45 / 82
魔法の学園
ファイスヴェードに向かう
しおりを挟む
「リーンさん、付き合ってもらって良かったんですか? というか、勝手に出てきても良かったのでしょうか……?」
「あぁ、イソラの友達が行くんだ。それに、テト君がいなくなると色々大変なことが起きるからね」
イソラと同じ猛禽類みたいな眷属獣だけど、大きさが段違いに大きい。大きな籠に私達をいれて飛んで行く。
眷属獣もまた使いすぎると、精神がすり減るので連続で使い続けると良くないそうだ。クランは学園まで飛び続けたせいか、シュバルツが出てこれなくなっていた。
結愛の眷属獣はまだ不安定だろうからと、リーンが全員乗せている。
私、ヨウ、イソラ、クラン、結愛、リーンの五人。
「学園はカイ君に頑張ってもらうから。目覚めの特製ドリンク十日分置いてきたし、上が動くのは時間がかかるだろうからね」
細い目で彼女は笑う。
「結愛は置いてきたほうが良かったんじゃねーのか?」
クランがぶっきらぼうに言う。その言葉に結愛がびくりと震えた。
「私……」
「クラさん!!」
私はクラブを呼び出し頭の上にセットすると、クランが後ずさった。
「ゆあちゃんが行くって言ったんだから、一緒に行く。私は、――――違うんだから」
「すずちゃん」
あの時のように、手をぎゅっと繋ぐ。結愛の手は温かい。
「ありがとう、すずちゃん」
一人になる不安は痛いほどわかる。一人残していく不安も……。
「そうだね。結愛君をあちらに残すと私も動きづらかったからちょうど良かった」
リーンはそう言って、クランの肩に手を置いていた。
「クラン君、心配なら君が結愛君を守ればいいだろう?」
リーンがクランの耳元でそう言っていたのが聞こえてきた。
◇
「あぁ、学園のと同じだね」
黒い何かにリーンが触れるか触れないか、手を添えた。
「かなりの術者がいるのかもしれない」
リーンは表情を変えないけれど、声が少しだけ焦っているように聞こえた。
「ここを通ると相手に伝わる。そっと侵入して連れ帰るだけとはいかないかもしれない。いいかな?」
私はこくりと頷くと、他の人の反応を見た。皆頷いている。
「では、行きましょう。もし危険だと判断したら、ヨウ君はスズメ君を、クラン君は結愛君をお願いします。私とイソラは自身でなんとかしますから」
そうして、皆で黒い何かをすり抜ける。ちょうどここは、私がヨウと街の外に出た場所だった。
また戻ってきたんだと気がついて、腕が少しだけ震えた。
「すず、大丈夫。ボクが守るから、心配しないで」
ヨウが背中をぽんと押してくれた。
「あぁ、イソラの友達が行くんだ。それに、テト君がいなくなると色々大変なことが起きるからね」
イソラと同じ猛禽類みたいな眷属獣だけど、大きさが段違いに大きい。大きな籠に私達をいれて飛んで行く。
眷属獣もまた使いすぎると、精神がすり減るので連続で使い続けると良くないそうだ。クランは学園まで飛び続けたせいか、シュバルツが出てこれなくなっていた。
結愛の眷属獣はまだ不安定だろうからと、リーンが全員乗せている。
私、ヨウ、イソラ、クラン、結愛、リーンの五人。
「学園はカイ君に頑張ってもらうから。目覚めの特製ドリンク十日分置いてきたし、上が動くのは時間がかかるだろうからね」
細い目で彼女は笑う。
「結愛は置いてきたほうが良かったんじゃねーのか?」
クランがぶっきらぼうに言う。その言葉に結愛がびくりと震えた。
「私……」
「クラさん!!」
私はクラブを呼び出し頭の上にセットすると、クランが後ずさった。
「ゆあちゃんが行くって言ったんだから、一緒に行く。私は、――――違うんだから」
「すずちゃん」
あの時のように、手をぎゅっと繋ぐ。結愛の手は温かい。
「ありがとう、すずちゃん」
一人になる不安は痛いほどわかる。一人残していく不安も……。
「そうだね。結愛君をあちらに残すと私も動きづらかったからちょうど良かった」
リーンはそう言って、クランの肩に手を置いていた。
「クラン君、心配なら君が結愛君を守ればいいだろう?」
リーンがクランの耳元でそう言っていたのが聞こえてきた。
◇
「あぁ、学園のと同じだね」
黒い何かにリーンが触れるか触れないか、手を添えた。
「かなりの術者がいるのかもしれない」
リーンは表情を変えないけれど、声が少しだけ焦っているように聞こえた。
「ここを通ると相手に伝わる。そっと侵入して連れ帰るだけとはいかないかもしれない。いいかな?」
私はこくりと頷くと、他の人の反応を見た。皆頷いている。
「では、行きましょう。もし危険だと判断したら、ヨウ君はスズメ君を、クラン君は結愛君をお願いします。私とイソラは自身でなんとかしますから」
そうして、皆で黒い何かをすり抜ける。ちょうどここは、私がヨウと街の外に出た場所だった。
また戻ってきたんだと気がついて、腕が少しだけ震えた。
「すず、大丈夫。ボクが守るから、心配しないで」
ヨウが背中をぽんと押してくれた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった
月
恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。
そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。
ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。
夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。
四話構成です。
※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです!
お気に入り登録していただけると嬉しいです。
暇つぶしにでもなれば……!
思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。
一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
第一王女アンナは恋人に捨てられて
岡暁舟
恋愛
第一王女アンナは自分を救ってくれたロビンソンに恋をしたが、ロビンソンの幼馴染であるメリーにロビンソンを奪われてしまった。アンナのその後を描いてみます。「愛しているのは王女でなくて幼馴染」のサイドストーリーです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる