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魔法の学園

依頼者

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 一週間後の休日。また、私達はあの場所に向かった。

「いないって」

 ヨウが偵察から帰ってきたダイヤを撫でながら言った。このあたりにまた出ていないかどうか探してもらっていた。

「聞いた通りですわね。この辺ではもう見かけていないと」
「でもまだ依頼が出たままなんだよね?」
「えぇ」

 依頼者の家から離れた場所から様子を見ていた。

「その代わりじゃあないけど、黒い影が走ってたって」
「え?」
「それかしら」
「追うか?」

 三人で辿ってみると街の外に出た。
 進む先には見張り用だろうか? 背の高い建物がぽつんと建っている。

「怪しいね」
「けれど、私達には手におえない可能性もあります」
「様子だけ見ていくとかできないの? ヨウ」

 いつもの魔法で隠してくれればいいのではと思ってヨウに提案する。

「見るだけなら、そうですね。行ってみますか」

 イソラも頷いたのでヨウは微妙な顔をしながらも魔法をかけた。
 使われなくなってそれなりの時間がたっているのだろう。草が生え、あちこちにヒビも入っていた。

「子どもを返してくれ」

 懇願する声がした。震える涙声だ。

「さて、どうするか。オレは異世界女を連れてこいって言っただろう。あの日、歌った女だ」
「だから、ワタシは何も知らないんだ。困っていたから依頼を出しただけなんだ」

 イソラがそっと手を前に出して戻る合図をする。けれど、こんな話を聞いて、黙って帰っていいのだろうか。子どもの命がかかっているかもしれない。
 ヨウが手を引っ張る。私は後ろに一歩足をついた。

 パキリ

 小さな音が響いた。

場を明らかにしろサイトフラッシュ

 オレと言っていた男が、呪文を唱える。

「大きなネズミが三匹か」
「あ、あの女です、二回目の依頼にきた女」
「そうか、釣れたか」

 しゃがみこんでいた男が私達を指差す。青い髪の男がニヤリと笑い立ち上がった。

「なんだぁ? 一人見覚えがあるな。あぁ、ネズミじゃなくて寄生虫だな」

 クックッと笑うと男はヨウを指差していた。男の頭には青い角がはえていた。

「なんでここにいるんだ? 寄生先が変わったのか? 人間に?」
「魔人、ここで何をしているの!」

 イソラが私達の前に立つ。

「あぁ、威勢のいい女だ。コイツが逃げ帰ったのはお前のせいか。それじゃあ、最後の一匹がもしかして」

 じろじろとイソラ越しに私を見る青い角の魔人。

「よし、二人とも持って帰ってみるか」
「なっ」
「おい、お前も手伝え」

 しゃがみこんだ男はこちらを向いて立ち上がった。顔や手に傷があった。

「すずに手を出すな」

 ヨウもイソラの横に立った。青い角の魔人の耳がぴくりと動いた。

「攻撃魔法が使えないお前は後ろでびくびくしてりゃぁ見逃してやるものを」

 魔人はそう言うと、一瞬でイソラの前に近づいた。

風の刃ウィンドカッター
魔法増幅マジックアッパー

 イソラとヨウが同時に口にする。魔人はさっと姿を消して私の後ろに回った。

「オレの速さ、忘れたのか」
「きゃぁっ」

 髪を掴まれ後ろに、ぎりと引っ張られた。

「「すず!」」
「おっと、動くなよ。オレは連れてこいとしか言われてないんだ。傷つけるなとは言われてないぜ」

 私は掴まれた髪をちらりと見上げて、小さく呟いた。

風の刃ウィンドカッター

 掴まれている髪を自分で切り落とし、走り出す。

「すず!」

 ヨウが駆け寄ってきて受け止めてくれた。
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