Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。

花月夜れん

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デートに出掛ける俺

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「ウサギーランドジャパン!!」
「人が多いです!」

 マキちゃんにお願いされては行くしかないだろうと俺は計画を立てた。母さんから小遣いの前借りをして、当分は小遣いなしだ。投げ銭という手もあったが、そのお金は女の子の俺ミツキに投げられた物なので、出来れば使いたくない……。男の子として、マキちゃんとデートするのだから!

「そう思ってたのになぁ」
「何ですか?」
「マキちゃん、俺は何でこれをつけないとなのでしょうか――」

 俺の頭にはマキちゃんが八月二十一日に着けていたウサミミがついている。マキちゃんの頭には何もついていないのに。

「可愛いからです」

 可愛い彼女にまっすぐ目を見てそう言われると、俺は反論出来なくなってしまう。まあ、耳だけだから、可笑おかしくないはず。たとえ男だけがつけていたって、――。少し考えて、また凹む。

「さぁ、行きますよ! めっちゃモン、ザ・リアルへ!!」
「お、おー!」

 俺達の目的の一つ、ここのアトラクションで期間限定めっちゃモンワールドが出来ているのだ。リアルサイズで出来たモンスター達のゾーン。そこを抜けるとVRゴーグルを着けて気分を味わうゾーンが待っている。最後は、急降下する絶叫マシーンゾーン。

「楽しみですね」
「そうだ、スマホっと」

 コラボらしく、ゲームと連動アイテムゲットもある。
 入り口に設置されたコードを二人で読み込んだ。

「な、な」
「当たっちゃいましたか」

 俺のスマホ画面に表示されているのは、ウサギーランドジャパンのオリジナルキャラ風のバニーガールスーツだった。そう、一等賞。
 マキちゃんの画面には、厳つい銃剣。持ち手にウサミミが生えている。二等賞だ。
 俺は限定武器が欲しかった!! なぜ、またこの服が俺の前に立ちはだかる!

「さすがですね。空気を読んでいる」
「ま、まあ着るのは俺じゃないしな」

 そうだ、これを着るのはミツキだから問題なんてないっ!!

「もう一度着てくれていいのですが」

 そんな小声が聞こえてきたけれど、スルーして俺は奥に歩き出す。

「樹君」

 マキちゃんが俺の片手を引っ張る。

「手、繋いで歩こう」

 カッコよく笑いながら、俺はマキちゃんにリードを握られた。失敗だ。俺がそれを実行しなければいけなかったのに、ここでまた俺は盛大に凹んだ。
 この先で挽回するタイミングはあるのだろうか。
 きれいにネイルされたマキちゃんの手を見ながら、俺は次こそはと考えていた。
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