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三つの国

繋がる気持ち

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 ズハリがベルと呼んだ女性のもとにたどり着くと同時にずずずずと地面が波打つような音と感覚があった。

「何が起こってるの?」

 ヨウの傷を押さえながら私は揺れる地面に手をつく。

「怒ってる」
「え」
「角に感情が流れてくる」

 角がなくなった私にはわからない感覚がヨウにはあるみたいだった。

「すず! 逃げましょう」
「イソラ!」

 リーンが眷属獣を呼び飛ぶ用意をしていた。
 ただ、揺れて近寄ることが出来そうにない。

「皆を連れて逃げて」

 二人以外は皆そこにいる。なら、ひどくなる前にはやく飛び立ってもらわないと。そう思い、叫んだ。
 壁や床ががらがらと崩れだした。ヨウが私をぎゅっと抱き締める。私もヨウと離れないようにぎゅっと彼に寄り添う。

「すずちゃん!!」

 屋根が崩れたのか大きな石がふってきた。それに、足元もまるで地獄への入り口かのように、私とヨウを飲み込む大きな口を開けた。

「すずめーーーーーー!!」
「すずめちゃーーん!!」

 良かった、麻美ちゃん、声が出るようになったんだ。これできっと……。

 ◇

「…………すずめ」
「…………ヨウ」

 揺れがおさまったのだろうか。先ほどまでとは、うってかわって静かだった。

「……動ける?」
「……うん」

 真っ暗で何も見えない。何がどうなってるんだろう。

「ボク達、生き埋めになってるみたいだ」
「……そっか」

 でも、石に挟まれたりしてない。何でだろう。

「ボクの魔法の力が尽きるまでに外に出られるといいけど」
「ヨウが魔法で守ってくれてるの?」
「……ごめんね、長く持たないかもしれない」
「……ありがとう。守ってくれて」

 私はそばにいるヨウに顔を寄せる。このまま二人で死んじゃうのかな。そんなの嫌だな。

「すずめ、ボク聞きたい」
「え?」
「聞かせて?」
「聞きたいって、歌の事?」

 ヨウの顔は見えないけれど小さく笑っていた。

「うん、歌って、すずめ」

 違ったのかもしれないけれど、ヨウが歌って欲しいなら、私はヨウの為に歌うよ。

『泣かないで、私達がいつだって一緒にいるよ。大丈夫、お日様はいつだって輝いてる。その涙、すぐに乾くよ。一緒に笑おう~』

 歌い始めると小さな光が空に向かって走り出した。

「クロさん?」

 小さな光が遠ざかる。少しして、光は上空に消えた。

「すずめの事、大好きだ。出会ってからずっと」
「……ヨウ」
「ボクと結婚しよう」

 答えていいのかな。私、スズじゃないけど。
 力強く抱き締めてくれるヨウ。そうだ、私向こうで思いしった。離れて、この気持ちがはっきりした。だから、ちゃんと伝えないと。私の気持ちはわかってる。

「私もヨウが大好き。私はヨウを好きになってたよ」

 ヨウの手が場所を確かめるように頬に触れる。真っ暗な世界で、ヨウだけを感じる。
 ヨウの唇と私の唇が触れて、彼と深く深く繋がった気がした。
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