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魔法の学園
すずと一緒に
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「おはよう、すずー」
「おはよう、ヨウ」
ドアをあけると、ヨウが番犬のようにそこにいた。
「おはようございます、です」
セレが呆れた様に笑いながら、朝の用意をはじめてくれる。
「おはよう、すず。よく眠れた?」
「とっても」
イソラはもういつでも登校出来ますという感じで、優雅に朝の紅茶を飲んでいた。
異世界といっても、食べ物や生活なんかはあまり違わないみたいで良かったと思う。
まあ、材料を見たわけではないので、実際何を食べたり飲んだりしてるのかはわかっていないけれど。見なければ、それまでは、ただの食べ物と認識できるよね。これで、いわゆる下手物だったり、なんて考えるだけ無駄な時間だ。だって、美味しいのだから。
「鈴芽様、こちらにです!」
用意が終わったのをセレが教えてくれる。テーブルに朝ごはんが並んでいる。
「ありがとう、セレ。セレはもう食べてしまったの?」
「はいです! なので、これは鈴芽様とヨウ様の分です!」
隣に並んで朝ごはん。昨日は猫ばっかりだったから、ヨウの顔をゆっくり見るのは久しぶりな気がする。
なんだか、考え事をしていそうな感じだ。何故だろう、ヨウの事、私全然知らないのに、知ってる。この顔が考え事してる時のヨウの顔だって……。
「ヨウ? 何か考え事?」
私が聞くと、ヨウはびっくりした顔でこちらを見た後、イソラの方に顔を向けた。
「おい、女」
ヨウがそう言ったが、イソラは反応を返さずに紅茶を飲む。
「ヨウ、名前覚えてないの? 女じゃあ、ここにいる人三人とも――」
「イソラ」
「あら、私あなたには呼び捨てを許可してなくてよ?」
「うー」
「ヨウ」
「わかった、イソラ様……」
ぷぷっとイソラが吹き出して、いそいで口元を隠していた。
「はぁ、イソラでいいですわ。それで私に何か?」
「昨日のアイツに会えば、ボクも人の姿ですずの側にいられるか?」
「え?」
予想外の言葉に私は驚きの声をあげた。
「ボクは動物じゃなくて、人としてすずの側にいたい」
「……それは、私の様に人の姿に変わりたいと」
こくんとヨウが頷くと、イソラは少し考えながらも私の顔を見てから、ふっと笑って言った。
「なら、早めに出ましょう。夕方以降は忙しい人ですから」
よしっと小さくガッツポーズをするヨウは、急いで食べ物を口に運ぶ。
そして、私はヨウに急げと急かされてごはんも紅茶もゆっくり味わうことが出来なかった。
セレにいってらっしゃいですーと言われながら、私達は学園に向かった。
ヨウはもちろん、猫の姿だけど――。
「学園長」
「うん? どうした、イソラ君。というか、昨日からもー、一般生徒らしくしててくれないかなぁ」
「クロツノ君が用事だそうです」
「ほう?」
白角イソラと似た顔が立ち上がってこちらに近づいてくる。
「何用かな? クロツノ君」
ヨウは少し表情をひきつりながらも、リーンに頼み込んだ。
「ボクもすずと一緒に人の姿で――」
たぶん、そう言うつもりだったのがろうけれど、彼から出た声は、ナァンという低めの猫の鳴き声だった。
変身、そういえばといてなかった……。
「おはよう、ヨウ」
ドアをあけると、ヨウが番犬のようにそこにいた。
「おはようございます、です」
セレが呆れた様に笑いながら、朝の用意をはじめてくれる。
「おはよう、すず。よく眠れた?」
「とっても」
イソラはもういつでも登校出来ますという感じで、優雅に朝の紅茶を飲んでいた。
異世界といっても、食べ物や生活なんかはあまり違わないみたいで良かったと思う。
まあ、材料を見たわけではないので、実際何を食べたり飲んだりしてるのかはわかっていないけれど。見なければ、それまでは、ただの食べ物と認識できるよね。これで、いわゆる下手物だったり、なんて考えるだけ無駄な時間だ。だって、美味しいのだから。
「鈴芽様、こちらにです!」
用意が終わったのをセレが教えてくれる。テーブルに朝ごはんが並んでいる。
「ありがとう、セレ。セレはもう食べてしまったの?」
「はいです! なので、これは鈴芽様とヨウ様の分です!」
隣に並んで朝ごはん。昨日は猫ばっかりだったから、ヨウの顔をゆっくり見るのは久しぶりな気がする。
なんだか、考え事をしていそうな感じだ。何故だろう、ヨウの事、私全然知らないのに、知ってる。この顔が考え事してる時のヨウの顔だって……。
「ヨウ? 何か考え事?」
私が聞くと、ヨウはびっくりした顔でこちらを見た後、イソラの方に顔を向けた。
「おい、女」
ヨウがそう言ったが、イソラは反応を返さずに紅茶を飲む。
「ヨウ、名前覚えてないの? 女じゃあ、ここにいる人三人とも――」
「イソラ」
「あら、私あなたには呼び捨てを許可してなくてよ?」
「うー」
「ヨウ」
「わかった、イソラ様……」
ぷぷっとイソラが吹き出して、いそいで口元を隠していた。
「はぁ、イソラでいいですわ。それで私に何か?」
「昨日のアイツに会えば、ボクも人の姿ですずの側にいられるか?」
「え?」
予想外の言葉に私は驚きの声をあげた。
「ボクは動物じゃなくて、人としてすずの側にいたい」
「……それは、私の様に人の姿に変わりたいと」
こくんとヨウが頷くと、イソラは少し考えながらも私の顔を見てから、ふっと笑って言った。
「なら、早めに出ましょう。夕方以降は忙しい人ですから」
よしっと小さくガッツポーズをするヨウは、急いで食べ物を口に運ぶ。
そして、私はヨウに急げと急かされてごはんも紅茶もゆっくり味わうことが出来なかった。
セレにいってらっしゃいですーと言われながら、私達は学園に向かった。
ヨウはもちろん、猫の姿だけど――。
「学園長」
「うん? どうした、イソラ君。というか、昨日からもー、一般生徒らしくしててくれないかなぁ」
「クロツノ君が用事だそうです」
「ほう?」
白角イソラと似た顔が立ち上がってこちらに近づいてくる。
「何用かな? クロツノ君」
ヨウは少し表情をひきつりながらも、リーンに頼み込んだ。
「ボクもすずと一緒に人の姿で――」
たぶん、そう言うつもりだったのがろうけれど、彼から出た声は、ナァンという低めの猫の鳴き声だった。
変身、そういえばといてなかった……。
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