Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
6 / 94

友から裏切り者と言い渡される俺

しおりを挟む
 そう言えば、昔、ナミとマキちゃんがケンカした時なんかに俺、マキちゃんの頭をあんな風に撫でていたっけ。
 部屋に戻った俺は、小さい頃の二人を思い出していた。
 まさか、この歳になってやり返されるとは……。
 それにしても、目の前にあった、彼女の胸、大きかったなぁ……。
 そんな事を考えていると、ナミの声がドアの外からした。今日は鍵をぬかりなくかけておいたから中を覗かれるようなことは――ないっ!

「お兄、部活、明日はさぁー」

 妹が何かとんでもない事を言い出しそうな雰囲気ふんいきを感じ、俺は急いでドアを開け、ナミを部屋の中に引き込む。何を廊下で言うつもりなのかっ!!

「もう、何? 聞かれて困るような事?」
「困るだろ? 兄がこんなキャラクター使ってたら?」
「え? 可愛いんじゃない?」
「は?」
「ミツキちゃん、可愛いじゃん」

 そりゃあ、可愛い女の子を目指して作ったから可愛いは間違いじゃない。間違いじゃないけどなぁ――。

「兄の威厳いげんが」
「最初からないでしょ。そんなの。それで、明日なんだけど」

 容赦なんてない、ストレートパンチを叩き込まれた俺は心だけダウンしながら、彼女の続きの言葉を待つ。

「明日さ、私いないから、マキの家には一人で行ってね!」
「はぁっ?!」
「じゃあ、そういうことで」
「まてまてまて! 俺一人とか無理に決まってるだろ?」
「…………」

 少し【考える人】のように考えていたナミは、口元をゆっくりあげて声を出さずに笑った。

「……大丈夫、ちゃんと話はついてるよ」
「は? え?」
「それじゃあね。お兄」

 ニヤニヤしながら、部屋を出ていくナミを見つめながら、俺は一人考えていた。
 いや、どう頑張っても無理だろう?
 何をどうしたところで、ナミがいないのにマキちゃんの部屋に行ける訳がない。
 なのに、ナミは何故あんなにも自信満々だったのだろうか――。

 ◇

「というわけなんだ。友よ、助けてくれ」
「いや、わからんな。全然わからん。何がどうなって幼なじみの部屋に行くかを説明してくれないとだな。裏切り者ユダよ」

 茶色に染めた短い髪の男が冷たい視線を送ってくる。
 彼は七瀬勇樹ななせゆうき。中学、高校とつるんでいる友だったが、今日から裏切り者扱いになってしまったようだ。

「彼女がいない僕に対する宣戦布告せんせんふこくだな。そうに違いない。お前もヤツのように僕より先に……」

 そう言えば最近、ユウキの双子の弟に可愛い彼女が出来たそうで、イライラしていたんだった。

「僕も可愛い彼女が欲しい!」
「だから、彼女じゃなくてだな、ただの一個下の幼なじみだって」
「なら、何故そんな、けしからん事になるんだ!」
「あー、それは……、見られたんだよ。一人でしてるところを――」
「なん……だと……」
「そしたら、妹も一緒になって、俺を無理やりだな――」
「裏切り者ぉぉぉーーーーー!!」

 遠ざかるユウキの足音。待て、俺はまだ説明の途中――。

「はぁ……。どうしたものか……」

 ◇

「やっほー、樹君」

 門の前で待つ、制服姿のマキちゃん。違う高校の女子が門の前で待っているという、めちゃくちゃ目立つ状況に俺は頭を押さえる。

「今日もよろしくね!」

 そう言って、彼女が笑いかけてくれる。
 俺の隣にいた、ユウキは、にっこりと笑いながら「爆発してしまえっ」と言い、走っていってしまった。
 はぁ、明日謝ろう。
 ん、あれ? 誰だ?
 彼女の横にもう一人、少し背が低い女の子が一緒に居る。

「私の友達、月城唯つきしろゆいちゃん。ゲーム好きだから、色々一緒にしてるんだ」
「よろしくお願いします」

 そうか、二人きりはこれで回避出来た訳だ。しかし、また可愛い子だな。黒髪を短くそろえた、ショートボブかな?
 格好いい髪型なのに、すごく可愛い顔なのでそのミスマッチさが可愛さを際立たせている気がする。

「よろしくお願いします」

 俺がペコリとお辞儀じぎすると、マキちゃんが自分の口に指を当てながらあることを言ってきた。

「ユイちゃん、ラブラブな彼氏がいるから手を出しちゃ、ダメですよ!」
「あ……、はい」

 そりゃあ、そうだろうな。こんなに可愛い子だもんな。
 俺は頷きながら、二人の女子高生の後を追いかける。二人きりだったらと想像して悩んでいたけれど、二人の女子高生の後ろをとぼとぼついて歩く俺の図もなかなかくるものがあった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...