29 / 59
後編
動きだす歯車
しおりを挟む
今日1日愛羽と連絡がつかなかった。
伴は22時30分に小田原厚木道路の小田原東インターで待つと愛羽にメッセージを送っておいたのだが、時間を過ぎても愛羽は現れないどころか、まだ連絡もないままだった。
『おかしいわ。愛羽ちゃんも玲璃ちゃんも麗桜ちゃんも風雅ちゃんも電話に出ないわ。何かあったのかしら…』
玲璃と連絡がつかないというのは聞いていた。玲璃は1人で突っこむと見てまず間違いない。
麗桜が哉原樹と手を組めたのも聞いた。鬼音姫は大黒に参戦するのだろう。敵が多いだけに合流して戦いたいところだが、そうしている間に玲璃はやられ更に愛羽も1人でベイブリッジに向かっているかもしれない。
大黒は大乱闘になることがよそうできるので人数ができるだけ多い方がいい。
一方ベイブリッジは幸運なことに橋の幅以上の戦いはできない。それならば数で負けていても敵を倒すことは可能性として全くない訳ではない。
大黒か、ベイブリッジか。伴は究極の選択を迫られていた。
『伴、時間がないよ。そろそろ向かおう』
『…そうね…行きましょう、ベイブリッジへ』
夜叉猫は一斉に走りだしていく。伴は見ぃ出した勝機に賭けた。
(お願い。無事でいて、みんな…)
『遅いねぇ~。来るように言ったのに…来ないつもりかい?』
神楽はさっきから吸い終えては次のタバコに火をつけている。
『神楽がいじめるからすっぽかされたんだろ?』
『何がいじめだよ。あたしがあいつに何か変なこと言ったかい?』
『あの子、きっといい答えを待ってたはずだよね。あんな風に言って可哀想だよぉ』
『神楽さんはドSだからな~。』
周りから批判の声があがっている。
『バカ言うなよ。あたしゃご奉仕型Mだよ?』
『嘘だ!』
『嘘つき!』
『ありえない…』
周りは完全否定だ。
『何が嘘つきだよ!見せてやろうか!?本当のあたしを!』
『はいはい。でも、どっちにしろ力になってあげるつもりだったんでしょ?』
『はっ、そんなことないね!』
『…嘘つき』
その嘘はその場にいる全員が分かっていた。
clubKは本日全キャスト定休日である。
それにつき今、横浜の街に覇女がフルメンバーで集結している。
『どれ、ちょっと景気づけに浜の街を流しに行こう』
黒い特攻服の軍団が次々に単車に乗りこみエンジンをかける。
神奈川最大を誇るチームが今、動きだした。
湘南の海岸沿い、国道134号線では豹那が悪修羅嬢全員を集めていた。
『全員集まったかい?』
新湘南バイパスの入り口の交差点は紺の特攻服の女たちで埋め尽くされ、その中央で1人紫の特攻服の豹那が周りの女たちに語り始める。
『お前たち、よく聞いてほしい。如月んとこのガキらが東京ともめてる件だけど、勝手な私情を挟んで悪いが今からあたしは東京と戦いに行く。何を隠そうあいつらにやられちまったのは、あたしの生き別れになった妹なんだよ。あいつは今、まだ病院で寝てる。もしかしたらこのまま目覚めないかもしれない。今日集まってもらったのは、お前たちに頼みがあるからだ。もし一緒に行ってもいいって奴は、今夜一晩、あたしに力を貸してくれ』
悪修羅嬢たちは目と耳を疑った。
あの緋薙豹那が自分たちに助けを求めている。そんなことは初めてだった。
こんな風に頼んだり、こんな人間らしいまともな言葉など、今まで1度も聞いたことがない。
天上天下唯我独尊をそのまま人間にしたような性格で、尚かつ冷酷非道な嬢王と呼ばれ、仲間のことすら信じていないような女なのだ。
だが容姿はもちろんのこと、豹那のそんな姿さえ彼女たちのカリスマであり神的存在だった。
そのカリスマが今夜こうして自分たちのことを必要としてくれていることに、もはや理由など必要ない。
悪修羅嬢たちは単車に跨がりエンジンをかけると、新湘南への道を豹那が通れるように開いていった。全員豹那の方を向き、悪修羅嬢王の声を待っている。
豹那は自分のSS500に跨がるとエンジンをかけた。
『行くぞっ!!ベイブリッジだ!!』
豹那率いる悪修羅嬢が横浜を目指し走り始めた。
伴は22時30分に小田原厚木道路の小田原東インターで待つと愛羽にメッセージを送っておいたのだが、時間を過ぎても愛羽は現れないどころか、まだ連絡もないままだった。
『おかしいわ。愛羽ちゃんも玲璃ちゃんも麗桜ちゃんも風雅ちゃんも電話に出ないわ。何かあったのかしら…』
玲璃と連絡がつかないというのは聞いていた。玲璃は1人で突っこむと見てまず間違いない。
麗桜が哉原樹と手を組めたのも聞いた。鬼音姫は大黒に参戦するのだろう。敵が多いだけに合流して戦いたいところだが、そうしている間に玲璃はやられ更に愛羽も1人でベイブリッジに向かっているかもしれない。
大黒は大乱闘になることがよそうできるので人数ができるだけ多い方がいい。
一方ベイブリッジは幸運なことに橋の幅以上の戦いはできない。それならば数で負けていても敵を倒すことは可能性として全くない訳ではない。
大黒か、ベイブリッジか。伴は究極の選択を迫られていた。
『伴、時間がないよ。そろそろ向かおう』
『…そうね…行きましょう、ベイブリッジへ』
夜叉猫は一斉に走りだしていく。伴は見ぃ出した勝機に賭けた。
(お願い。無事でいて、みんな…)
『遅いねぇ~。来るように言ったのに…来ないつもりかい?』
神楽はさっきから吸い終えては次のタバコに火をつけている。
『神楽がいじめるからすっぽかされたんだろ?』
『何がいじめだよ。あたしがあいつに何か変なこと言ったかい?』
『あの子、きっといい答えを待ってたはずだよね。あんな風に言って可哀想だよぉ』
『神楽さんはドSだからな~。』
周りから批判の声があがっている。
『バカ言うなよ。あたしゃご奉仕型Mだよ?』
『嘘だ!』
『嘘つき!』
『ありえない…』
周りは完全否定だ。
『何が嘘つきだよ!見せてやろうか!?本当のあたしを!』
『はいはい。でも、どっちにしろ力になってあげるつもりだったんでしょ?』
『はっ、そんなことないね!』
『…嘘つき』
その嘘はその場にいる全員が分かっていた。
clubKは本日全キャスト定休日である。
それにつき今、横浜の街に覇女がフルメンバーで集結している。
『どれ、ちょっと景気づけに浜の街を流しに行こう』
黒い特攻服の軍団が次々に単車に乗りこみエンジンをかける。
神奈川最大を誇るチームが今、動きだした。
湘南の海岸沿い、国道134号線では豹那が悪修羅嬢全員を集めていた。
『全員集まったかい?』
新湘南バイパスの入り口の交差点は紺の特攻服の女たちで埋め尽くされ、その中央で1人紫の特攻服の豹那が周りの女たちに語り始める。
『お前たち、よく聞いてほしい。如月んとこのガキらが東京ともめてる件だけど、勝手な私情を挟んで悪いが今からあたしは東京と戦いに行く。何を隠そうあいつらにやられちまったのは、あたしの生き別れになった妹なんだよ。あいつは今、まだ病院で寝てる。もしかしたらこのまま目覚めないかもしれない。今日集まってもらったのは、お前たちに頼みがあるからだ。もし一緒に行ってもいいって奴は、今夜一晩、あたしに力を貸してくれ』
悪修羅嬢たちは目と耳を疑った。
あの緋薙豹那が自分たちに助けを求めている。そんなことは初めてだった。
こんな風に頼んだり、こんな人間らしいまともな言葉など、今まで1度も聞いたことがない。
天上天下唯我独尊をそのまま人間にしたような性格で、尚かつ冷酷非道な嬢王と呼ばれ、仲間のことすら信じていないような女なのだ。
だが容姿はもちろんのこと、豹那のそんな姿さえ彼女たちのカリスマであり神的存在だった。
そのカリスマが今夜こうして自分たちのことを必要としてくれていることに、もはや理由など必要ない。
悪修羅嬢たちは単車に跨がりエンジンをかけると、新湘南への道を豹那が通れるように開いていった。全員豹那の方を向き、悪修羅嬢王の声を待っている。
豹那は自分のSS500に跨がるとエンジンをかけた。
『行くぞっ!!ベイブリッジだ!!』
豹那率いる悪修羅嬢が横浜を目指し走り始めた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~
雪ノ瀬瞬
青春
今回のステージは神奈川です
鬼音姫の哉原樹
彼女がストーリーの主人公となり彼女の過去が明らかになります
親友の白桐優子
優子の謎の失踪から突然の再会
何故彼女は姿を消したのか
私の中学の頃の実話を元にしました
暴走♡アイドル2 ~ヨゾラノナミダ~
雪ノ瀬瞬
青春
夏だ!旅行だ!大阪だ!
暁愛羽は神奈川の暴走族「暴走愛努流」の総長。
関東最大級の東京連合と神奈川4大暴走族や仲間たちと激闘を繰り広げた。
夏休みにバイク屋の娘月下綺夜羅と東京連合の総長雪ノ瀬瞬と共に峠に走りに来ていた愛羽は、大阪から1人で関東へ走りに来ていた謎の少女、風矢咲薇と出会う。
愛羽と綺夜羅はそれぞれ仲間たちと大阪に旅行に行くと咲薇をめぐったトラブルに巻きこまれ、関西で連続暴走族襲撃事件を起こす犯人に綺夜羅が斬られてしまう。
その裏には1人の少女の壮絶な人生が関係していた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
無敵のイエスマン
春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。
燦歌を乗せて
河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。
久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。
第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
青春活動
獅子倉 八鹿
青春
バイトとゲームをして、終わりを迎えようとしている夏。
「こんな枯れた生活してるお兄ちゃんに、彼女がいる訳がない」
妹の言葉やSNS上の輝きに満ちた投稿により、俺は「枯れた」大学生ということを痛感することになった。
俺も光を放ちたい。
友人やバイト先の高校生を巻き込み、輝きに満ちた青春を過ごすため、動き始める。
スマホのカメラで青春を捕まえる物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
海になった友達
小紕 遥
青春
主人公は、友達が実は海になったという信じがたい状況に出くわす。夜の海辺で再び彼と語り合うことになった主人公は友達の言葉に戸惑いながらも、その奇妙な会話に引き込まれていく。友達は本当に海になったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる