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三つの国

すずの気持ち

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「良かった」

 目の前で歌ってあげるとすぐにわかるほどの回復を見せてくれた。

「ありがとうございます。ありがとうございます」

 子どもを抱き締める夫婦。一人は刺青タトゥーが入っているのが見えた。旦那さんがイソラの親戚なんだろうか。

「ありがとうございます」

 五歳くらいの子どもが丁寧にお礼をのべる。

「良かったですわ。それではもう一度確認します。もう二度と会えないかもしれません。それでも向こうに連れていきますか?」
「……はい」
「こんなことが続くなら、…………お願いします」

 母親も父親も唇を噛み締めながら話している。今回の戦いで何人が犠牲になっただろう。もう私達にはわからない。あの日からずっと人と人、人と魔人三つの国は戦っている。自分達の国をまもらなきゃいけないことはわかるけれど、見えない場所でもたくさんの犠牲が出ているかもしれない。

「止められないのかな」

 私はヨウに聞く。

「無理だと思う。――魔王が決まるまで。じゃないとこちらが潰されるから」

 ヨウはそう言うと、私の手をとった。

スズ・・が魔王になるはずだった。候補者の中で一番強かったからね。アイツがいなければ、捕まることもなかったのに。スズならきっと今頃魔王になってただろうな」
「あ、ごめんなさい。私が――」

 ふるふると首をふるとヨウは手を離した。

「スズは自分のしたいようにしてたから、それに……そう。あのままだったらボク達は二人とも死んでたから。どこかで生きてるんだよね。スズは」

 私の代わりに地球にいるんだよね。たぶんだけど。
 もしかして私が来たことでこの戦いが長引いてるのかな。

「スズ、あなたはあなただと言っているでしょう。魔王が決まるまで時間がかかるならまだたくさん歌を歌っていただかないといけませんわ」
「イソラ、そうだね。私がやらないと」

 いったいいつ魔王は決まるんだろう。聞いたら教えてくれるのかな。
 そういえばヨウも候補者だって言ってた。でも、ヨウは刺青がない。見えないところにあったりするのかな? それとも純粋な魔人でなくても候補者になれるのかな。いったいどういう風に決まるんだろう。

「さあ、行きますわよ。ルストンに戻りましょう。長居していては……」
「え、でも、まだテトの情報が何も」

 次にこちら側にこられるのはいつかわからないのにいいのだろうか。そう思って尋ねると、イソラは力なく首をふる。

「まずは彼の安全からです」
「そっか、そうだね……」

 はやく会いたい。その気持ちが強くなる。私の気持ちがふわふわしてる状態でヨウに答えたくないから。
 この気持ち、会ったら答えがでるのかな。
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