歌うすずめとクロツノ魔王

魔法の学園

私の気持ち(結愛視点)

「アイドルなんてやめなさい」

　両親からそう言われてずっと悩んでいた。
　三人で一緒に一番になろうと約束したのに、私だけやめてもいいのかなって、ずっと――。

「すず、アイドルやめてくれる？」

　リーダーのあみちゃんがすずちゃんにそう言った時、私はチャンスだと思った。すずちゃんがやめるなら私も一緒にやめるって言えると思った。けれど――。

「結愛は残って」

　あみちゃんの出した結論は私を引き留める物だった。

　◇

「ごめんね、私男の子と付き合っちゃダメだから」

　中学三年生になった時、好きだった人から告白された。なのに、私は無感情に彼の告白を断った。だって、三人の約束があったから。その為には、恋をしてはいけないという制約がついてくる。

「ゴメン、そうだよね。応援してる」

　半年後、彼の横には可愛い彼女がいた。

　◇

　まだ続けないといけないの？
　すずちゃんだけ抜けるのに？
　私は……、私はもう、ただの女の子になりたい。
　恋を自由に出来る、ただの女の子に。

　この世界に来て、私はアイドルじゃなくなった。だから、もういいよね？
　ここにはやめろと言って悩ませる両親も恋をしてはいけないアイドルという立場もない。
　だから、私はあなたの事を好きになりたい。

　ただ、これは私の気持ちなのかな。
　少し不安に思いながら私は偉そうにするけど、なんだか気にかけてくれる彼を見た。

「結愛、怪我が治ったかもしれない」
「え？」

　彼が痛みがなくなったと言って傷を見せようとする。急いで私は服を上げようとする彼の手をとめた。

「私、また歌っていいのかな」

　すずちゃんが一緒に歌おうって言ってくれたら少し迷いが吹っ切れた気がする。

「クランさん、良かった」

　目指すものはちがうだろうけれど一番になりたいって同じ思いをもってる彼が怪我で夢を諦めなくてすむなら、私は聖女でいたい。
　テトには悪いと思うけど、私、帰ったらこの気持ち伝えようと思う。