1 / 94
あれを見られた俺
しおりを挟む
あの日、なぜ俺は鍵をかけなかったんだろう。かけていれば、こんなことにならなかったのに…………。
「さぁ、今日もチームけもラブのゲーム部、配信はっじまるよー☆」
「よろしくにゃーん!」
ちなみに、にゃーんって言った猫耳美少女アバターが俺、遠坂樹、高校二年生。ボクと言ったカッコいいイケメン狼耳のアバターが川井真希。一個下の俺の幼なじみだ……。
◇
「お兄ー!」
下の階から妹、遠坂奈美が俺を呼ぶ声がする。
まったく、この時間は邪魔するなよって言ってあるはずなのに、いったい何の用だ。ふぅ、だが、この部屋は今鍵がかけてある。入れるもんなら入ってみろ!! そう心で叫びつつ、俺は妹の声を無視して、目の前に意識を戻す。いまは集中しなきゃ駄目なところだった。
「あ、ありがとうございます! そう、そうなんですよー!わかってくれますか。ミツキ、嬉しいにゃぁん!」
ゲームの画面には女の子キャラクターでモンスターと戦う場面が映っている。人気のゲーム「めっちゃモンスターハンティング」通称めっちゃモン。
これをプレイしながら、動画配信している。これまた美少女猫耳アバターで。そう、これ中身、俺。告白すること50回。ことごとく、女の子っぽい、可愛いからごめんとフラれ続け、女子と付き合ったことがない俺はついに可愛い理想の美少女を作り出し、自分がその中に収まった。かわいく理想通りに動かすことが出来るのは俺だけだ! って、何やってるんだろう、俺。
まあ、そうこう動かして、配信していると人気が出て、今じゃフォロワーがうはうはうなぎ登り状態だ。男性アカウントが多いが、女性アカウントもかなり多い。両性からモテモテ。何故、これがリアルじゃないんだ? あ、いや、リアルで男にはモテなくてもいいのだが。うん、絶対にな。
「あ、今日も来てくれたんですねー! ありがとうございますにゃ!」
ゲームをこなしつつ、美少女になりきり配信もだいぶこなれた物になってきた。
「やったぁぁぁぁ!」
最後の一撃を与え、上手に狩れましたー、と喜んでいた時だった。
「樹君?」
聞いた覚えのある声がして、後ろへ振り返るとそこには、理想とは違うけれど、妹と同い年の美少女幼なじみが立っていた。
あ、俺の人生終わった? あれ、俺鍵かけてなかった? どうやって入ってきたんですか? あ、かけ忘れ? なにやってんだ、俺ーーーー!!
いつから見られていたのだろう。パソコンの画面には、可愛いケモミミ女子のアバター。女子みたいに話す俺。もし聞かれていたら、いわゆるおネエ言葉を使う系男子と思われてもおかしくない……。
いや、まだだ、これが配信画面だとしらなければ誤魔化せる!
「マキちゃん、これは……」
「樹君、配信やってるんだ」
がっでむ!! 配信画面と知っているだと!
まあ、今時の女子ならわかってしまうか……? く、こうなったら、…………いや、どうすりゃいいんだ!?
「マキちゃん、……」
手を彼女の方へ伸ばす。後ろからミツキを心配する声がするが今はそれどころじゃない。
「ごめんなさい!!」
パッとマキちゃんが動き出して、扉をしめ、階段をおりていく音がした。明日から俺は、家族や知り合いからネカマのレッテルをはられる日々を送ることになるのか――。
「終わった……、俺の人生……」
彼女が逃げたばかりの扉を、しっかりとしめて鍵をかけ、俺は画面に話しかける。
配信も、今日で終わりかな……。
「さぁ、今日もチームけもラブのゲーム部、配信はっじまるよー☆」
「よろしくにゃーん!」
ちなみに、にゃーんって言った猫耳美少女アバターが俺、遠坂樹、高校二年生。ボクと言ったカッコいいイケメン狼耳のアバターが川井真希。一個下の俺の幼なじみだ……。
◇
「お兄ー!」
下の階から妹、遠坂奈美が俺を呼ぶ声がする。
まったく、この時間は邪魔するなよって言ってあるはずなのに、いったい何の用だ。ふぅ、だが、この部屋は今鍵がかけてある。入れるもんなら入ってみろ!! そう心で叫びつつ、俺は妹の声を無視して、目の前に意識を戻す。いまは集中しなきゃ駄目なところだった。
「あ、ありがとうございます! そう、そうなんですよー!わかってくれますか。ミツキ、嬉しいにゃぁん!」
ゲームの画面には女の子キャラクターでモンスターと戦う場面が映っている。人気のゲーム「めっちゃモンスターハンティング」通称めっちゃモン。
これをプレイしながら、動画配信している。これまた美少女猫耳アバターで。そう、これ中身、俺。告白すること50回。ことごとく、女の子っぽい、可愛いからごめんとフラれ続け、女子と付き合ったことがない俺はついに可愛い理想の美少女を作り出し、自分がその中に収まった。かわいく理想通りに動かすことが出来るのは俺だけだ! って、何やってるんだろう、俺。
まあ、そうこう動かして、配信していると人気が出て、今じゃフォロワーがうはうはうなぎ登り状態だ。男性アカウントが多いが、女性アカウントもかなり多い。両性からモテモテ。何故、これがリアルじゃないんだ? あ、いや、リアルで男にはモテなくてもいいのだが。うん、絶対にな。
「あ、今日も来てくれたんですねー! ありがとうございますにゃ!」
ゲームをこなしつつ、美少女になりきり配信もだいぶこなれた物になってきた。
「やったぁぁぁぁ!」
最後の一撃を与え、上手に狩れましたー、と喜んでいた時だった。
「樹君?」
聞いた覚えのある声がして、後ろへ振り返るとそこには、理想とは違うけれど、妹と同い年の美少女幼なじみが立っていた。
あ、俺の人生終わった? あれ、俺鍵かけてなかった? どうやって入ってきたんですか? あ、かけ忘れ? なにやってんだ、俺ーーーー!!
いつから見られていたのだろう。パソコンの画面には、可愛いケモミミ女子のアバター。女子みたいに話す俺。もし聞かれていたら、いわゆるおネエ言葉を使う系男子と思われてもおかしくない……。
いや、まだだ、これが配信画面だとしらなければ誤魔化せる!
「マキちゃん、これは……」
「樹君、配信やってるんだ」
がっでむ!! 配信画面と知っているだと!
まあ、今時の女子ならわかってしまうか……? く、こうなったら、…………いや、どうすりゃいいんだ!?
「マキちゃん、……」
手を彼女の方へ伸ばす。後ろからミツキを心配する声がするが今はそれどころじゃない。
「ごめんなさい!!」
パッとマキちゃんが動き出して、扉をしめ、階段をおりていく音がした。明日から俺は、家族や知り合いからネカマのレッテルをはられる日々を送ることになるのか――。
「終わった……、俺の人生……」
彼女が逃げたばかりの扉を、しっかりとしめて鍵をかけ、俺は画面に話しかける。
配信も、今日で終わりかな……。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる