Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
63 / 94

ふたたびのアイツと俺

しおりを挟む
 今俺は、マサユキと一緒に買い物にきている。
 いや、何で俺がこいつと一緒に行かなきゃならないんだよと思うだろ?

 ――――数時間前のこと――――

「さぁ、戦場よ!」
「おぉー!」

 大みそか前日、ナミは母さんの手伝いでおせち作り、父さんは大掃除、俺は――、買い出し班。

「あ、川井さんちもマサユキ君を出撃させるみたいよ。樹君、この辺の案内もかねて一緒にまわってあげなさい」

 出撃って母さん……。ま、まあそれが俺に課せられた仕事だった。

 で、またこの男と並んで買い物に行くわけだが。
 視線がいたい。この男の横に立つと俺に向けられる視線がなぜか痛い。
 はぁ、気のせいだと思おう。
 そう思っているのに、俺は最大級の嫌な視線を感じてしまった。

「お、樹とマサユキ君だっけ? なに、デート?」

 ユウキ、まさかここで会うとは奇遇だな。地獄に落ちろ。
 俺は心で思っても口には出さない男。

「よう、ユウキ。とりあえず、◯ね」

 そう、今言ったのはたぶん気のせいだ。
 まったく、その冗談はマサユキにだって失礼だろ。無表情なコイツからは読み取れないがたぶん怒ってるだろう。

「ごめん、ごめんっ。あーでもどうせ会うならナミちゃんが良かったなぁ」
「つーか、ユウキは一人なのか?」
「……断られた」

 あ、こっちもなかなか大ダメージを与えてしまったようだ。ユウキが目に見えてへこんだ。

「アイツ、今日は母さんとおせち作りだから動けないぞ」
「あ、やー。聞いてるけどさ。はぁぁぁ」

 じゃあ、一人で何してるんだと聞くべきか。聞かざるべきか。悩んでいるとマサユキがぽそりと何か言った。

「ん、なんだ?」
「……、や、マリヤの事、ありがとうございました」

 急にペコリとお辞儀する。俺とユウキは慌ててマサユキの頭を上げさせた。こんな往来で目立つんだよ。

「二人が手伝ってくれたから、マリヤも無事で笑ってくれてるのにまだお礼を言ってなくて」
「いやいやいや、マリヤは大事な仲間だし」
「ナミちゃんにお願いされただけだから」

 マサユキが無表情を崩している。マリヤに似てるからよく見ると可愛い顔だ。
 その顔が、真っ赤になっている。

「もし向こうに戻っても仲良くして下さい」

 え、俺マサユキと仲良くしてたっけ?

「マリヤも喜びます」

 あ、あーそっちね。はい、はい。って、むこう?

「あれ、大阪に戻るんですか?」

 ユウキがマサユキに聞く。マサユキはこくりと頷いた。

「このまま、何もなければ戻れると思う」
「そうかぁ」

 そういや、なんだかんだあったせいで、あまり昔話を聞けてないなぁ。
 俺とコイツが会ってたりしてなかったのか、とか。

「なぁ……」

 聞こうとした時に俺はとある人物と目があった。

「あっ」

 そいつはどう見ても、クラスにいるアイツだった。

「遠坂樹!」

 いや、何でお前にフルネームを呼ばれなくちゃならないんだ? 菊谷。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...