47 / 82
魔法の学園
娘と父
しおりを挟む
「我が娘ではないな」
着いた先で黒髪の白い角を持つ男から投げかけられたのはそんな言葉だった。
「だがロウはそこにいるではないか」
静かだけど威圧感がするその魔人はヨウへと視線を向けた。
「スズはどこに行った? この場所を探したが見当たらなかったぞ」
そうヨウに問いかける。
「――すずは……」
ヨウが話そうとした時、リーンが前に出た。彼女の頬には冷や汗が流れていた。
「私達はここにいた者達の――、仲間を救う目的で参りました。テト様はどこに」
「ロウ、スズはどこだ?」
男は取り合うつもりはないようだ。
「すずはここにいる。ほら、父さん。よく見て」
私の前に立ちながらヨウが答えると、魔人は目を閉じた。
「そうか、連れていかれてしまったのか。愚かな娘だ。こちら側にいたからだろうな。しかたあるまい。興味を持つなと言っておいたのを聞かなかったのはスズだからな――」
「あの、テトさんは、無事なんですか?」
この前見た魔人のように怖い感じがなくて、私は聞いてみた。
「スズ――。お前はまた、……戻ろう、我の記憶まで改ざんしようとするか、――――神を名乗る者は」
「待って下さい! テトさんは」
「ここにいた人間は生きているならすべて牢の中に自分から入っている」
魔人は冷たく言い放つ。まるで私から遠ざかろうとするかのように。
「我は続きをするだけだ。欠けた駒は拾ったからな。行くぞ、ジョーカー出ろ!」
大きな窓の外に奇妙な獣が現れる。
「ロウ、お前は戻らないのか?」
振り返りヨウに話しかける魔人の目は優しい。
「ボクは戻れません。すずがここにいると言っているから」
「その気持ちは神が植え付けた偽の記憶のせいであってもか?」
ヨウが首をふり私の顔を見た。彼の切なそうな顔を見ると、悲しくなってしまう。ヨウが見てるのは私じゃないすず。
「すずはすずだから」
「……子を捨てる国だというのに」
そこまで言うと、魔人は獣の上に乗った。
「娘は我が取り戻す。魔王選定の時は近い。いくぞ」
「はい」
窓の外にもう一人、ヨウみたいな黒色の角の魔人がいた。
赤い、テトみたいな髪色の男の人だった。でも瞳の色が違う。緋色の目が真っ黒に染まっていた。それに角もある……。
けれど、ドキンと心臓がなる。あれは、あの人だと誰かが言っている気がした。
「今度のヤツの選んだ娘は失敗のようだな。恐ろしい力をまったく感じない。我らの領土、大きく増やさせてもらうぞ」
ヒーーンと馬のいななきに似た声をあげ大きな翼で獣は飛び立った。
「なんだ、アイツ」
「怖くて何も出来なかった……」
クランと結愛がハァハァと必死に息をしていた。
リーンとイソラはこくりと頷きあい、動き出した。
「ヨウ、すず、申し訳ないのですが、牢の場所はわかりますか?」
「ボクが覚えてる」
「教えてもらえますか?」
「……わかった」
「鈴芽君はここにいるかい?」
「大丈夫です。テトさんの無事を確認しないと」
二人は私が捕まっていたことを知ってるから、気を使ってくれているんだろう。だけど、いまはあの時みたいな何の力もない私じゃない。麻美と向き合える自信を皆からもらった。
「ヨウ、もし怪我をしてる人がいたら、お願い」
「なんで、すずがそんなこと」
「お願い」
「……わかった」
麻美も結愛も出来ないなら、私がしないと。だって、私達、三人で『SAY』なんだ。あの日、誓った。三人で一番になろうって――。それに私、麻美の歌も、結愛の歌も、大好きなんだ。だから三人でもう一度戻りたい。あの光の中に――。
着いた先で黒髪の白い角を持つ男から投げかけられたのはそんな言葉だった。
「だがロウはそこにいるではないか」
静かだけど威圧感がするその魔人はヨウへと視線を向けた。
「スズはどこに行った? この場所を探したが見当たらなかったぞ」
そうヨウに問いかける。
「――すずは……」
ヨウが話そうとした時、リーンが前に出た。彼女の頬には冷や汗が流れていた。
「私達はここにいた者達の――、仲間を救う目的で参りました。テト様はどこに」
「ロウ、スズはどこだ?」
男は取り合うつもりはないようだ。
「すずはここにいる。ほら、父さん。よく見て」
私の前に立ちながらヨウが答えると、魔人は目を閉じた。
「そうか、連れていかれてしまったのか。愚かな娘だ。こちら側にいたからだろうな。しかたあるまい。興味を持つなと言っておいたのを聞かなかったのはスズだからな――」
「あの、テトさんは、無事なんですか?」
この前見た魔人のように怖い感じがなくて、私は聞いてみた。
「スズ――。お前はまた、……戻ろう、我の記憶まで改ざんしようとするか、――――神を名乗る者は」
「待って下さい! テトさんは」
「ここにいた人間は生きているならすべて牢の中に自分から入っている」
魔人は冷たく言い放つ。まるで私から遠ざかろうとするかのように。
「我は続きをするだけだ。欠けた駒は拾ったからな。行くぞ、ジョーカー出ろ!」
大きな窓の外に奇妙な獣が現れる。
「ロウ、お前は戻らないのか?」
振り返りヨウに話しかける魔人の目は優しい。
「ボクは戻れません。すずがここにいると言っているから」
「その気持ちは神が植え付けた偽の記憶のせいであってもか?」
ヨウが首をふり私の顔を見た。彼の切なそうな顔を見ると、悲しくなってしまう。ヨウが見てるのは私じゃないすず。
「すずはすずだから」
「……子を捨てる国だというのに」
そこまで言うと、魔人は獣の上に乗った。
「娘は我が取り戻す。魔王選定の時は近い。いくぞ」
「はい」
窓の外にもう一人、ヨウみたいな黒色の角の魔人がいた。
赤い、テトみたいな髪色の男の人だった。でも瞳の色が違う。緋色の目が真っ黒に染まっていた。それに角もある……。
けれど、ドキンと心臓がなる。あれは、あの人だと誰かが言っている気がした。
「今度のヤツの選んだ娘は失敗のようだな。恐ろしい力をまったく感じない。我らの領土、大きく増やさせてもらうぞ」
ヒーーンと馬のいななきに似た声をあげ大きな翼で獣は飛び立った。
「なんだ、アイツ」
「怖くて何も出来なかった……」
クランと結愛がハァハァと必死に息をしていた。
リーンとイソラはこくりと頷きあい、動き出した。
「ヨウ、すず、申し訳ないのですが、牢の場所はわかりますか?」
「ボクが覚えてる」
「教えてもらえますか?」
「……わかった」
「鈴芽君はここにいるかい?」
「大丈夫です。テトさんの無事を確認しないと」
二人は私が捕まっていたことを知ってるから、気を使ってくれているんだろう。だけど、いまはあの時みたいな何の力もない私じゃない。麻美と向き合える自信を皆からもらった。
「ヨウ、もし怪我をしてる人がいたら、お願い」
「なんで、すずがそんなこと」
「お願い」
「……わかった」
麻美も結愛も出来ないなら、私がしないと。だって、私達、三人で『SAY』なんだ。あの日、誓った。三人で一番になろうって――。それに私、麻美の歌も、結愛の歌も、大好きなんだ。だから三人でもう一度戻りたい。あの光の中に――。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる