Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。

花月夜れん

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休みが終わる……俺

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 正月ははやいもので、もう学校がはじまる……。
 宿題は終わったし、ゲームもめいいっぱいした。
 だが、マキちゃんとデートしてねぇぇぇぇぇ!!
 二人きりのデート、デート……、俺から誘えばいいのか? よくよく考える。俺、二人きりのデートらしいデートって、まだ一回じゃないか?
 あの遊園地デート。
 今さら気づいたか、愚か者め! とマキちゃんに似た女神様が怒りの矛をこちらに向けている。
 これはヤバい。え、普通の恋人ってどこでデートするんだ?
 助けて、ぐー○る先生ー!
 遊園地? 行ったし……。
 ドライブ? 免許ない。
 温泉? いいなぁ、いつか行きたいな。
 映画……、映画! たしか今、めっちゃモンの映画やってたはずだ!
 だがしかし、前のデートもめっちゃモンだ。それでいいのか? 俺ぇ!!

 ◇

『映画ですか? ちょっとまってください』
『さすがに今日、今からってきついかな』

 さっそくメールする俺。スマホの前で緊張しすぎてなった変な顔が画面に反射してなんとなく見える。

『大丈夫です。課題も終わってますし、もし樹君が空いてるなら私から誘おうかなって考えてたところだったんで』

 マキちゃぁん!
 両思い!! 嬉しい!!

『ただ、映画の前か後にボーリング行きません?』

 ボーリング? それは掘削でなくボール投げの方ですよね? 俺は目をこすって確かめる。

『あっ、違います、ボウリングです!! うん、間違えました。こっちです!』

 ボウリングの絵文字と焦る絵文字がいっぱい並ぶ。おぉ、気がついた。一瞬、一緒に工事帽かぶって確認作業が頭に浮かんだ。
 可愛い、マキちゃん。

『ボウリング? マキちゃん好きなの?』
『えっとですね――』

 ◇

 映画は見終わり、今俺はつるつるの床の上に立っている。
 横ではマキちゃんが、マイグローブとマイシューズとマイボールを装備して気合いをいれているところだ。

「あの、マキちゃん?」
「はい?」
「レンタルでなく、マイ?」
「マイですね! マリヤ達がきてから皆ではまっちゃって、全員揃えちゃったんですよね。樹君もどうです?」
「あ、いや。うん、考えとく」

 そこまでハマるのか!? ボウリングなんて、五歳のガーターあげてもらって補助台使って転がしてた以来の俺には理解が追い付かなかった。

「よーし、オールストライク狙うぞー」

 俺の彼女はどうやらはまるととことん熱くなるタイプのようだ。
 ストライクって一回投げる回数減ってもったいなくねー? と思ってしまうボウリング超初心者の俺は自分の指にあうボールを探しに行った。

「おもっ」

 かなり重いし、これ明日腕にくるやつじゃ。そう思ったが、すでにマキちゃんは投球フォームだ。
 初カッコいいところを見せないと!
 俺は全然軽いぜといわんばかりに余裕を見せながらボールを置く。
 要は真ん中狙って投げればいいんだろ?
 ゲームで鍛えた俺の頭脳がそう言っている。いくぜ、俺!!

「よっし、ストライク」

 もちろんこれはマキちゃんだ……。俺はガーター、割れ、一本、あはははははは。はぁ……。
 誰だよ、真ん中狙えって言ったの。俺はどんどん差がついていくスコアを見上げた。
 まあ、成功したマキちゃんがいえーいと何度もハイタッチしてくれるのは嬉しかったけどな!!
 結果? 聞かなくてもわかるだろ?

「帰ったら、配信します?」
「い、いや、今日……明日までたぶん無理だ」

 腕が、指がプルプルしてる。もうきてる!!

「でも、今日配信予定いれてませんでしたっけ?」
「あ゛っ」

 修正しないままだった気がする。

「やるしかないか」

 くすくすとマキちゃんが笑う。

「頑張って下さい。今日は付き合ってくれてありがとうございました」

 少し目を泳がせて、俺は意を決する。

 ちゅっ

「俺も、ありがとう。それじゃあ、また」

 俺の方が赤くなりながら走り去る。いや、反対だろぉぉぉぉぉぉぉ。でも、まあ俺からキスできたのは前進したよな? したよな!?

 こうして、俺の楽しい冬休みは終わり、新学期が始まった。
もちろん俺は腕と肩をぷるぷるさせながら初日を迎えたのである。
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