歌うすずめとクロツノ魔王

花月夜れん

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三つの国

赤ちゃん

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「リぃーりぃー!」
「てってっ!」

 小さな手でお互いをなであう二人の赤ちゃん。白いふかふかに包まれて仲良く並んで寝転んでいる。
 私はそれを見て、ふわふわとした気分だ。赤ちゃんってなんて可愛いんだろう。

「やぁーーーーー!!」
「あーーーーーーーっ!」

 まあ、次の瞬間真っ赤になって泣いたりするけれど。

「鈴芽様、そろそろお時間では? です」
「あ、そうか。今歌うから、大人しくしててねー」

 私は子守唄を二人の赤子に歌ってあげる。
 すると、少ししてスゥースゥーと寝息が聞こえてきた。

「可愛いなぁ」
「でも、大変ですよね。離れられないと、です」
「うーん。まぁねー」

 セレはせっせと用意を進めている。

「ヨウ様も、魔王代理としてあちこち走り回ってなかなか会えないですもんね、です」
「今日は流石さすがにそろそろ戻ってきてくれると」
「すずめーーーーー!!」

 走ってくる音がする。慣れない服を着てるから走りづらそう。

「ヨウ!」
「あれ、まだ準備してないの?」
「ごめんね。今からなの」
「じゃあ、一緒にここで」
「ダメです!」
「えーーーー!」

 セレに追い出されて扉の前で寂しそうな鳴き声をヨウが発していた。

「ヨウ様は向こうで用意してください! です。ティー様とリリー様が起きてしまいます」
「あはは、起きたらそれどころじゃなくなっちゃうものね」

 小さな赤ちゃん達は緑色が少しある黒い角と半分透明な白い角がある。
 あの出来事のあと、次の日に角を見たら、二人の赤ちゃん魔人になっていたのだ。

「起きたら私達が面倒を見ておきますがどうしようもなかったらお願いします」
「ありがとうございます。ベルさん」

 ティーとリリーと名付けた二人の赤ちゃん達は、泣き出すと魔人達まで泣き出してしまうのだ。恐るべし、新しい女王と王かもしれない子。あっと、それにティーとリリーは私とヨウしか触らせてくれないの。他の人だと、どうしても泣き出してしまう。
 流石の魔人も泣き出しては困りものということで、私とヨウはこの子達のお守り役兼魔王代理に任命された。
 そう文字通り、守ることになった。

「さて、あとはお化粧をして」
「すずーーーー」「すずめ!」「すずちゃん!」

 バーーンと登場したのはイソラ、麻美、結愛。

「来てくれたんだ」
「当たり前です! わたくしはすずの親友兼師匠なのですから!」
「すずちゃんの結婚式なんだから、お祝い言いたいよ」
「私より先に結婚するなんて、覚えてなさいよ!」

 そう、今日私はヨウと結婚式を挙げるのだ。
 三人のそれぞれのそれぞれらしいお祝いの言葉を受け取って私は嬉しくて涙が出た。

「あ、お化粧が崩れてしまいますわ。すず」
  
 イソラはハンカチを取り出して涙を拭き取ってくれた。

「ありがとう」

 唇に赤色がのった。これで終わりだろうか。セレは化粧道具をしまっていく。

「準備完了! です」

 そう言ってセレが、ふんっと鼻を鳴らした。
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