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中編

あたし重いから

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 豹那が気がつくと見知らぬ女性の顔が目の前にあった。通行人が心配して声をかけてくれたようだ。

 起き上がり辺りを見回すと般若娘の女たちはもういなかったが玲璃も見当たらなかった。

『あのー、もしかしてあの人も友達の人ですか?』

 言われて指差された方を見ると、ゴミ捨て場の積み上げられたゴミ袋の上に玲璃が捨てられていた。

『玲璃ぃ!』

 きしむ体を引きずってなんとか玲璃の所まで来るとまず生きていることを確認した。だが呼んでも揺さぶっても目を覚まさなかった。

『あの野郎…』

 豹那は怒りでどうにかなってしまいそうだったが玲璃をおぶると歩きだした。

『タクシーに乗らないと…』

 今いる場所がどこかも分からないのでとりあえずすぐそこの大通りまで出たい。

(くそっ、体中痛ぇ…あのくそガキ、やりたい放題やりやがって…)

 その体で人を1人おぶって歩くのはさすがに大変だったがそんなことは言ってられなかった。

『豹那…』

 玲璃がかろうじて目を覚ましたようだ。だが声が珍しく弱々しい。

『よかった。起きたのかい?待ってな、今すぐ病院連れてってやるからね』

『…重いだろ、あたし…最近さ…ちょっと太っちゃったんだ…歩くから…下ろしてよ…』

『バカだねぇ。体に力が入ってないよ、お前。いいから黙って乗っかってな』

 豹那は汗びっしょりになりながら歩いていく。

『ごめんね…あたしのせいで…あたしがいなきゃ…勝ってただろ?』

『うるさいねぇ、余計なこと気にしてんじゃないよ』

『…だって…豹那さんは…いっちばん強いから…』

 玲璃が豹那に「さん」と付けたことが妙に不安をあおった。

『おい玲璃、しっかりするんだよ!』

『いつも…ダンス…教えてくれて…ありがとう…』

『おい玲璃』

 豹那は呼んだが玲璃は返事をしなかった。

『おい!玲璃!』

 背中を揺さぶって声をかけても反応がない。

『ヤバい…早く、病院に連れてかないと…』
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