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もう一度聞いてやる俺
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うわ、近いぞ! ユウキ! それ以上は許さん。
ナミの髪に触れるか触れないかという距離でユウキが話しかけていた。
「なるほど、ユウキさんは樹君の学校のお友達でしたか」
「あぁ、そう。それで、なんでここに? ってびっくりして」
「ナミと付き合ってるように見えたと」
「そうなんです」
視線の先では仲良さそうにダブルデートをする妹と親友。カップルにしか見えない。
「お兄さんって、妹が誰かと付き合うってなったら気になるものなんですか?」
「う、いや、うーん」
どうだろう。たまに小憎たらしいけれど、俺とマキちゃんのキューピッドでもあるわけで、幸せになって欲しいとは思う。思うんだが、ユウキかぁ――。
いやいや、うーーーーーーん。
頭を抱えて悩んでいると、マキちゃんが頭を撫で撫でしてきた。何故?
「ナミの彼氏はいい人がいいですね」
「え?」
「だって、私に頑張れって言ってくれたから、私もナミが恋したら応援したいんです」
あぁ、可愛いなぁ、俺の彼女。
ほわっとしていた次の瞬間、ナミと目があった。そのまま、ナミはずんずんとこっちに向かってくる。
「あーーーー! お兄とマキじゃん! 一緒の日にきてたんだ。すごい偶然だね」
「お、おぅ。ナミ、どうしたこんなところで」
「あ、お兄は言ってなかったね。ナホ先輩ー! ここにいる人達! 私のお兄とその彼女ですよー!」
ぶんぶんと元気よく手を向こうにいる三人にふる。そして、俺は見てしまった。
口をぱかっと開けた、親友の驚く顔を――。
◇
「波乱のデートになってしまいましたね」
「まさか、あのままくっついてこられるとは思わなかった」
俺達は、夜のパレードまで残らずに、先に電車に乗った。やっと、二人きりに戻れた。俺とマキちゃんの二人の時間が! 前借りの小遣いが! 半分位吹き飛んでしまった気分だ……。
「また一緒に来ましょうね」
マキちゃんの頭が、俺の肩に乗る。いい匂いが鼻腔をくすぐる。
「今度はあーいうことがないように計画しないとだな。念入りに確かめてから動こう」
といっても、大人ではない俺達は行動範囲が限られてしまうし、被る可能性は捨てきれないけれど。
「そうですね」
くすくすと笑うマキちゃん。俺は肩に手を回すかどうか悩みつつ、手を動かせずにいた。
こんな時、出来る男は動けるんだろうな。
「樹君、大好きです。一緒にデートしてくれてありがとうございます」
マキちゃんが可愛いすぎて、俺は家に帰ってから全力で悶えていた。
ナミが帰ってきたら話を聞くつもりだったのに、そんな考えはどこかにぽーんと飛んで行ってしまった。
◇
「お兄さん」
「まて、誰がお前のお兄さんだ。ユウキよ」
「お兄」
「ヤメロ」
「僕に妹さんを下さい」
はぁぁと長いため息をつく。
学校でそんな事を言われる日がくるとは思ってもいなかったよ。
「俺じゃなくて、妹に言えよ、ユウキ」
「いや、だって……、連絡先とか聞けてなくて」
「まったく……」
しょうがないなぁ、もう一度聞いてやるか。
「女の子になるつもりはあるか? ユウキ」
「え、意味がわからん」
OKするぐらい本気なら、少しは応援してあげるかな。
ナミの気持ちは、たぶん俺の彼女が聞いているところだろうから。
ナミの髪に触れるか触れないかという距離でユウキが話しかけていた。
「なるほど、ユウキさんは樹君の学校のお友達でしたか」
「あぁ、そう。それで、なんでここに? ってびっくりして」
「ナミと付き合ってるように見えたと」
「そうなんです」
視線の先では仲良さそうにダブルデートをする妹と親友。カップルにしか見えない。
「お兄さんって、妹が誰かと付き合うってなったら気になるものなんですか?」
「う、いや、うーん」
どうだろう。たまに小憎たらしいけれど、俺とマキちゃんのキューピッドでもあるわけで、幸せになって欲しいとは思う。思うんだが、ユウキかぁ――。
いやいや、うーーーーーーん。
頭を抱えて悩んでいると、マキちゃんが頭を撫で撫でしてきた。何故?
「ナミの彼氏はいい人がいいですね」
「え?」
「だって、私に頑張れって言ってくれたから、私もナミが恋したら応援したいんです」
あぁ、可愛いなぁ、俺の彼女。
ほわっとしていた次の瞬間、ナミと目があった。そのまま、ナミはずんずんとこっちに向かってくる。
「あーーーー! お兄とマキじゃん! 一緒の日にきてたんだ。すごい偶然だね」
「お、おぅ。ナミ、どうしたこんなところで」
「あ、お兄は言ってなかったね。ナホ先輩ー! ここにいる人達! 私のお兄とその彼女ですよー!」
ぶんぶんと元気よく手を向こうにいる三人にふる。そして、俺は見てしまった。
口をぱかっと開けた、親友の驚く顔を――。
◇
「波乱のデートになってしまいましたね」
「まさか、あのままくっついてこられるとは思わなかった」
俺達は、夜のパレードまで残らずに、先に電車に乗った。やっと、二人きりに戻れた。俺とマキちゃんの二人の時間が! 前借りの小遣いが! 半分位吹き飛んでしまった気分だ……。
「また一緒に来ましょうね」
マキちゃんの頭が、俺の肩に乗る。いい匂いが鼻腔をくすぐる。
「今度はあーいうことがないように計画しないとだな。念入りに確かめてから動こう」
といっても、大人ではない俺達は行動範囲が限られてしまうし、被る可能性は捨てきれないけれど。
「そうですね」
くすくすと笑うマキちゃん。俺は肩に手を回すかどうか悩みつつ、手を動かせずにいた。
こんな時、出来る男は動けるんだろうな。
「樹君、大好きです。一緒にデートしてくれてありがとうございます」
マキちゃんが可愛いすぎて、俺は家に帰ってから全力で悶えていた。
ナミが帰ってきたら話を聞くつもりだったのに、そんな考えはどこかにぽーんと飛んで行ってしまった。
◇
「お兄さん」
「まて、誰がお前のお兄さんだ。ユウキよ」
「お兄」
「ヤメロ」
「僕に妹さんを下さい」
はぁぁと長いため息をつく。
学校でそんな事を言われる日がくるとは思ってもいなかったよ。
「俺じゃなくて、妹に言えよ、ユウキ」
「いや、だって……、連絡先とか聞けてなくて」
「まったく……」
しょうがないなぁ、もう一度聞いてやるか。
「女の子になるつもりはあるか? ユウキ」
「え、意味がわからん」
OKするぐらい本気なら、少しは応援してあげるかな。
ナミの気持ちは、たぶん俺の彼女が聞いているところだろうから。
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