88 / 142
中編
あたし重いから
しおりを挟む
豹那が気がつくと見知らぬ女性の顔が目の前にあった。通行人が心配して声をかけてくれたようだ。
起き上がり辺りを見回すと般若娘の女たちはもういなかったが玲璃も見当たらなかった。
『あのー、もしかしてあの人も友達の人ですか?』
言われて指差された方を見ると、ゴミ捨て場の積み上げられたゴミ袋の上に玲璃が捨てられていた。
『玲璃ぃ!』
きしむ体を引きずってなんとか玲璃の所まで来るとまず生きていることを確認した。だが呼んでも揺さぶっても目を覚まさなかった。
『あの野郎…』
豹那は怒りでどうにかなってしまいそうだったが玲璃をおぶると歩きだした。
『タクシーに乗らないと…』
今いる場所がどこかも分からないのでとりあえずすぐそこの大通りまで出たい。
(くそっ、体中痛ぇ…あのくそガキ、やりたい放題やりやがって…)
その体で人を1人おぶって歩くのはさすがに大変だったがそんなことは言ってられなかった。
『豹那…』
玲璃がかろうじて目を覚ましたようだ。だが声が珍しく弱々しい。
『よかった。起きたのかい?待ってな、今すぐ病院連れてってやるからね』
『…重いだろ、あたし…最近さ…ちょっと太っちゃったんだ…歩くから…下ろしてよ…』
『バカだねぇ。体に力が入ってないよ、お前。いいから黙って乗っかってな』
豹那は汗びっしょりになりながら歩いていく。
『ごめんね…あたしのせいで…あたしがいなきゃ…勝ってただろ?』
『うるさいねぇ、余計なこと気にしてんじゃないよ』
『…だって…豹那さんは…いっちばん強いから…』
玲璃が豹那に「さん」と付けたことが妙に不安をあおった。
『おい玲璃、しっかりするんだよ!』
『いつも…ダンス…教えてくれて…ありがとう…』
『おい玲璃』
豹那は呼んだが玲璃は返事をしなかった。
『おい!玲璃!』
背中を揺さぶって声をかけても反応がない。
『ヤバい…早く、病院に連れてかないと…』
起き上がり辺りを見回すと般若娘の女たちはもういなかったが玲璃も見当たらなかった。
『あのー、もしかしてあの人も友達の人ですか?』
言われて指差された方を見ると、ゴミ捨て場の積み上げられたゴミ袋の上に玲璃が捨てられていた。
『玲璃ぃ!』
きしむ体を引きずってなんとか玲璃の所まで来るとまず生きていることを確認した。だが呼んでも揺さぶっても目を覚まさなかった。
『あの野郎…』
豹那は怒りでどうにかなってしまいそうだったが玲璃をおぶると歩きだした。
『タクシーに乗らないと…』
今いる場所がどこかも分からないのでとりあえずすぐそこの大通りまで出たい。
(くそっ、体中痛ぇ…あのくそガキ、やりたい放題やりやがって…)
その体で人を1人おぶって歩くのはさすがに大変だったがそんなことは言ってられなかった。
『豹那…』
玲璃がかろうじて目を覚ましたようだ。だが声が珍しく弱々しい。
『よかった。起きたのかい?待ってな、今すぐ病院連れてってやるからね』
『…重いだろ、あたし…最近さ…ちょっと太っちゃったんだ…歩くから…下ろしてよ…』
『バカだねぇ。体に力が入ってないよ、お前。いいから黙って乗っかってな』
豹那は汗びっしょりになりながら歩いていく。
『ごめんね…あたしのせいで…あたしがいなきゃ…勝ってただろ?』
『うるさいねぇ、余計なこと気にしてんじゃないよ』
『…だって…豹那さんは…いっちばん強いから…』
玲璃が豹那に「さん」と付けたことが妙に不安をあおった。
『おい玲璃、しっかりするんだよ!』
『いつも…ダンス…教えてくれて…ありがとう…』
『おい玲璃』
豹那は呼んだが玲璃は返事をしなかった。
『おい!玲璃!』
背中を揺さぶって声をかけても反応がない。
『ヤバい…早く、病院に連れてかないと…』
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~
雪ノ瀬瞬
青春
今回のステージは神奈川です
鬼音姫の哉原樹
彼女がストーリーの主人公となり彼女の過去が明らかになります
親友の白桐優子
優子の謎の失踪から突然の再会
何故彼女は姿を消したのか
