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後編
妹の思い
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学校に七条と龍が現れた日、愛羽はまた豹那のマンションを訪れていた。
何か言いたそうにしている愛羽を、豹那は何も言わず中に入れた。
複雑な気持ちではある。
心を許したなんて思ってないし仲間じゃない。
だがこの自分に対して1ミリも構えようとしないこの妹の友を、今この状況でにらむ気にも文句を言う気分にもならなかった。
『…なんだい?また誰かいなくなっちまったのかい?』
『いえ、その、この前蓮ちゃんに伝言を頼まれてたんですけど、あの時言えなかったから…』
『そう…で、あの子はなんて?』
『…自分を責めないで、許してあげてほしいって。豹那さんにも、もう1度おもいっきり人生を楽しんでほしいって、そう言ってました』
蓮華には何一つも言わなかったのに妙に的をえた言葉だ。
『…他には、何か言ってなかったのかい?』
『いえ、あの時はそれだけでした…』
豹那は鼻で笑った。
『ふふ。おかしな子だね。あたし程人生を楽しんでる奴も、そうはいないってのに』
『蓮ちゃんからはそうやって見えなかったんじゃないですか?』
『は?お前に何が分かるのさ』
明らかに豹那は機嫌が悪くなってしまったが愛羽はそのまま続けた。
『ずっと一緒にいた人だから分かることってあるじゃないですか。あたしも玲ちゃんのことは小さい頃から一緒だったから、よく分かるんです。蓮ちゃん、豹那さんのこと話す時いっつも楽しそうでした。すごくカッコよくて可愛くて強い人、自分を助けてくれた大好きな人なんだって、あたしにもいっぱい話してくれて。その人があなただって分かった時は驚いたけど、それは蓮ちゃんも同じだったと思う』
『おい…何が言いたいんだい?』
とうとう豹那がイラつきを見せ始めた。
『豹那さんって、なんでアイドルになるのやめちゃったんですか?蓮ちゃん、すごい残念がってました。きっと何かあったんだと思うって』
『何も知らないくせにいちいちうるさいね!いいか?人には聞いていいことと悪いことがあるんだよ!それ以上そんな話続けるつもりなら出ていきな!さもなきゃ殺すよ?』
豹那はにらみをきかせたが愛羽は目をそらさなかった。逆に愛羽に見つめられると豹那が視線を外してしまった。
『蓮ちゃんは本当に知らないんですかね?』
『…何?』
『何があったのか聞かなくても、どんなことがあったのか考えたら蓮ちゃんには分かったんじゃないですか?あなたのこと、きっと自分のことのように思ってたはずだから。あの子は傷ついてきた子だから、人の気持ちや痛みが分かると思うんです。』
『帰れ!』
『豹那さん。この前あなたが言ってくれたこと、やっぱりお返しします。あたしじゃあの子に勝てないかもしれないけど、だからって豹那さんが蘭ちゃんや蓮ちゃんと同じような目に合わされたら、あたし蓮ちゃんになんて言えばいいか分かりません。2人はあたしのチームの仲間です。だからこの戦いは、やっぱりあたしがやりますから』
それだけ言って頭を下げると愛羽は出ていってしまった。
『ちっ…くそガキが』
豹那はタバコに火をつけると深々と煙を吸いこんだ。
1本吸い終える頃にはもうイライラは治まっていたが、蓮華からの言葉が胸に刺さったまま抜けなかった。
何か言いたそうにしている愛羽を、豹那は何も言わず中に入れた。
複雑な気持ちではある。
心を許したなんて思ってないし仲間じゃない。
だがこの自分に対して1ミリも構えようとしないこの妹の友を、今この状況でにらむ気にも文句を言う気分にもならなかった。
『…なんだい?また誰かいなくなっちまったのかい?』
『いえ、その、この前蓮ちゃんに伝言を頼まれてたんですけど、あの時言えなかったから…』
『そう…で、あの子はなんて?』
『…自分を責めないで、許してあげてほしいって。豹那さんにも、もう1度おもいっきり人生を楽しんでほしいって、そう言ってました』
蓮華には何一つも言わなかったのに妙に的をえた言葉だ。
『…他には、何か言ってなかったのかい?』
『いえ、あの時はそれだけでした…』
豹那は鼻で笑った。
『ふふ。おかしな子だね。あたし程人生を楽しんでる奴も、そうはいないってのに』
『蓮ちゃんからはそうやって見えなかったんじゃないですか?』
『は?お前に何が分かるのさ』
明らかに豹那は機嫌が悪くなってしまったが愛羽はそのまま続けた。
『ずっと一緒にいた人だから分かることってあるじゃないですか。あたしも玲ちゃんのことは小さい頃から一緒だったから、よく分かるんです。蓮ちゃん、豹那さんのこと話す時いっつも楽しそうでした。すごくカッコよくて可愛くて強い人、自分を助けてくれた大好きな人なんだって、あたしにもいっぱい話してくれて。その人があなただって分かった時は驚いたけど、それは蓮ちゃんも同じだったと思う』
『おい…何が言いたいんだい?』
とうとう豹那がイラつきを見せ始めた。
『豹那さんって、なんでアイドルになるのやめちゃったんですか?蓮ちゃん、すごい残念がってました。きっと何かあったんだと思うって』
『何も知らないくせにいちいちうるさいね!いいか?人には聞いていいことと悪いことがあるんだよ!それ以上そんな話続けるつもりなら出ていきな!さもなきゃ殺すよ?』
豹那はにらみをきかせたが愛羽は目をそらさなかった。逆に愛羽に見つめられると豹那が視線を外してしまった。
『蓮ちゃんは本当に知らないんですかね?』
『…何?』
『何があったのか聞かなくても、どんなことがあったのか考えたら蓮ちゃんには分かったんじゃないですか?あなたのこと、きっと自分のことのように思ってたはずだから。あの子は傷ついてきた子だから、人の気持ちや痛みが分かると思うんです。』
『帰れ!』
『豹那さん。この前あなたが言ってくれたこと、やっぱりお返しします。あたしじゃあの子に勝てないかもしれないけど、だからって豹那さんが蘭ちゃんや蓮ちゃんと同じような目に合わされたら、あたし蓮ちゃんになんて言えばいいか分かりません。2人はあたしのチームの仲間です。だからこの戦いは、やっぱりあたしがやりますから』
それだけ言って頭を下げると愛羽は出ていってしまった。
『ちっ…くそガキが』
豹那はタバコに火をつけると深々と煙を吸いこんだ。
1本吸い終える頃にはもうイライラは治まっていたが、蓮華からの言葉が胸に刺さったまま抜けなかった。
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