40 / 142
中編
つかみかけた糸
しおりを挟む
『小林さーん。すいませーん』
松本は施設の元責任者だった男の家を訪れていた。
チャイムをしつこく鳴らし、その男の名前を呼ぶと中から声がした。
『どちらさんですか?』
『あ、西成署の者で松本言います。小林信二さんにお話をうかがいたいんですけど』
『西成署?…え?警察?』
突然の訪問に焦った様子でドアを開けた。見た目50代の真面目そうな男だ。少なくとも悪そうな男の身なりには見えない。
『なんです?』
不審そうに松本を見ている。
『小林さん。あなた何年か前まで児童福祉施設で責任者しとりましたよね?その時の話を少し聞かせてほしいんですけど』
小林は明らかにうろたえた顔をした。松本はそれを見逃さなかった。
『疎井冬さん、ご存知ですよね?』
松本が追い討ちをかけると核心を突かれた顔をした?
(こいつは思った通りや。この男は何かを知っとる。)
『知ってたらなんなんです?』
『あ、いえ、疎井さんがどういう子やったとか、当時のことを聞かせてほしかったんですけどね』
『そういうことなら力になれません。何せもう何年も前のことですので、あまり覚えてませんから』
『赤ちゃんの頃からずっと一緒やったのにですか?』
『見ていた子供もあの子だけではないですから』
(この男…)
小林はとことんシラを切るつもりらしい。松本は切り崩しにかかった。
『疎井冬さんがよく痣を作っていたことは知っていますね?』
『もう帰って下さい』
ドアを勝手に閉めようとしたが松本は足を挟んでそれを止めた。
『あなたが疎井冬に周りの子と喋らせないようにさせてたのは分かってるんですよ。…ついでに、あなたが疎井にしていたこともね』
そこまで言われて小林はとうとう追いつめられた犯罪者の顔になった。
『実は疎井冬がある事件に関わっている可能性があることから彼女の素性について調べとるんです。あなたの知っていることを全て喋ってくれるならあなたのことは黙っておくこともできますがどうしますか?』
小林は肩を落としうなだれてしまった。
もちろん松本に黙っておくつもりなど微塵もない。
松本は施設の元責任者だった男の家を訪れていた。
チャイムをしつこく鳴らし、その男の名前を呼ぶと中から声がした。
『どちらさんですか?』
『あ、西成署の者で松本言います。小林信二さんにお話をうかがいたいんですけど』
『西成署?…え?警察?』
突然の訪問に焦った様子でドアを開けた。見た目50代の真面目そうな男だ。少なくとも悪そうな男の身なりには見えない。
『なんです?』
不審そうに松本を見ている。
『小林さん。あなた何年か前まで児童福祉施設で責任者しとりましたよね?その時の話を少し聞かせてほしいんですけど』
小林は明らかにうろたえた顔をした。松本はそれを見逃さなかった。
『疎井冬さん、ご存知ですよね?』
松本が追い討ちをかけると核心を突かれた顔をした?
(こいつは思った通りや。この男は何かを知っとる。)
『知ってたらなんなんです?』
『あ、いえ、疎井さんがどういう子やったとか、当時のことを聞かせてほしかったんですけどね』
『そういうことなら力になれません。何せもう何年も前のことですので、あまり覚えてませんから』
『赤ちゃんの頃からずっと一緒やったのにですか?』
『見ていた子供もあの子だけではないですから』
(この男…)
小林はとことんシラを切るつもりらしい。松本は切り崩しにかかった。
『疎井冬さんがよく痣を作っていたことは知っていますね?』
『もう帰って下さい』
ドアを勝手に閉めようとしたが松本は足を挟んでそれを止めた。
『あなたが疎井冬に周りの子と喋らせないようにさせてたのは分かってるんですよ。…ついでに、あなたが疎井にしていたこともね』
そこまで言われて小林はとうとう追いつめられた犯罪者の顔になった。
『実は疎井冬がある事件に関わっている可能性があることから彼女の素性について調べとるんです。あなたの知っていることを全て喋ってくれるならあなたのことは黙っておくこともできますがどうしますか?』
小林は肩を落としうなだれてしまった。
もちろん松本に黙っておくつもりなど微塵もない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
想い出と君の狭間で
九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
青春
約一年前、当時付き合っていた恋人・久瀬玲華から唐突に別れを告げられた相沢翔。玲華から逃げるように東京から引っ越した彼は、田舎町で怠惰な高校生活を送っていた。
夏のある朝、失踪中の有名モデル・雨宮凛(RIN)と偶然出会った事で、彼の日常は一変する。
凛と仲良くなるにつれて蘇ってくる玲華との想い出、彼女の口から度々出てくる『レイカ』という名前、そして唐突にメディアに現れた芸能人REIKA──捨てたはずの想い出が今と交錯し始めて、再び過去と対峙する。
凛と玲華の狭間で揺れ動く翔の想いは⋯⋯?
高校2年の夏休みの最後、白いワンピースを着た天使と出会ってから「俺」の過去と今が動きだす⋯⋯。元カノと今カノの狭間で苦しむ切な系ラブコメディ。
バス・ドライバー日記
深町珠
青春
愛紗は、18歳で故郷を離れ、バスガイドとして働いていたが
年々不足する路線バスドライバーとして乗務する事を志願。
鉄道運転士への憧れが、どこかにあったのかもしれない。
しかし、過酷な任務。女子であるが故の危険性。会社は
長閑な田舎への転属が適当ではないかと判断する。
複雑な感情を抱き、彼女は一週間の休暇を申し出、帰郷する。
友人達と共に旅しながら、少しづつ、気持ちを開放していく愛紗。
様々な出会いがあり、別れを経験して・・・。
現役路線バスドライバーであった方の手記から、現実を背景に描く
セミドキュメンタリードラマ。
日生愛紗(21):バスガイド=>ドライバーへ転身中
藤野友里恵(20):同僚ガイド
青島由香(20):同僚ガイド。友里恵の親友。
石川菜由(21):愛紗の親友。寿退社=>主婦
日光真由美(19):人吉車掌区乗務員。車掌補。
荻恵:21歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。
坂倉真由美:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。
三芳らら:15歳。立野在住。熊本高校の学生、猫が好き。
鈴木朋恵:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。
板倉裕子:20歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。
日高パトリシアかずみ:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区、客室乗務員。
坂倉奈緒美:16歳。熊本在住。熊本高校の学生、三芳ららの友達・坂倉真由美の妹。
橋本理沙:25歳。大分在住。国鉄大分機関区、機関士。
三井洋子:21歳。大分在住。国鉄大分車掌区。車掌。
松井文子:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区。客室乗務員。
美少女にフラれたらなぜかダウジング伊達メガネ女子が彼女になりました!?〜冴えない俺と彼女と俺をフった美少女の謎の三角な関係〜
かねさわ巧
青春
まてまてまて! 身体が入れ替わっているってどういうことだよ!? 告白した美少女は俺の好きになった子じゃなかったってこと? それじゃあ俺の好きになった子ってどっち?? 謎のダウジングから始まった恋愛コメディ。
恋は虹色orドブ色?
黒辺あゆみ
青春
西田由紀はどこにでもいる、普通の地味な女子高生だ。ただし、人が色を纏って見えるという体質以外は。
この体質を利用して相性診断をしていたら、いつの間にか「お告げの西田」という異名持ちになっていた。
そんな由紀が猫と戯れる不良男子の近藤を目撃した日から、平穏だった生活がおかしな方向へ転換し始める。
「おめぇ、バイトしねぇ?」
「それは、夜のいかがわしいお店だったり、露出の激しい衣装で誰かを勧誘したりするバイトで?」
近藤にバイトに誘われて以来、毎日が慌ただしい。それでもマイペースに生きる由紀に、近藤が振り回されることとなる。
由紀の目の前に広がる世界は果たして虹色か、あるいは最低なドブ色?
神代永遠とその周辺
7番目のイギー
青春
普通のJKとは色々とちょっとだけ違う、神代永遠(かみしろとわ)、17歳。それは趣味だったり洋服のセンスだったり、好みの男子だったり。だけどそれを気にすることもなく、なんとなく日常を面白おかしく過ごしている。友達や趣味の品、そして家族。大事なものを当たり前に大事にする彼女は、今日もマイペースにやりたいことを気負うことなく続けます。
不良な彼らと小さなお姫様
綾崎オトイ
青春
別サイトにて過去に書いていた携帯小説より
よくある不良グループとそのお姫様
だけど少しだけ変わっている彼らの関係
不良少年たちと小さな少女の書きたいとこだけ
作者の趣味を詰め込んでいるだけの話です
暖かい目で読んでくださると嬉しいです
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる