36 / 59
後編
特攻向日葵
しおりを挟む
玲璃は悔しかったが明らかな力の差と絶望的な状況の中、ただ雪ノ瀬にいたぶられるしかなかった。倒れた玲璃の背中を雪ノ瀬は踏みつけた。
『ほら、どうしたの?さっきみたいに生意気なこと言ってごらんよ。え?え?ほら言ってみなよ!』
雪ノ瀬は踏みつける足に力を込めた。地面に這いつくばり自分の非力さが悔しくなり玲璃は涙を浮かべた。後方では伴たち夜叉猫と東京連合が戦う喧騒が聞こえている。
声と声が争う中、遠くから微かな音が玲璃の耳に届いた。単車がすごいスピードで走ってくるような音だ。続いてクラクションが鳴った。
単車の音はどんどん近くなり、すぐそこでまたクラクションが鳴った。
『危ない!よけろー!』
東京連合の人間を裂いて単車が猛スピードで来ると、ものすごい音を立てて急ブレーキした。
『遅くなってごめんね』
単車を降りると雪ノ瀬と玲璃の方へ向かって歩いてくる。
『その足、どけてよ』
そう言うと助走をつけて雪ノ瀬に向かって飛び蹴りした。雪ノ瀬はそれをかわし玲璃から離れた。
玲璃が這いつくばったまま顔を上げると暴走愛努流の特攻服の背中が見えた。
背中のチーム名の下、ロングの特攻服の下部分には縦に大きな文字で「特攻向日葵」の5文字が見えた。
『玲ちゃん。あたしたち、いつも一緒でしょ?』
そこに立っていたのは愛羽だった。
『邪魔だなぁ。今日はね、君はまだ呼んでないんだよ』
『あたしの大切な人たちを、これ以上傷つけさせない』
『言ったよね。後悔させてやるって』
『あたしはもう後悔なんてしない』
2人はにらみ合うと愛羽が走って向かっていった。振りかぶった拳はかわされ、2発3発と大振りでパンチを打っていくが、雪ノ瀬は踊るようにかわしていく。だが愛羽は止まらない。
飛びついて無理矢理服につかみかかり、雪ノ瀬と共に倒れ転がりもつれ合った。自分も逃げられないが相手も逃がさない。
『ずいぶん頭が悪いんだね』
『なんとでも言いなさいよ!』
つかみ合ったまま立ち上がると愛羽は渾身の力を込めて殴りつけていった。だが雪ノ瀬もそれをよけずに反撃していく。
愛羽は雪ノ瀬の胸ぐらをつかみ1発ずつ殴るが、雪ノ瀬はつかまれながら両手でやり返す。前に伴がやり合った時と同じ状態だ。
しかしこの雪ノ瀬相手にそれは自殺行為でしかない。重く破壊力のある攻撃をあんなノーガードで受け続けたらすぐにやられてしまうだろう。
『いい度胸だね。あくまであたしと殴り合いたいの?』
『言ったでしょ。あたしはあんたを許さない。絶対に』
そうは言ったものの愛羽はだんだん一方的にやられ始め、それでも正面からやり合おうとする。
無茶だ。いくらなんでも。感情だけで倒せる相手ではないことはよく分かっている。このままでは玲璃の二の舞になるだけだ。
『ちくしょう!愛羽ぁ!』
玲璃は立ち上がり助太刀に行った。
『ふふ。ほら、見てられないって、くたばりぞこないが助けに来たよ?』
だがもはや手負いの玲璃など子供扱い。2人でかかっていっても結果は変わらなかった。
愛羽が引きずり回され、玲璃が踏みつけられ雪ノ瀬が凶悪な笑いを浮かべると、橋の向こうから何かがやってきた。
『ほら、どうしたの?さっきみたいに生意気なこと言ってごらんよ。え?え?ほら言ってみなよ!』
雪ノ瀬は踏みつける足に力を込めた。地面に這いつくばり自分の非力さが悔しくなり玲璃は涙を浮かべた。後方では伴たち夜叉猫と東京連合が戦う喧騒が聞こえている。
声と声が争う中、遠くから微かな音が玲璃の耳に届いた。単車がすごいスピードで走ってくるような音だ。続いてクラクションが鳴った。
単車の音はどんどん近くなり、すぐそこでまたクラクションが鳴った。
『危ない!よけろー!』
東京連合の人間を裂いて単車が猛スピードで来ると、ものすごい音を立てて急ブレーキした。
『遅くなってごめんね』
単車を降りると雪ノ瀬と玲璃の方へ向かって歩いてくる。
『その足、どけてよ』
そう言うと助走をつけて雪ノ瀬に向かって飛び蹴りした。雪ノ瀬はそれをかわし玲璃から離れた。
玲璃が這いつくばったまま顔を上げると暴走愛努流の特攻服の背中が見えた。
背中のチーム名の下、ロングの特攻服の下部分には縦に大きな文字で「特攻向日葵」の5文字が見えた。
『玲ちゃん。あたしたち、いつも一緒でしょ?』
そこに立っていたのは愛羽だった。
『邪魔だなぁ。今日はね、君はまだ呼んでないんだよ』
『あたしの大切な人たちを、これ以上傷つけさせない』
『言ったよね。後悔させてやるって』
『あたしはもう後悔なんてしない』
2人はにらみ合うと愛羽が走って向かっていった。振りかぶった拳はかわされ、2発3発と大振りでパンチを打っていくが、雪ノ瀬は踊るようにかわしていく。だが愛羽は止まらない。
飛びついて無理矢理服につかみかかり、雪ノ瀬と共に倒れ転がりもつれ合った。自分も逃げられないが相手も逃がさない。
『ずいぶん頭が悪いんだね』
『なんとでも言いなさいよ!』
つかみ合ったまま立ち上がると愛羽は渾身の力を込めて殴りつけていった。だが雪ノ瀬もそれをよけずに反撃していく。
愛羽は雪ノ瀬の胸ぐらをつかみ1発ずつ殴るが、雪ノ瀬はつかまれながら両手でやり返す。前に伴がやり合った時と同じ状態だ。
しかしこの雪ノ瀬相手にそれは自殺行為でしかない。重く破壊力のある攻撃をあんなノーガードで受け続けたらすぐにやられてしまうだろう。
『いい度胸だね。あくまであたしと殴り合いたいの?』
『言ったでしょ。あたしはあんたを許さない。絶対に』
そうは言ったものの愛羽はだんだん一方的にやられ始め、それでも正面からやり合おうとする。
無茶だ。いくらなんでも。感情だけで倒せる相手ではないことはよく分かっている。このままでは玲璃の二の舞になるだけだ。
『ちくしょう!愛羽ぁ!』
玲璃は立ち上がり助太刀に行った。
『ふふ。ほら、見てられないって、くたばりぞこないが助けに来たよ?』
だがもはや手負いの玲璃など子供扱い。2人でかかっていっても結果は変わらなかった。
愛羽が引きずり回され、玲璃が踏みつけられ雪ノ瀬が凶悪な笑いを浮かべると、橋の向こうから何かがやってきた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~
雪ノ瀬瞬
青春
今回のステージは神奈川です
鬼音姫の哉原樹
彼女がストーリーの主人公となり彼女の過去が明らかになります
親友の白桐優子
優子の謎の失踪から突然の再会
何故彼女は姿を消したのか
私の中学の頃の実話を元にしました
暴走♡アイドル2 ~ヨゾラノナミダ~
雪ノ瀬瞬
青春
夏だ!旅行だ!大阪だ!
暁愛羽は神奈川の暴走族「暴走愛努流」の総長。
関東最大級の東京連合と神奈川4大暴走族や仲間たちと激闘を繰り広げた。
夏休みにバイク屋の娘月下綺夜羅と東京連合の総長雪ノ瀬瞬と共に峠に走りに来ていた愛羽は、大阪から1人で関東へ走りに来ていた謎の少女、風矢咲薇と出会う。
愛羽と綺夜羅はそれぞれ仲間たちと大阪に旅行に行くと咲薇をめぐったトラブルに巻きこまれ、関西で連続暴走族襲撃事件を起こす犯人に綺夜羅が斬られてしまう。
その裏には1人の少女の壮絶な人生が関係していた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
海になった友達
小紕 遥
青春
主人公は、友達が実は海になったという信じがたい状況に出くわす。夜の海辺で再び彼と語り合うことになった主人公は友達の言葉に戸惑いながらも、その奇妙な会話に引き込まれていく。友達は本当に海になったのか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ランチの後は、まったりと
魚口ホワホワ
青春
俺の趣味は、ネットで調べて、美味しいランチを食べることだ。
会社のお昼休みで、行けるところは、行き尽くしてしまったので、たまにお昼からの半休を取り、電車に乗って、少し行った所に食べに行くのを楽しみにしている。
そして、その後は、お気に入りのコーヒーチェーンで、SNSを更新したり、本を読んだり、ぼーっとしたりするのが、お決まりのコースだった。
その日も半休を取って、お目当てのランチを食べて、コーヒーチェーンでまったりしている時だった。
外は、急な夕立になり、一時避難の客で、お店の中は、ほぼ満席になってしまった。
その時、その当時の元カノにそっくりな中高生ぐらいの女の子が、入って来て、キョロキョロと店内を見回すと、俺の所に向かって来て、相席を申し込んできた!?
この日、俺に待っていたものは果して…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる