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魔法の学園

スズとすず(ヨウ視点)

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 すずが二人いる。その事はなんとなくわかりだしていた。
 ボクの中にいるスズと目の前にいるすず。違うのに、同じ人物として認識してしまう。
 だけど、どちらのすずも大切な人であることは間違いないんだ。だって、すずも、スズもボクの命を救ってくれたから。

 ◆

「あなた、迷子なの?」

 フラフラする視線を上にあげると、真っ黒な髪に白い角を生やした女の子が立っていた。

「ボク、ここで待ってるようにって言われたんだ」

 言われてから3日たっている。お腹もすいて、喉もかわいて、何も考えられない。言われたことだけをずっとずっと守って大きな木のうろに座り込んでいた。
 のどが渇いたら飲むんだよと言って置いていってくれた水袋も空になっていた。

「まだ、待っておくの?」
「ボク……」

 暗くて怖くて、もうここには居たくなかった。だから、ここから連れていってくれるなら、連れていって欲しい。
 そう言う前に女の子はさっと消えてしまった。

「……うぁぁぁ」

 泣きたいのに涙が出ない。ただ、声にならない声が出た。

「名前、何て言うの?」

 大きな鼠の顔が上から覗き込んできた。

「……ぁ……」
「名前!」
「ボク名前……は、……」
「……ロウでいい?」
「え、あの」
「行くよ、ロウ。私はスズって呼んでね」

 茶色い鼠の背にはさっきの女の子がとても眩しい笑顔を浮かべて乗っていた。

 ◆

「父さん、今日からうちの子だから! いい!? うちの子よ」

 大きくて怖い顔の男が近づいてくる。

「お前またあそこまで行っていたのか。あのあたりは人がくるから危ないと言っているだろう」
「見回りよ、見回り。だって、捨てられた子達がいるかもしれないじゃない。この子みたいに」
「まったく……、黒い角か。珍しいの。しかし、この年になるまで育てたのに……」
「……あの」
「がわぃそうにのぉぉぉぉぉ」

 男が急に泣き出したかと思えば、がしりと抱き締めあげられ苦しかったけど、すごく温かかった。スズも一緒にぎゅっとくっついてくれてたっけ。

「我は忙しいから面倒はお前がみることになるが大丈夫か?」
「もちろん。ちびっこ達で慣れてるもん。父さんは父さんの仕事頑張ってよね。大切な事なんだから。母さんだって」
「お前も小さいのに」
「私はもう大人よ! だから心配しないで」

 ボクと全然変わらない身長の女の子は胸をはってそう言っていた。それをみた男は怖いながらも優しそうな顔になってスズの頭を撫でていた。

 ◆

 大きくなって、スズにボクの事を弟ではなく、男としてみて欲しいと思いだした。だけど、一緒に育ったボクとスズはお互い姉弟みたいだって感情があって、それが大きな壁になったんだ。
 そんな時に、スズはあの男に出会ってしまったんだ。
 あの場所で。

 ◆

「魔人……?」

 ボクと同じ赤い髪の『人』の男が倒れたすずを見下ろしながら呟いた。
 森の中、見回りしている時に凶暴な魔物がいて戦ったスズが怪我をした。
 ボクがその場に着いた時にはその男がスズの横にいたんだ。

『みだりに人と争ってはいけない』

 ふと思い出したのは父さんとの約束だった。
 けれどボクはスズが殺されるくらいならと、小さな短剣を手にした。赤い髪の男はスズを抱き上げて、大きなうろがあるあの木のところに寝かせて、血止めや手当てをしだした。
 ボクは訳がわからなくて、その様子をじっと見ているだけだった。

 ◆

 あの時、手当てしたのがアイツでなくボクだったら違った関係になっていたのかな。
 いや、きっと今でも変わらない。姉弟だっただろう。ボクはもう諦めていた。スズはスズで幸せになって欲しいなって思いながら――。

 スズ、君はあの時どんな気持ちだったのかな。すずに聞いてもわからないんだよな。でもこれだけは決めたんだ。

 ボクがに助けられた日。暗闇でさ迷ってたボクには彼女が眩しくてどうしても手に入れたい光に見えたんだ。
 この気持ちは二回目の、そして今度はもう絶対に諦めないと――。
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