Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。

花月夜れん

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地獄に落ちてるのに落ちろと言われる俺

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「イツキ君!」
「ん、マリヤ……」

 ちゃんでいいのか? さんか? 昨日一回呼び捨てしてしまったが、結局名前の呼び方を決めてなくてどう呼んだらいいのか悩んでいるとマリヤが横にくっついてきた。

「子どもの時みたいに呼び捨てでいいよ」
「え、俺そんな感じだっけ」

 覚えがない! 覚えがないぞぉぉぉぉ!?
 小さい頃は女の子には、『ちゃん』をつけていたはずだ。ただしナミは除く。妹だし。
 だからマキちゃんだっていまだにマキちゃんなのだ。

「……マリヤさん」

 ぶぅーと口をすぼめるマリヤ。

「なら川井さんだ」

 そう言うと、マリヤは悲しそうな顔になってしまった。

「本当に覚えてないんだ。悲しいなぁ」
「いや、いたのは覚えてる。けどなぁ」

 俺の中では過去のマリヤは男の子なのだ。マキちゃんと違って途中の過程を知らないのでいきなりこんな美少女になってこられても、イコールで繋がらない。

「まあ、ええわ」
「へ?」
「思い出は今から作っていってもいいしな」

 銀髪美少女が急に関西弁になって俺は少したじろぐ。

「あっと、こっちはこの話し方だと変やな」
「いや、面白くていいんじゃないかな」

 俺がぽんっとそう口にするとマリヤは笑って、そうかな? と照れていた。

「行きますよ、二人とも!」
「マキちゃん、ごめんごめん」

 ナミとマキちゃんが並んで歩く。俺はなぜかマリヤの横に並ばされて、昔話を聞かされた。
 俺が男の子に告白された話や見知らぬおじいちゃんおばあちゃん達から可愛い女の子ねーと何度も言われたことや……なんでそんなに昔のこと覚えてるんだよ!! というか、その情報源、ナミだろ? さっきから笑いをこらえてるのが見えてるんだよ!
 お願いだから、ユウキには言わないでくれよ。

 ◇

「おい」
「なんだ、ユウキ」
「ごーとぅーへるっ!!!!」
「なんでだよ」

 まあ思った通りユウキの反応はこんなだった。
 教室に横並びで同時に入る俺と美少女転校生マリヤ。
 注目の的もいいところだ。

「おはようございます。ユウキ君。これからイツキ君と一緒にいると思うので仲良くして下さいね」

 ユウキの目に嫉妬の炎が宿ったように見えた。
 マリヤは先ほどまで使っていた関西弁ではなくなっている。使い分けでもしてるのか?

「マリヤは幼なじみなんだよ! 近所に戻ってきて、同じ学校だし、同じクラスだから、別に深い意味は」

 って、何で彼女でもないユウキに言い訳しなきゃなんねーんだよ!!

「何故我には、可愛くて、男の気持ちをわかってくれる、優しい幼なじみがいないのだぁぁぁ」

 いや、それ俺のせいじゃないから。そして、我とかキャラ崩壊するほどのことなのか!?
 うーん、やはりユウキを妹とくっつけるのは考え直すか……。
 俺はため息をつきながら席にカバンを置いた。
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