42 / 59
後編
暴走
しおりを挟む
(ちっ、このバカ本当にやる気か?)
『おい!動けねぇ奴は下がってな!どうやらあの狼少女キレちまってるよ』
向かってくる雪ノ瀬を見て神楽は言ったが、誰1人として下がろうとはしなかった。
(やれやれ。あっちがあっちなら、こっちもこっちか)
仕方なく神楽が1歩前に出た。
『来てみろ、狼少女』
雪ノ瀬は神楽めがけて助走をつけた。そしてその1発目。さっきとは比べ物にならない程速く、重い拳を放った。
『ちっ!』
神楽はギリギリそれをかわしたが、その異常な威力は目の前をかすっただけで分かった。
(…こいつは…ヤバイね)
1発目をかわすも、すぐに2発目3発目がくる。連続で打ちこまれる鉄球のような拳に神楽もたちうちできず、ここにきて今日初めて殴り倒された。
『うぅっ!…く、この野郎…』
『ははは!殺してあげるよ!』
更に雪ノ瀬は追い討ちをかけていく。周りの人間を見かねて前に出た神楽だったが、再びドーピングされた雪ノ瀬の前になす術なく追いこまれていく。
手負いの人間たちもそこへ割って入ることができず、圧倒的な暴力を見ているしかない。
しかしこの女は違う。
『雪ノ瀬ぇ!!』
呼ばれた方を見ると勢いよく拳が飛んできた。
「バチンッ!!」
周りが聞こえる位大きな音を立てて豹那の全力の拳がその顔面に炸裂したが、やはりさほどダメージになっていないようだ。これ以上ない程の力を込めた豹那の不意打ちによる一撃だったが雪ノ瀬はニヤニヤしているだけだ。
『ちっ、バケモノめ』
『まだ生きてるの?早く死んじゃいなよ』
雪ノ瀬は豹那に狙いを変えた。
『全くバカだねぇ。ケガ人は寝てればいいのにさぁ』
『うるさいんだよババァ!』
神楽は豹那に加勢しようとしたが思ったよりダメージが大きく、すぐに動けない。
雪ノ瀬は飛び上がると斜めに傾きながら回転し強烈な蹴りを放った。 豹那はガードしようとしたものの、勢いよくふっ飛ばされた。
『く…くそったれやろうめ…』
豹那はもう限界だ。だが雪ノ瀬は尚も豹那に向かう。するとそこに伴が立ちはだかっていった。
『みんなそんなに早く死にたいの?』
『いいえ。でも死にたくなくても守らなければならない時があるのよ』
伴はもう立ちはだかることしかできない。一瞬で数発の拳をくらい何もできないままなぎ倒されてしまった。
『うぅ…』
『バカやろう!余計なことしてんじゃないよ!』
伴を更に蹴り飛ばそうとする雪ノ瀬に、豹那は見ていられず殴りかかっていく。しかしいとも簡単にパンチを手で受け止められ、反対に右からもろに殴り倒される。
『うぅっ…あぁっ…』
豹那は殴られた顔を押さえうずくまっている。信じられなかった。鉄の大ハンマーで殴られたようだった。
『あはは!神奈川のチームの総長たちが情けないなぁ。どうしたの?怖くてかかってこれないの?』
『そいつは聞き捨てならねぇな』
次は樹が挑んでいった。樹は構え、絶好のリズムで攻めこみクリーンヒットと言うべき左右のパンチとローキックを叩きこんだ。
(見ろ!油断してやがるからだ!)
『どうだ!』
樹は一瞬勝ち誇ったがすぐに覚めてしまった。全く効いていない。ひるんだその一瞬に相手のクリーンヒットもくらってしまい、腹に岩のようなパンチをぶちこまれたと思ったらハイキックで蹴り倒された。
『樹さん!』
麗桜は我慢できずかなわないと知りながら樹の前に立ち構えた。
『バカ…麗桜、やめとけ…』
樹は顔を押さえながら言うが麗桜はどかなかった。そしてその前に更に風雅が立った。
『もうお前に仲間はやらせない!』
雪ノ瀬は風雅の胸ぐらをつかむと頭突きし、腹にひざ蹴りを入れ殴り倒した。
『風雅!』
やぶれかぶれで立ち向かっていく麗桜も七条戦で受けたダメージが大きく、何もできないまま引きずり回されている。
そこに今度は玲璃が走っていく。
『おいテメェ!その手を放しやがれ!』
玲璃は走りこみ拳を振りかぶった。だが雪ノ瀬はそんな攻撃など虫でも払うように手ではねのけ、玲璃の髪をつかむと所構わず殴りつけていった。痛む体を更にいためつけられ玲璃は抵抗することすらできない。
(こいつ…本当に人間か?こんなことがあっていい訳ねぇ…ちくしょう…あたしには何もできねぇのかよ…)
『そう…そうだったんだ…』
愛羽は七条琉花と龍千歌から、都河泪のことや4人が東京連合に襲われたことや東京連合になった経緯、そして走り屋になろうとしていたことなど全てのことを聞かされていた。
『ごめんね…敵のあんたにこんな話して…』
七条は悲しい目をしたまま表情をゆるめた。それを見て愛羽は自分に問いかけていた。
『…瞬はなんとかしてあたしたちが押さえるから、その間にみんな連れて逃げな。もう神奈川に手を出さないことはあたしが責任持って瞬に』
『七条さん』
頭の中の整理がついた訳じゃない。
『あの人が使ってる薬はまだあるの?』
この人たちを許した訳でもない。
『…え?あるには、あるけど…』
でも自分がこの人たちと同じ選択をしなかったとは言いきれない。
『打って』
自分が今しなきゃいけないことは何か。
『…え?…打ってって…え?』
自分にできることは何か。
『あの人と同じ薬、あたしに打って』
愛羽は自分にもう1度問いかけた。
『そんな…打ってどうするの?』
『あたし、あの人に言いたいことがあるの』
『無茶だよ!これがどんな薬か知らないでしょ!?まだ体にどんな影響があるかも分かってないんだよ!?あたしたちがどれだけ瞬を止めたか!』
『でもあの人は使ったんでしょ?』
『…やめときな。薬に慣れるまでだって時間がかかるんだよ。今この場で打ったとしても、あんたが瞬に勝てるとは思えない』
『あの人を止めたくないの!?』
琉花はその言葉に胸ぐらをつかまれた気分だった。
『あたしはあなたたちを許さない!でもその子の、泪ちゃんの気持ちは分かるの!』
琉花も千歌も、その姿に今も眠り続ける少女の姿を重ねてしまっていた。
『だから力を貸して!早くして!』
『おい!動けねぇ奴は下がってな!どうやらあの狼少女キレちまってるよ』
向かってくる雪ノ瀬を見て神楽は言ったが、誰1人として下がろうとはしなかった。
(やれやれ。あっちがあっちなら、こっちもこっちか)
仕方なく神楽が1歩前に出た。
『来てみろ、狼少女』
雪ノ瀬は神楽めがけて助走をつけた。そしてその1発目。さっきとは比べ物にならない程速く、重い拳を放った。
『ちっ!』
神楽はギリギリそれをかわしたが、その異常な威力は目の前をかすっただけで分かった。
(…こいつは…ヤバイね)
1発目をかわすも、すぐに2発目3発目がくる。連続で打ちこまれる鉄球のような拳に神楽もたちうちできず、ここにきて今日初めて殴り倒された。
『うぅっ!…く、この野郎…』
『ははは!殺してあげるよ!』
更に雪ノ瀬は追い討ちをかけていく。周りの人間を見かねて前に出た神楽だったが、再びドーピングされた雪ノ瀬の前になす術なく追いこまれていく。
手負いの人間たちもそこへ割って入ることができず、圧倒的な暴力を見ているしかない。
しかしこの女は違う。
『雪ノ瀬ぇ!!』
呼ばれた方を見ると勢いよく拳が飛んできた。
「バチンッ!!」
周りが聞こえる位大きな音を立てて豹那の全力の拳がその顔面に炸裂したが、やはりさほどダメージになっていないようだ。これ以上ない程の力を込めた豹那の不意打ちによる一撃だったが雪ノ瀬はニヤニヤしているだけだ。
『ちっ、バケモノめ』
『まだ生きてるの?早く死んじゃいなよ』
雪ノ瀬は豹那に狙いを変えた。
『全くバカだねぇ。ケガ人は寝てればいいのにさぁ』
『うるさいんだよババァ!』
神楽は豹那に加勢しようとしたが思ったよりダメージが大きく、すぐに動けない。
雪ノ瀬は飛び上がると斜めに傾きながら回転し強烈な蹴りを放った。 豹那はガードしようとしたものの、勢いよくふっ飛ばされた。
『く…くそったれやろうめ…』
豹那はもう限界だ。だが雪ノ瀬は尚も豹那に向かう。するとそこに伴が立ちはだかっていった。
『みんなそんなに早く死にたいの?』
『いいえ。でも死にたくなくても守らなければならない時があるのよ』
伴はもう立ちはだかることしかできない。一瞬で数発の拳をくらい何もできないままなぎ倒されてしまった。
『うぅ…』
『バカやろう!余計なことしてんじゃないよ!』
伴を更に蹴り飛ばそうとする雪ノ瀬に、豹那は見ていられず殴りかかっていく。しかしいとも簡単にパンチを手で受け止められ、反対に右からもろに殴り倒される。
『うぅっ…あぁっ…』
豹那は殴られた顔を押さえうずくまっている。信じられなかった。鉄の大ハンマーで殴られたようだった。
『あはは!神奈川のチームの総長たちが情けないなぁ。どうしたの?怖くてかかってこれないの?』
『そいつは聞き捨てならねぇな』
次は樹が挑んでいった。樹は構え、絶好のリズムで攻めこみクリーンヒットと言うべき左右のパンチとローキックを叩きこんだ。
(見ろ!油断してやがるからだ!)
『どうだ!』
樹は一瞬勝ち誇ったがすぐに覚めてしまった。全く効いていない。ひるんだその一瞬に相手のクリーンヒットもくらってしまい、腹に岩のようなパンチをぶちこまれたと思ったらハイキックで蹴り倒された。
『樹さん!』
麗桜は我慢できずかなわないと知りながら樹の前に立ち構えた。
『バカ…麗桜、やめとけ…』
樹は顔を押さえながら言うが麗桜はどかなかった。そしてその前に更に風雅が立った。
『もうお前に仲間はやらせない!』
雪ノ瀬は風雅の胸ぐらをつかむと頭突きし、腹にひざ蹴りを入れ殴り倒した。
『風雅!』
やぶれかぶれで立ち向かっていく麗桜も七条戦で受けたダメージが大きく、何もできないまま引きずり回されている。
そこに今度は玲璃が走っていく。
『おいテメェ!その手を放しやがれ!』
玲璃は走りこみ拳を振りかぶった。だが雪ノ瀬はそんな攻撃など虫でも払うように手ではねのけ、玲璃の髪をつかむと所構わず殴りつけていった。痛む体を更にいためつけられ玲璃は抵抗することすらできない。
(こいつ…本当に人間か?こんなことがあっていい訳ねぇ…ちくしょう…あたしには何もできねぇのかよ…)
『そう…そうだったんだ…』
愛羽は七条琉花と龍千歌から、都河泪のことや4人が東京連合に襲われたことや東京連合になった経緯、そして走り屋になろうとしていたことなど全てのことを聞かされていた。
『ごめんね…敵のあんたにこんな話して…』
七条は悲しい目をしたまま表情をゆるめた。それを見て愛羽は自分に問いかけていた。
『…瞬はなんとかしてあたしたちが押さえるから、その間にみんな連れて逃げな。もう神奈川に手を出さないことはあたしが責任持って瞬に』
『七条さん』
頭の中の整理がついた訳じゃない。
『あの人が使ってる薬はまだあるの?』
この人たちを許した訳でもない。
『…え?あるには、あるけど…』
でも自分がこの人たちと同じ選択をしなかったとは言いきれない。
『打って』
自分が今しなきゃいけないことは何か。
『…え?…打ってって…え?』
自分にできることは何か。
『あの人と同じ薬、あたしに打って』
愛羽は自分にもう1度問いかけた。
『そんな…打ってどうするの?』
『あたし、あの人に言いたいことがあるの』
『無茶だよ!これがどんな薬か知らないでしょ!?まだ体にどんな影響があるかも分かってないんだよ!?あたしたちがどれだけ瞬を止めたか!』
『でもあの人は使ったんでしょ?』
『…やめときな。薬に慣れるまでだって時間がかかるんだよ。今この場で打ったとしても、あんたが瞬に勝てるとは思えない』
『あの人を止めたくないの!?』
琉花はその言葉に胸ぐらをつかまれた気分だった。
『あたしはあなたたちを許さない!でもその子の、泪ちゃんの気持ちは分かるの!』
琉花も千歌も、その姿に今も眠り続ける少女の姿を重ねてしまっていた。
『だから力を貸して!早くして!』
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
しろとあおのクオリア
美也
青春
私の秘密、彼の秘密。ふたりの秘密は運命を惑わす――。
一人だけの高校美術部だった真白(ましろ)は、ある日突然部室で寝ていた同級生の葵(あおい)に絡まれるように。真白には家族の事故をきっかけに特別な感覚が覚醒したがずっと秘密にしていて、葵も家族の悩みを抱えていたが隠して高校生活を送っていた。家庭環境に受験や進路の不安を二人は打ち解けながら乗り越えようとするが、二人の秘めた隠し事が波瀾の展開を巻き起こす。ピュアで切ない青春ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる