元々ある暴走族なんだけど、あたしらで女だけのCRSを作ろうって言ってたんだ』
作りたかった。作るはずだった。
優子は、そんな言葉が口から出てしまいそうになるのを自分の中で抑えていた。
『へぇ~。この絵、上手だね!カッコいい~。なんて書いてあるか分かんないけど』
描かれた特攻服のデザインやチーム名を見て旋は目を輝かせた。
優子の話を聞いてからそれらを見るともはや宝物のように見えてくる。
『クレイジービーナス、レッドクイーン、セクシーマリアよ。めぐ、あなた英語位読めるようになんなさいよ』
珠凛はちょいちょい保護者感を出してくる。
『じゃあさじゃあさ!優子ちゃん先輩はさ、卒業したらそっちでチーム作るの!?』
『…え?』
その言葉は優子の時を止め、彼女の中で何回も繰り返された。
『だってだって、今は中学生だからしょうがないけど、高校はあっち行くこともできるでしょ!?そしたらあたしも2人のチームに入りたいもん!』
旋に言われるまでそんなこと考えもしなかったが。
(そうか。そう考えたらあとたった何ヵ月か違う中学ってだけでまた一緒になれるんだ)
言われてみればその通りで自分はつまらないことでくよくよしてしまっていたと優子は思えていた。
『…そうだな。あたしもそうしたいと今思ったよ』
最初に優子が言った通り、3人は歳が2つ違いではあったが友達として打ち解けることがすぐにでき、特に優子は転校したばかりの新天地でとても心の支えになる嬉しい出会いとなった。
『もしもし?よぉ優子。そっちはどうだ?なんか困ってねーか?』
『はは、大丈夫だよ。子供じゃねぇんだから。そんなにあたしが心配なのか?あ、分かった。さてはもう寂しくなっちゃったんだ』
『は?はぁ?何言ってんだこの女。あたしは単純に心配しただけですぅ』
『あら、そうですか?全く樹は素直じゃないんだから』
優子が引っ越してからというもの、毎日2人は連絡を取り合っていた。
やはり樹の方が地元を1人離れてしまった優子のことをとにかく心配していたのだが、優子はそんな風に樹をからかったりして安心させようとしていた。
『まぁ心配しないでよ。相模原一家として恥ずかしくないようにちゃんとやってるからさ』
優子は樹に同じ高校に行こうとは言わなかった。
時期が来たら伝えて驚かせるつもりだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
暴走♡アイドル ~ヨアケノテンシ~
雪ノ瀬瞬
青春
アイドルになりたい高校1年生。暁愛羽が地元神奈川の小田原で友達と暴走族を結成。
神奈川は横浜、相模原、湘南、小田原の4大暴走族が敵対し合い、そんな中たった数人でチームを旗揚げする。
しかし4大暴走族がにらみ合う中、関東最大の超大型チーム、東京連合の魔の手が神奈川に忍びより、愛羽たちは狩りのターゲットにされてしまう。
そして仲間は1人、また1人と潰されていく。
総員1000人の東京連合に対し愛羽たちはどう戦うのか。
どうすれば大切な仲間を守れるのか。
暴走族とは何か。大切なものは何か。
少女たちが悩み、葛藤した答えは何なのか。
それは読んだ人にしか分からない。
前髪パッツンのポニーテールのチビが強い!
そして飛ぶ、跳ぶ、翔ぶ!
暴走アイドルは出てくるキャラがみんなカッコいいので、きっとアイドルたちがあなたの背中も押してくれると思います。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
時々、僕は透明になる
小原ききょう
青春
影の薄い僕と、7人の個性的、異能力な美少女たちとの間に繰り広げられる恋物語。
影の薄い僕はある日透明化した。
それは勉強中や授業中だったり、またデート中だったり、いつも突然だった。
原因が何なのか・・透明化できるのは僕だけなのか?
そして、僕の姿が見える人間と、見えない人間がいることを知る。その中間・・僕の姿が半透明に見える人間も・・その理由は?
もう一人の透明化できる人間の悲しく、切ない秘密を知った時、僕は・・
文芸サークルに入部した僕は、三角関係・・七角関係へと・・恋物語の渦中に入っていく。
時々、透明化する少女。
時々、人の思念が見える少女。
時々、人格乖離する少女。
ラブコメ的要素もありますが、
回想シーン等では暗く、挫折、鬱屈した青春に、
圧倒的な初恋、重い愛が描かれます。
(登場人物)
鈴木道雄・・主人公の男子高校生(2年2組)
鈴木ナミ・・妹(中学2年生)
水沢純子・・教室の窓際に座る初恋の女の子
加藤ゆかり・・左横に座るスポーツ万能女子
速水沙織・・後ろの席に座る眼鏡の文学女子 文芸サークル部長
小清水沙希・・最後尾に座る女の子 文芸サークル部員
青山灯里・・文芸サークル部員、孤高の高校3年生
石上純子・・中学3年の時の女子生徒
池永かおり・・文芸サークルの顧問、マドンナ先生
「本山中学」

一人用声劇台本
ふゎ
恋愛
一人用声劇台本です。
男性向け女性用シチュエーションです。
私自身声の仕事をしており、
自分の好きな台本を書いてみようという気持ちで書いたものなので自己満のものになります。
ご使用したい方がいましたらお気軽にどうぞ
【完結】マギアアームド・ファンタジア
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
ハイファンタジーの広大な世界を、魔法装具『マギアアームド』で自由自在に駆け巡る、世界的アクションVRゲーム『マギアアームド・ファンタジア』。
高校に入学し、ゲーム解禁を許された織原徹矢は、中学時代からの友人の水城菜々花と共に、マギアアームド・ファンタジアの世界へと冒険する。
待ち受けるは圧倒的な自然、強大なエネミー、予期せぬハーレム、そして――この世界に花咲く、小さな奇跡。
王道を以て王道を征す、近未来風VRMMOファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる