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中編
足らない血液
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『…もしもし。あ、咲薇ちゃん?おはよ。どうしたの?こんな時間に…』
愛羽は電話で起き、まだよく目も覚めない内に咲薇から一方的に話をされた。
『…え?綺夜羅ちゃんが?うん。血液型?あたしO型だよ。え?……分かった、すぐ行く!』
暴走愛努流の中では愛羽だけがO型だ。そして幸運にも綺夜羅と同じRH-だったのだ。とにかく状況を理解した愛羽はすぐに支度をした。
『ふぁ~。なんだよ愛羽~。どうかしたのか?』
何も知らない玲璃はとても眠そうな顔であくびをしている。他のメンバーも愛羽の声で目を覚ましていた。
『あたし、今すぐ病院行かなきゃ!綺夜羅ちゃんが大変なんだって!』
ただごとではなさそうな愛羽の慌てように玲璃たちも着替え一緒に行くことにした。
タクシーを呼ぶとすぐに来れるのが1台ということなのでまず愛羽が、そして玲璃と麗桜が一緒に乗っかっていった。
愛羽たちのホテルから病院までは近く、病院に着くと咲薇と掠が見えた。
『愛羽、ごめんな。愛羽しかいなかったんや』
『あ、あ、愛羽さん。ごめんなさい。綺夜羅にどうか血を、血を分けてあげてください!』
咲薇の横で掠はオロオロしながら泣きそうな顔で頭を下げる。
『いいから案内して!!』
愛羽は言葉を挟まず、それだけ強く言うと先を急いだ。よりによって一緒に乗ってきたのが玲璃と麗桜で、掠は申し訳なさすぎて2人の顔を見れなかった。
愛羽は血を採る為中に通されていき、綺夜羅の処置が行われている部屋の前で燃と旋と珠凛が肩を落として座っていた。玲璃と麗桜の存在に気づくと3人とも立ち上がり気まずそうに頭を下げた。
『いや、いいよ。あたしらついてきただけだ。それより何があったんだ?詳しい話聞かせてくれよ』
その後、蘭菜と風雅と蓮華が少し遅れてやってきてから、咲薇と掠が今夜起こったことの全てを改めてみんなに話した。玲璃たちもそれを聞いてやっとこの異常な事態を理解した。
『おいおい…マジかよ。刀持って襲いかかったって、そいつ完全に殺す気満々じゃねーかよ』
さすがの玲璃も笑えず、暴走愛努流の面々も誰もが言葉を失っていた。
『…私は、警察に言った方がいいと思うけど。これ以上犠牲者が出る前に…』
それが1番現実的な行動だが、こういう時にちゃんとそれを言い出せるのはやはり蘭菜だった。
『でも、どういうこと?なんでわざわざそんな場所に来て咲薇ちゃんを襲おうとしたの?』
蓮華がもっともな疑問を言葉にしたが、咲薇も掠も分かるはずなどなく、それからまた無言の時間がしばらく続いてから看護婦が何やら足早にやってきた。
『すみません!申し訳ないんですがどなたか助けてください!』
『…え?』
何事かと一同が連れてこられたのは採血中の愛羽の所だった。
部屋が近づいてくる程騒がしい声が聞こえる。玲璃たちは笑えなかった。
『だから!足りないんでしょ!?早く抜いてよ!!あたしは平気だから!!』
その場に着くと愛羽が医者と言い争っている。綺夜羅の失った血はあまりにも多く、今まだ生存しているのが不思議な位で、とても小柄な愛羽1人からの採血量では足らないのだが、愛羽は足りるまで抜けと言うのである。
『無理です。あなたもう十分に血を抜いてるんです。死にますよ!?もうこれ以上は抜けません!』
と、いうことだった。
今にもつかみかかっていきそうな愛羽だったがさすがに医者はうなずけなかった。
『いいから抜いてよ!まだ平気だから!綺夜羅ちゃんに何かあったら、あたし死んでも死にきれないから』
引き下がろうとしない愛羽の肩を蘭菜が後ろからそっと叩いた。
『愛羽…気持ちはみんな分かるわ。でも、人間に血液はなくてはならない物よ。足らない分全てをあなたからはどう考えても抜けないわ。あなたの提供した気持ちをムダにしない為にも、他の方法を探しましょう?』
だが愛羽は悔しそうな顔をした。今ここにO型のRH-が自分しかいない以上、どうしても引き下がりたくなかった。納得はできなかったが医者が言う以上仕方なく、蘭菜に肩を抱かれたまま出ていこうとすると急に愛羽がフラつき座りこんでしまった。
『愛羽!大丈夫かよ!』
『うん。あれ?おかしいな…』
玲璃が駆け寄り手を貸すがやはり具合が悪そうだ。
『ほら見なさい。それでなくともダメ押しの血も抜くように言われて抜いてるんです。部屋を用意しますからお願いですから安静にしてください』
血を抜いて少し貧血気味なのか結局愛羽もベッドに横になると、一同は改めてどうするかを話し合った。
『それで…血はまだ全然足りてないの?』
『まだ、あと2、3人は協力してほしいみたい。できればすぐにでも…』
『明るくなったら駅とかで声かけたりできるけど、それでもすぐに見つかるかどうかは…』
いや、そもそも綺夜羅の体がどこまでもつのかが、定かではない。
『O型のRH-だよね…誰かいたっけ?』
愛羽は電話で起き、まだよく目も覚めない内に咲薇から一方的に話をされた。
『…え?綺夜羅ちゃんが?うん。血液型?あたしO型だよ。え?……分かった、すぐ行く!』
暴走愛努流の中では愛羽だけがO型だ。そして幸運にも綺夜羅と同じRH-だったのだ。とにかく状況を理解した愛羽はすぐに支度をした。
『ふぁ~。なんだよ愛羽~。どうかしたのか?』
何も知らない玲璃はとても眠そうな顔であくびをしている。他のメンバーも愛羽の声で目を覚ましていた。
『あたし、今すぐ病院行かなきゃ!綺夜羅ちゃんが大変なんだって!』
ただごとではなさそうな愛羽の慌てように玲璃たちも着替え一緒に行くことにした。
タクシーを呼ぶとすぐに来れるのが1台ということなのでまず愛羽が、そして玲璃と麗桜が一緒に乗っかっていった。
愛羽たちのホテルから病院までは近く、病院に着くと咲薇と掠が見えた。
『愛羽、ごめんな。愛羽しかいなかったんや』
『あ、あ、愛羽さん。ごめんなさい。綺夜羅にどうか血を、血を分けてあげてください!』
咲薇の横で掠はオロオロしながら泣きそうな顔で頭を下げる。
『いいから案内して!!』
愛羽は言葉を挟まず、それだけ強く言うと先を急いだ。よりによって一緒に乗ってきたのが玲璃と麗桜で、掠は申し訳なさすぎて2人の顔を見れなかった。
愛羽は血を採る為中に通されていき、綺夜羅の処置が行われている部屋の前で燃と旋と珠凛が肩を落として座っていた。玲璃と麗桜の存在に気づくと3人とも立ち上がり気まずそうに頭を下げた。
『いや、いいよ。あたしらついてきただけだ。それより何があったんだ?詳しい話聞かせてくれよ』
その後、蘭菜と風雅と蓮華が少し遅れてやってきてから、咲薇と掠が今夜起こったことの全てを改めてみんなに話した。玲璃たちもそれを聞いてやっとこの異常な事態を理解した。
『おいおい…マジかよ。刀持って襲いかかったって、そいつ完全に殺す気満々じゃねーかよ』
さすがの玲璃も笑えず、暴走愛努流の面々も誰もが言葉を失っていた。
『…私は、警察に言った方がいいと思うけど。これ以上犠牲者が出る前に…』
それが1番現実的な行動だが、こういう時にちゃんとそれを言い出せるのはやはり蘭菜だった。
『でも、どういうこと?なんでわざわざそんな場所に来て咲薇ちゃんを襲おうとしたの?』
蓮華がもっともな疑問を言葉にしたが、咲薇も掠も分かるはずなどなく、それからまた無言の時間がしばらく続いてから看護婦が何やら足早にやってきた。
『すみません!申し訳ないんですがどなたか助けてください!』
『…え?』
何事かと一同が連れてこられたのは採血中の愛羽の所だった。
部屋が近づいてくる程騒がしい声が聞こえる。玲璃たちは笑えなかった。
『だから!足りないんでしょ!?早く抜いてよ!!あたしは平気だから!!』
その場に着くと愛羽が医者と言い争っている。綺夜羅の失った血はあまりにも多く、今まだ生存しているのが不思議な位で、とても小柄な愛羽1人からの採血量では足らないのだが、愛羽は足りるまで抜けと言うのである。
『無理です。あなたもう十分に血を抜いてるんです。死にますよ!?もうこれ以上は抜けません!』
と、いうことだった。
今にもつかみかかっていきそうな愛羽だったがさすがに医者はうなずけなかった。
『いいから抜いてよ!まだ平気だから!綺夜羅ちゃんに何かあったら、あたし死んでも死にきれないから』
引き下がろうとしない愛羽の肩を蘭菜が後ろからそっと叩いた。
『愛羽…気持ちはみんな分かるわ。でも、人間に血液はなくてはならない物よ。足らない分全てをあなたからはどう考えても抜けないわ。あなたの提供した気持ちをムダにしない為にも、他の方法を探しましょう?』
だが愛羽は悔しそうな顔をした。今ここにO型のRH-が自分しかいない以上、どうしても引き下がりたくなかった。納得はできなかったが医者が言う以上仕方なく、蘭菜に肩を抱かれたまま出ていこうとすると急に愛羽がフラつき座りこんでしまった。
『愛羽!大丈夫かよ!』
『うん。あれ?おかしいな…』
玲璃が駆け寄り手を貸すがやはり具合が悪そうだ。
『ほら見なさい。それでなくともダメ押しの血も抜くように言われて抜いてるんです。部屋を用意しますからお願いですから安静にしてください』
血を抜いて少し貧血気味なのか結局愛羽もベッドに横になると、一同は改めてどうするかを話し合った。
『それで…血はまだ全然足りてないの?』
『まだ、あと2、3人は協力してほしいみたい。できればすぐにでも…』
『明るくなったら駅とかで声かけたりできるけど、それでもすぐに見つかるかどうかは…』
いや、そもそも綺夜羅の体がどこまでもつのかが、定かではない。
『O型のRH-だよね…誰かいたっけ?』
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