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三つの国
失って知る
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「あら、お久しぶりですね」
あの目が、私を見てくる。蛇に睨まれた蛙ってこういうのを言うんだろうな。身体が急に動かなくなる。
「やはり、あなたもでしたか」
フェレリーフは微笑みながら自分の角に手を添えた。
「私、昔からこういう人を見つけるの得意でしたの。それと、こういう人と仲良くすることも」
ヨウがそっと私の前に立つ。
「あら、あなたも、私の鳥籠から逃げた一羽? 見覚えがあるわ」
フェレリーフはふふっと笑むと、テトの横に近付きもたれ掛かった。
テトはそれを支えるように手を添える。
「私達が呼んだ人間まで角があるなんて、本当にもうこの世界は、もうツノナシの方がいなくなりつつあるのかしら。王族すらコレですものね」
フェレリーフは自分の首を指でなぞる。なぞった場所には先程ヨウの身体にあった紋様があった。
「人の方にまで印がでる者がで出したのは何かの始まりなのかもしれない」
ズハリが建物の中央に立ち、手を上げる。
「魔王の角が選んだ者が現れた」
ざわざわと声がする。
「これより、継承の儀式に入る。異議があるものは、その者を打ち倒し、己が継承者であると示せ」
ズハリは手を下ろし私とヨウの二人を指差す。
「我は手を出さぬ。だが、――」
たくさんの視線が私達にささる。また選別されるの?
今度は、私が引き下ろされる方?
「我の娘を取り戻す器かもしれぬ。命だけはとってくれるな」
ズハリが動いたとたん空気がかわる。
「オレはアイツも嫌いだったからな! 容赦なんてしないぜ」
ナッシュが飛び出してきた。目の前でぶつかる音がする。
「すずめはボクが守る。誰にも傷つけさせない。すずめのすべてを他人に渡すつもりはない」
ヨウが魔法で盾のような物を出現させた。それにナッシュがぶつかった音だった。
「ヨウ、私が歌うからその間に――」
「沈黙の風」
フェレリーフが魔法を唱える。
ヨウは急いで自分の口を閉じていたけれど、私は小さく吹いた風を飲み込んでしまった。
「――――――――(声がでない)」
声が出ないと魔法は使えない。どうしたらいいの?
「すずめ、ボクから絶対に離れないで」
ヨウは私達がちょうど入るくらいの球体の魔法盾を作った。
「何とか、ここから出ないと」
そう言っているけれど、他の魔人達も少しずつ動き出した。まるで腕試しでもするかのように次々と魔法で攻撃してくる。私は何も出来ないままヨウの後ろに隠れていることしか出来なかった。
「――――――――(お願い、はやく、声、戻って!)」
祈るように胸の前で手を握ると、頭が熱くなった。
ポロッポロッと角が二本、私の頭から落ちる。
『角は魔法を強くしてくれる』
どうして今なくなってしまうの?
落ちた角を急いで拾う。はえてきた時はどうなってしまうのかと思ったけれど、失って知る。私、魔法が使えないただの人間に戻ってしまったんだ。
このままじゃ、私、ヨウを守れない。
テトさんを連れて戻れない……。
ただの女の子……。
あの目が、私を見てくる。蛇に睨まれた蛙ってこういうのを言うんだろうな。身体が急に動かなくなる。
「やはり、あなたもでしたか」
フェレリーフは微笑みながら自分の角に手を添えた。
「私、昔からこういう人を見つけるの得意でしたの。それと、こういう人と仲良くすることも」
ヨウがそっと私の前に立つ。
「あら、あなたも、私の鳥籠から逃げた一羽? 見覚えがあるわ」
フェレリーフはふふっと笑むと、テトの横に近付きもたれ掛かった。
テトはそれを支えるように手を添える。
「私達が呼んだ人間まで角があるなんて、本当にもうこの世界は、もうツノナシの方がいなくなりつつあるのかしら。王族すらコレですものね」
フェレリーフは自分の首を指でなぞる。なぞった場所には先程ヨウの身体にあった紋様があった。
「人の方にまで印がでる者がで出したのは何かの始まりなのかもしれない」
ズハリが建物の中央に立ち、手を上げる。
「魔王の角が選んだ者が現れた」
ざわざわと声がする。
「これより、継承の儀式に入る。異議があるものは、その者を打ち倒し、己が継承者であると示せ」
ズハリは手を下ろし私とヨウの二人を指差す。
「我は手を出さぬ。だが、――」
たくさんの視線が私達にささる。また選別されるの?
今度は、私が引き下ろされる方?
「我の娘を取り戻す器かもしれぬ。命だけはとってくれるな」
ズハリが動いたとたん空気がかわる。
「オレはアイツも嫌いだったからな! 容赦なんてしないぜ」
ナッシュが飛び出してきた。目の前でぶつかる音がする。
「すずめはボクが守る。誰にも傷つけさせない。すずめのすべてを他人に渡すつもりはない」
ヨウが魔法で盾のような物を出現させた。それにナッシュがぶつかった音だった。
「ヨウ、私が歌うからその間に――」
「沈黙の風」
フェレリーフが魔法を唱える。
ヨウは急いで自分の口を閉じていたけれど、私は小さく吹いた風を飲み込んでしまった。
「――――――――(声がでない)」
声が出ないと魔法は使えない。どうしたらいいの?
「すずめ、ボクから絶対に離れないで」
ヨウは私達がちょうど入るくらいの球体の魔法盾を作った。
「何とか、ここから出ないと」
そう言っているけれど、他の魔人達も少しずつ動き出した。まるで腕試しでもするかのように次々と魔法で攻撃してくる。私は何も出来ないままヨウの後ろに隠れていることしか出来なかった。
「――――――――(お願い、はやく、声、戻って!)」
祈るように胸の前で手を握ると、頭が熱くなった。
ポロッポロッと角が二本、私の頭から落ちる。
『角は魔法を強くしてくれる』
どうして今なくなってしまうの?
落ちた角を急いで拾う。はえてきた時はどうなってしまうのかと思ったけれど、失って知る。私、魔法が使えないただの人間に戻ってしまったんだ。
このままじゃ、私、ヨウを守れない。
テトさんを連れて戻れない……。
ただの女の子……。
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