歌うすずめとクロツノ魔王

花月夜れん

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三つの国

白い角

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「もう、毎日こんなに遊ばれたら私体が持たないよ」
「ごめん、でも似合ってるよ。すず」
「そうですわ。きりっとした感じにしあげましたがよく似合ってます。かなり印象が違います」

 イソラは逆にほわっとしたお姉さん風に変装してて、ヨウなんて……、女の子の格好をしてる。魔法だってわかってるけどすごい違和感。

「ボクそんなに変かな?」

 じーっと見てるとヨウがとぼけたように笑う。

「可愛すぎてなんとも言えない」
「あはは、でもすずの可愛さには負けるけど」

 なんて言うものだから、私はふぅとため息を吐いた。
 夜はもうすぐだ。

 ◇

「ここからは魔人の国」

 無事国境にきた私達はおそるおそるその上をいく。
 ヨウはいつも通りと歩いているけれど。

「もうこれはいいよね」

 と、魔法をといていつものヨウの姿に戻る。

「私達も」

 イソラは角を出した。セレは魔法の指輪で変身する。

「ヨウ、私のも

 ヨウに目配せするとすぐに解除の言葉を口にした。
 そして私の頭には真っ白な角が姿を見せた。

「うーん、やっぱり違和感がすごい」

 自分の頭に角がはえるなんて、びっくりもびっくりだった。
 ナグカルカに戻って三日ほどたった日だった。突然頭からにょきっと姿を見せたこれにとても慌てた。

「すず、慌てないで」
「すぐに慣れます」

 ヨウもイソラももとからはえてたから驚かないだろうけど、私の知ってる人間に角なんてないから驚くなっていうほうが無理だと思う。

「これは研究しがいがありそうな事例ですわねー」
「なんて言ってる場合じゃないよ! 私どうなっちゃうの?」
「大丈夫、何かが変わるということはないとおもいますわ。それにしても」
「な、なに?」
「お揃いですわー」

 がくっとなる。確かにイソラと同じ白い角だけど。

「そこ?」

 緊張感のない会話に私は少しほっと出来た。はえたのがシェア部屋で良かった。

「私、ヨウみたいに魔法で消すなんて出来ないんだけど」
「普段はボクが魔法で隠してあげるよ」
「本当?」
「見てて可愛いけどね」

 そう言いながら私の角に触れてキスしていた。

「ちょっと、ヨウ……」

 びっくりするくらい角にさわられると敏感に伝わってきた。もしかして、ヨウの角に私が触ってる時もこんな感じだったのだろうか。
 気恥ずかしくて、ヨウには聞けない。

「すず、私も触っていいですか」

 イソラがうしろで待ってる。
 ごめんね、無理です!!

 なんて事があった。今はだいぶ慣れてきたけど、やっぱり違和感はそのままある。
 なんで私の頭に角なんてはえてきたんだろう。
 その答えはこのあと魔人達の国で知ることが出来た。
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