私の中学の頃の実話を元にしました
暴走♡アイドル ~ヨアケノテンシ~
雪ノ瀬瞬
青春
アイドルになりたい高校1年生。暁愛羽が地元神奈川の小田原で友達と暴走族を結成。
神奈川は横浜、相模原、湘南、小田原の4大暴走族が敵対し合い、そんな中たった数人でチームを旗揚げする。
しかし4大暴走族がにらみ合う中、関東最大の超大型チーム、東京連合の魔の手が神奈川に忍びより、愛羽たちは狩りのターゲットにされてしまう。
そして仲間は1人、また1人と潰されていく。
総員1000人の東京連合に対し愛羽たちはどう戦うのか。
どうすれば大切な仲間を守れるのか。
暴走族とは何か。大切なものは何か。
少女たちが悩み、葛藤した答えは何なのか。
それは読んだ人にしか分からない。
前髪パッツンのポニーテールのチビが強い!
そして飛ぶ、跳ぶ、翔ぶ!
暴走アイドルは出てくるキャラがみんなカッコいいので、きっとアイドルたちがあなたの背中も押してくれると思います。
麻雀青春物語【カラスたちの戯れ】~牌戦士シリーズepisode3~
彼方
青春
平成の世に後の麻雀界を大きく変える雀士たちがいた。
彼らが運命によって導かれた場所は富士2号店。 そこでは様々な才能がぶつかり合い高め合った。
これは、小さな小さな店の中で起きた壮大な物語。
作画:tomo0111
信用してほしければそれ相応の態度を取ってください
haru.
恋愛
突然、婚約者の側に見知らぬ令嬢が居るようになった。両者共に恋愛感情はない、そのような関係ではないと言う。
「訳があって一緒に居るだけなんだ。どうか信じてほしい」
「ではその事情をお聞かせください」
「それは……ちょっと言えないんだ」
信じてと言うだけで何も話してくれない婚約者。信じたいけど、何をどう信じたらいいの。
二人の行動は更にエスカレートして周囲は彼等を秘密の関係なのではと疑い、私も婚約者を信じられなくなっていく。
あの瞬く星のような君の心音が、燃え尽きてしまったとしても
雨愁軒経
青春
人の一生における心拍数が決まっているといわれるように、夢にも熱量の拍数があるらしい。
夢拍症候群――別名『ハートビート・シンドローム』。
十代の少年少女が発症し、夢へ打ち込めば打ち込むほど昂った鼓動を鎮めるように揺り戻され、体が思うように動かなくなってしまう病。
症状に抗えば命を落とすこともある理不尽な足枷は、5年前に確認されてから今日まで、若者たちの未来を蝕み続けてきた。
イラストレーターを目指す一ノ瀬凪は、画題とした人の姿が歪んで見えてしまう現象に襲われ、夢拍症候群と診断されてしまう。
SNSで絵師としての活動停止を報告した凪に、よく依頼をくれる常連さんから一通のメールが届く。
それは、夢拍症候群を患った者たちを支援する特殊学校の存在を報せるものだった。
どうせ死ぬのならと転入を決めた凪は、そこで、かつて大切な約束を交わした歌手志望の少女・風吹乙花と再会することになる――
懸命に今を戦うすべての人たちへ捧ぐスターライトステージが、今始まる。
※タイトルは『あの瞬く星のような君の心音(うた)が、燃え尽きてしまったとしても』と読みます※
(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる
青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。
ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。
Hotランキング21位(10/28 60,362pt 12:18時点)
(完)大好きなお姉様、なぜ?ー夫も子供も奪われた私
青空一夏
恋愛
妹が大嫌いな姉が仕組んだ身勝手な計画にまんまと引っかかった妹の不幸な結婚生活からの恋物語。ハッピーエンド保証。
中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。魔法のある世界。
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる