Vの世界で理想の美少女やってたら、幼なじみに見られた……俺。

花月夜れん

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証拠を押さえられ 、勧誘(強制)される俺

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「あん、お兄……もうダメ」

 いや、ダメじゃないだろ? まだ、始めたばかりだろ?

「ナミ、そこは、だめです。その奥は、あ……あぁーー」

 やめてくれ……。

「「あ、あぁ、あぁぁぁぁーーーー」」

 マキちゃんとナミの声が響く。声だけ聞いてるとエロにしか聞こえない、あえぎ声のようなゲームの会話と叫び声。
 彼女いないれきイコール年齢の俺の耳に毒だ。いや、……正直いいものだ……。しかし、親が帰ってきてこの声を聞いたら、俺は殺される。

「お前らいつもそんな声だしてやってるのか?」
「え? 出してないよ?」
「はっ?」
「いつもはおやつ食べながらだから、ねー?」
「そういえば、おやつ食べてませんでした」

 おやつを口に入れておかないと、危険どころじゃない。わかった、何か持ってこよう。そう思い、何度目かのローディング画面になったので、立ち上がった。何かあったかな――。
 お菓子ストックをいれている棚の扉を開き、口をふさぐのにちょうどいいモノを探す。

「ね、やっぱりお願いしようよ」
「え、マジで?」

 いったい、何度目のトライだろう。そろそろ終わって欲しいと願っているのに、まだコイツらはあきらめないでやる再挑戦相談か?

「ねえ、お兄」「樹君」

 二人が同時に話しかけてくる。なんだよ、なんか怖いぞ。

「「一緒にVチューバー、ゲーム部しない?」しませんか?」

「……は?」

 手に持っていた、はっぴーな粉付きそふとな煎餅せんべいがガサッという音を立てて落ちた。

 ◇

「これが、真樹マサキ。私のV君」
「こっちがななみん。私のVちゃん」

 彼女達のスマホには、狼耳が特徴的なイケメンアバターとウサギ耳をつけた可愛い女の子のアバターが並んでいる。

「女の子メンバーを増やしたいねって二人で話してたんだけど、いい人がいなくってさ!」
「昨日、樹君、やってるとこを見て、その……。一緒にしてくれないかなって」
「お兄、一人でやってるなんて知らなかったからさー! びっくりしちゃった。ね? 一緒にしようよ! ……ミツキちゃん」
「お願いします。……ミツキちゃん」

 二人が、俺に笑顔を向ける。その後ろに、天使の羽をつけた悪魔が見えた。
 これは、断ったら、世間に話が回るぞということか?
 だが、証拠はすでに隠蔽いんぺいを!

「あ、全部ダウンロード済みだからね、お兄」
「録画もばっちりです、樹君」

 ジーザス! 神も仏もないのか!
 にこにこする彼女達に連行され、俺は自室に着いた。

「この子、移動は出来るの?」
「あ、あぁ、一応」

 上手く隠していた、あの子を引っ張り出される。

「じゃあ、決定だね」
「あ、私がいない時でも、二人でやっててもいいからね。お兄」
「ナミは他の付き合いがありますからね」
「そうそう」
「よろしくお願いします、樹君」

 俺に、拒否権はないらしい。

「……男のあば――」
「ダメです。私が紅一点――というか、男性アバターは私だけでいく予定の部活なので! 樹君はこの猫ちゃんですよ」
「……はい」

 今日俺は、リアル女の子の前で、可愛い女の子を演じろという恐ろしい命令を可愛い年下の幼なじみ、マキちゃんからくだされた。
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