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三つの国

普通の女の子

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「あの人達に刃向かえないならこうすればいいのではないですか!」

 フェレリーフが指先でクランをさす。

「沈黙の風」

 さっきの魔法だ。今度は間違わない。私は息を止める。風が通りすぎた。

「あみちゃん、ゆあちゃん!」

 私は二人を確認する。

「私は大丈夫。だけど、クランさんが」
「――――」

 麻美の声も聞こえない。クランと麻美の二人が魔法にかかってしまったようだ。

「なるほどな。巻き込まれたならしょうがないってことか!」

 そう言って、ナッシュは私達以外を狙うように攻撃を始めた。
 ヨウは先ほどより大きく守る盾をだしていた。

「ヨウ、これ以上したら、ヨウの命が」

 大きな魔法は代償を伴う。今使っている魔法は、ヨウにどれほどの代償があるのかわからない。

「ヨウ、ヨウ!」
「ボクはすずめを守る。約束しただろ?」

 ヨウは笑ってる。だけど、つらそうな顔だ。

「私、私は――」

 ヨウを守る。そうだ、私だって、約束した。
 私は、ヨウを守る。
 今まで動いていなかったテトが剣を握りしめこちらに向かってきた。何で? あなたは探していたんじゃないの? 弟を。ヨウを――。

「ダメ!!」
「すずめ!!」

 私はヨウの横に立ちふさがる。
 けれど、テトの剣は私を綺麗に避けてヨウのお腹にささった。

「……ッ、はっ……」

 ヨウの顔が痛みで歪む。すぐに剣を引きテトは構え直す。

「お願い! 止めて! テトさん。ヨウは、ヨウはあなたの探していた弟なんですよ!?」

 テトの瞳が揺らぐ。

「スズから聞きました。弟を探してるって」
「弟……」
「すずめ?」
「ヨウ、待ってて、今歌を」
「させるかよ!!」

 ナッシュが追撃してくる。それをリーンとイソラが魔法で相殺した。

「私は、こんなの望んでない。私はただ、歌で皆に幸せになって欲しいだけなのに……」

 お腹を押さえるヨウに私は手を添えた。

「私が魔王になれば、こんな争いはなくなる?」

 ヨウが私の手を握って、顔を横にふった。

「駄目だ。なったところで今度は人との争いだ。それに、魔王になったらすずめは」
「知ってる。だけど、はやくしないと」
「……すずめ、歌って」
「うん、ヨウの怪我治すね」

 私は、いつものように歌った。だけど何も起きない。

「あれ、何で?」

 また、前みたいに何も出来ない私になってしまったの?

「ヨウ、角に触っていい?」

 返事を待たずに私は急いで歌う。

「何で、何で?」

 何も起きてくれない自分に焦り狼狽うろたえる。

「今普通の女の子になんてなりたくないよ」

 それまで動かなかったズハリが動いた。

「約束の時がきた。人の世界からこちらにきた者よ」

 私の頬を涙が一滴流れ落ちた。
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