135 / 142
後編
言えなかった言葉
しおりを挟む
『あっ、ねぇ、やった!出てきたよ4人共!』
4人が煙の中から出てくるのをみんなそわそわしながら待っていたが4人の無事を確認し掠が声を出した。
みんな安心した途端に座りこんでしまった。イデアや萼に浬も一先ず安心しているようだった。
咲薇がみんなの所にたどり着くと萼と浬が咲薇に向かっていった。
『おい咲薇』
萼が咲薇の目の前に立つと咲薇がひざを着いた。だが萼は咲薇の胸ぐらをつかんでそれをさせなかった。
『萼…ごめん…あたし…』
『いや…』
もちろん殴られると思った。そのつもりで頭を下げようとしたのだ。
『…よぉ分からん…でも、お前がそうなったのはもしかしたらあたしのせいかもしれん…』
咲薇にはその言葉の意味は分からなかった。
『だから勝手に頭なんか下げるな。お前が頭下げるべきなんはあたしとちゃうやろ』
言われて咲薇は浬の方に向き直った。
『浬さん…』
『悪いけど咲薇、あたしはまだ整理がついてへん。お前を許せるとは思えん』
『すいません…』
『でも、2度と自分で命を落とすような真似はするな。そんなんは逃げてるだけや。死ぬんやったら、あの女に殺してもらえ。今あたしが言えるんはそれだけや…』
浬は咲薇の顔を見なかった。咲薇は頭を下げるとそのまま疎井冬の目の前まで行き土下座をした。
『…なんの真似?』
咲薇は手を地に着き下を向きながら叶泰のことを思い出していた。何を思い出しても出てくるのは涙だけだった。
そして疎井冬にとってもそれは同じことなのだと思うと、何を言葉にすればいいか分からなかった。
『…ごめんなさい…あたしは今謝ることしかでできません。こんなことしてもどうしようもないのは分かってます。でも、せめて頭だけでも下げさせてください。本当に…ごめんなさい…』
咲薇は涙を流しながら地に頭を着けた。
『ふざけないで。斬るわ…いいね?』
冬は刀を抜いた。ひざを着いて座る咲薇の首に刀をあてがうと刀を振りかぶった。
『ねぇ、ちょっと、嘘でしょ?やめてよ!』
それに気付いた燃や掠が止めさせようと走りだしていく。
しかし冬は咲薇の首めがけて振り抜いた。
私はどうすればよかったのだろう…
どうすれば叶泰くんのことを守れたのだろ
う…
そして死んだ叶泰くんに私は何をしてあげられるのだろう…
あれから1年が経つが、私はアヤメに外のことを任せながら自分の中でその答えを探していた。
死んでしまいたいと思ったことなど何回もあった。
他のことなど何も考えられなかった。
忘れることなんてできないし、私の心は彼を忘れたくなどなかった。
ではアヤメの言う通り復讐すれば何か変わるのだろうか。
叶泰くんに手をくだした者たち全てを地獄に誘えば。
もしくは暴走族などという愚かな者たち、その全てを滅ぼし去ることができれば、私の思いは報われ叶泰くんは笑ってくれるのだろうか…
だけど叶泰くんはもう帰ってこない。
もう2度と会えないのだ。
私は思う。私と出会わなければ叶泰くんは死んだりしなかった。
暴走族をやめて結婚することなど選ばなければ、ケジメを取られ、そして殺されることもなかった。
私なんかと出会ってしまったから叶泰くんは死んでしまった。
私が悪いのかな…
私が悪いんだ…
ごめんなさい。叶泰くん…
風矢咲薇の首をはねれば全て終わり…
私もそっちに行くから。でも私はきっと地獄に行くのかな…
「君は初めて見た時からなんか目が悲しそうやった…」
『……』
「心配せんでも大丈夫や。君は心が綺麗やから、君のことを大切にしてくれる人たちにこれからもっと出会えるよ…」
『……』
「君は、素敵な人や…一緒におれて幸せやったのは俺の方や…」
『……』
「君に出会えて…ホンマによかった…ありがとな…冬ちゃん…大好きやで…」
『……』
でも…もし、こんなことを言っていいのなら…
もう1度だけ、あなたに会いたい。
会って、私もあなたに…
ちゃんとありがとうと言いたかった…
4人が煙の中から出てくるのをみんなそわそわしながら待っていたが4人の無事を確認し掠が声を出した。
みんな安心した途端に座りこんでしまった。イデアや萼に浬も一先ず安心しているようだった。
咲薇がみんなの所にたどり着くと萼と浬が咲薇に向かっていった。
『おい咲薇』
萼が咲薇の目の前に立つと咲薇がひざを着いた。だが萼は咲薇の胸ぐらをつかんでそれをさせなかった。
『萼…ごめん…あたし…』
『いや…』
もちろん殴られると思った。そのつもりで頭を下げようとしたのだ。
『…よぉ分からん…でも、お前がそうなったのはもしかしたらあたしのせいかもしれん…』
咲薇にはその言葉の意味は分からなかった。
『だから勝手に頭なんか下げるな。お前が頭下げるべきなんはあたしとちゃうやろ』
言われて咲薇は浬の方に向き直った。
『浬さん…』
『悪いけど咲薇、あたしはまだ整理がついてへん。お前を許せるとは思えん』
『すいません…』
『でも、2度と自分で命を落とすような真似はするな。そんなんは逃げてるだけや。死ぬんやったら、あの女に殺してもらえ。今あたしが言えるんはそれだけや…』
浬は咲薇の顔を見なかった。咲薇は頭を下げるとそのまま疎井冬の目の前まで行き土下座をした。
『…なんの真似?』
咲薇は手を地に着き下を向きながら叶泰のことを思い出していた。何を思い出しても出てくるのは涙だけだった。
そして疎井冬にとってもそれは同じことなのだと思うと、何を言葉にすればいいか分からなかった。
『…ごめんなさい…あたしは今謝ることしかでできません。こんなことしてもどうしようもないのは分かってます。でも、せめて頭だけでも下げさせてください。本当に…ごめんなさい…』
咲薇は涙を流しながら地に頭を着けた。
『ふざけないで。斬るわ…いいね?』
冬は刀を抜いた。ひざを着いて座る咲薇の首に刀をあてがうと刀を振りかぶった。
『ねぇ、ちょっと、嘘でしょ?やめてよ!』
それに気付いた燃や掠が止めさせようと走りだしていく。
しかし冬は咲薇の首めがけて振り抜いた。
私はどうすればよかったのだろう…
どうすれば叶泰くんのことを守れたのだろ
う…
そして死んだ叶泰くんに私は何をしてあげられるのだろう…
あれから1年が経つが、私はアヤメに外のことを任せながら自分の中でその答えを探していた。
死んでしまいたいと思ったことなど何回もあった。
他のことなど何も考えられなかった。
忘れることなんてできないし、私の心は彼を忘れたくなどなかった。
ではアヤメの言う通り復讐すれば何か変わるのだろうか。
叶泰くんに手をくだした者たち全てを地獄に誘えば。
もしくは暴走族などという愚かな者たち、その全てを滅ぼし去ることができれば、私の思いは報われ叶泰くんは笑ってくれるのだろうか…
だけど叶泰くんはもう帰ってこない。
もう2度と会えないのだ。
私は思う。私と出会わなければ叶泰くんは死んだりしなかった。
暴走族をやめて結婚することなど選ばなければ、ケジメを取られ、そして殺されることもなかった。
私なんかと出会ってしまったから叶泰くんは死んでしまった。
私が悪いのかな…
私が悪いんだ…
ごめんなさい。叶泰くん…
風矢咲薇の首をはねれば全て終わり…
私もそっちに行くから。でも私はきっと地獄に行くのかな…
「君は初めて見た時からなんか目が悲しそうやった…」
『……』
「心配せんでも大丈夫や。君は心が綺麗やから、君のことを大切にしてくれる人たちにこれからもっと出会えるよ…」
『……』
「君は、素敵な人や…一緒におれて幸せやったのは俺の方や…」
『……』
「君に出会えて…ホンマによかった…ありがとな…冬ちゃん…大好きやで…」
『……』
でも…もし、こんなことを言っていいのなら…
もう1度だけ、あなたに会いたい。
会って、私もあなたに…
ちゃんとありがとうと言いたかった…
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
暴走♡アイドル ~ヨアケノテンシ~
雪ノ瀬瞬
青春
アイドルになりたい高校1年生。暁愛羽が地元神奈川の小田原で友達と暴走族を結成。
神奈川は横浜、相模原、湘南、小田原の4大暴走族が敵対し合い、そんな中たった数人でチームを旗揚げする。
しかし4大暴走族がにらみ合う中、関東最大の超大型チーム、東京連合の魔の手が神奈川に忍びより、愛羽たちは狩りのターゲットにされてしまう。
そして仲間は1人、また1人と潰されていく。
総員1000人の東京連合に対し愛羽たちはどう戦うのか。
どうすれば大切な仲間を守れるのか。
暴走族とは何か。大切なものは何か。
少女たちが悩み、葛藤した答えは何なのか。
それは読んだ人にしか分からない。
前髪パッツンのポニーテールのチビが強い!
そして飛ぶ、跳ぶ、翔ぶ!
暴走アイドルは出てくるキャラがみんなカッコいいので、きっとアイドルたちがあなたの背中も押してくれると思います。

乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~
雪ノ瀬瞬
青春
今回のステージは神奈川です
鬼音姫の哉原樹
彼女がストーリーの主人公となり彼女の過去が明らかになります
親友の白桐優子
優子の謎の失踪から突然の再会
何故彼女は姿を消したのか
私の中学の頃の実話を元にしました
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる