歌うすずめとクロツノ魔王

花月夜れん

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魔法の学園

三人一緒に

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 目の前で涙を流す麻美の姿が、あの日の自分を思い起こす。
 これが私を引っ張ってくれた麻美?
 信じられないくらいに弱気で、自信をなくしていた。

「あみちゃん、大丈夫だよ。行こう、一緒に」

 結愛が説得するけれど、首をふっていた。結愛の後ろのクランも困った顔をしている。

「私はすずと一緒にいられない……。だって、すずをいらないって言ったから。一人になって、歌って、気がついてしまったの。すずの声が助けてくれていた。三人で歌わないと私の歌は――」

 どくんと心臓がなる。私は麻美に歌うのをやめろと言われたんだ。だけどやっぱり、私は歌うのをやめたくない。それに、二人の歌が大好きなんだ。

『皆で一番になろう!!』

 私達の合言葉。麻美、結愛、そして私の。

「鈴芽君、どうしますか?」
「…………」

 私が決める事だとリーンが促してきた。私はぎゅっと手を握り麻美と結愛のもとに行く。

「あみちゃん、一緒に行こう。皆で一番になろう?」
「……すず」
「あみちゃんの歌、もう一度私に支えさせて。向こうでは、後ろ向きになって迷惑かけちゃった。ごめんね。私、二人の歌、大好きなの。だから、歌って、あみちゃん、ゆあちゃん。そして、一緒に歌わせて欲しい」

 ◇

 帰り道、空の上に私達はいる。今度は麻美も一緒に。

「ねぇ、三人で歌おうよ。怪我した人もいたんでしょう?」
「え、でも……」
「歌おう、あみちゃん、一緒に。ゆあも歌いたい」

 私達は手を繋ぎ、歌い出した。大好きな私達の歌を。
 初めてのステージで見た光のように輝く、眩しい光が空いっぱいに広がって、ファイスヴェードを包み込んでいく。

「これは……」
「きれいですわー」

 イソラがほうとため息をつく。リーンはイソラの様子にふふっと笑っていた。

「あ、クナ達」

 きた時の馬で引き返すクナが小さく見えた。

「なぁ、テト様はどうするんだ?」

 クランが呟く。
 あの中を見返してもどこにもテトの姿が見当たらなかったからだ。
 探したいと言ったけれど、リーンがここにはいないとはっきりと言ったので諦めた。なんとなくわかっている。だって、確かに聞こえたんだ。黒い角のもう一人の魔人があの人だって私の中の誰かが言ったのを――。

「少し荒療治になりますが、考えはあります」

 リーンはそう言ったあと、拍手をしだした。

「素敵な歌でした。さて、三人全員ナグカルカに連れてきてしまったから、いろいろ大変ですよ。鈴芽君」
「え、私?」
「だって、決めたのは鈴芽君だろう?」

 すごくいい笑顔でリーンは言った。

「始まります。三国の戦いが――――」
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