25 / 82
魔法の学園
すずと一緒に
しおりを挟む
「おはよう、すずー」
「おはよう、ヨウ」
ドアをあけると、ヨウが番犬のようにそこにいた。
「おはようございます、です」
セレが呆れた様に笑いながら、朝の用意をはじめてくれる。
「おはよう、すず。よく眠れた?」
「とっても」
イソラはもういつでも登校出来ますという感じで、優雅に朝の紅茶を飲んでいた。
異世界といっても、食べ物や生活なんかはあまり違わないみたいで良かったと思う。
まあ、材料を見たわけではないので、実際何を食べたり飲んだりしてるのかはわかっていないけれど。見なければ、それまでは、ただの食べ物と認識できるよね。これで、いわゆる下手物だったり、なんて考えるだけ無駄な時間だ。だって、美味しいのだから。
「鈴芽様、こちらにです!」
用意が終わったのをセレが教えてくれる。テーブルに朝ごはんが並んでいる。
「ありがとう、セレ。セレはもう食べてしまったの?」
「はいです! なので、これは鈴芽様とヨウ様の分です!」
隣に並んで朝ごはん。昨日は猫ばっかりだったから、ヨウの顔をゆっくり見るのは久しぶりな気がする。
なんだか、考え事をしていそうな感じだ。何故だろう、ヨウの事、私全然知らないのに、知ってる。この顔が考え事してる時のヨウの顔だって……。
「ヨウ? 何か考え事?」
私が聞くと、ヨウはびっくりした顔でこちらを見た後、イソラの方に顔を向けた。
「おい、女」
ヨウがそう言ったが、イソラは反応を返さずに紅茶を飲む。
「ヨウ、名前覚えてないの? 女じゃあ、ここにいる人三人とも――」
「イソラ」
「あら、私あなたには呼び捨てを許可してなくてよ?」
「うー」
「ヨウ」
「わかった、イソラ様……」
ぷぷっとイソラが吹き出して、いそいで口元を隠していた。
「はぁ、イソラでいいですわ。それで私に何か?」
「昨日のアイツに会えば、ボクも人の姿ですずの側にいられるか?」
「え?」
予想外の言葉に私は驚きの声をあげた。
「ボクは動物じゃなくて、人としてすずの側にいたい」
「……それは、私の様に人の姿に変わりたいと」
こくんとヨウが頷くと、イソラは少し考えながらも私の顔を見てから、ふっと笑って言った。
「なら、早めに出ましょう。夕方以降は忙しい人ですから」
よしっと小さくガッツポーズをするヨウは、急いで食べ物を口に運ぶ。
そして、私はヨウに急げと急かされてごはんも紅茶もゆっくり味わうことが出来なかった。
セレにいってらっしゃいですーと言われながら、私達は学園に向かった。
ヨウはもちろん、猫の姿だけど――。
「学園長」
「うん? どうした、イソラ君。というか、昨日からもー、一般生徒らしくしててくれないかなぁ」
「クロツノ君が用事だそうです」
「ほう?」
白角イソラと似た顔が立ち上がってこちらに近づいてくる。
「何用かな? クロツノ君」
ヨウは少し表情をひきつりながらも、リーンに頼み込んだ。
「ボクもすずと一緒に人の姿で――」
たぶん、そう言うつもりだったのがろうけれど、彼から出た声は、ナァンという低めの猫の鳴き声だった。
変身、そういえばといてなかった……。
「おはよう、ヨウ」
ドアをあけると、ヨウが番犬のようにそこにいた。
「おはようございます、です」
セレが呆れた様に笑いながら、朝の用意をはじめてくれる。
「おはよう、すず。よく眠れた?」
「とっても」
イソラはもういつでも登校出来ますという感じで、優雅に朝の紅茶を飲んでいた。
異世界といっても、食べ物や生活なんかはあまり違わないみたいで良かったと思う。
まあ、材料を見たわけではないので、実際何を食べたり飲んだりしてるのかはわかっていないけれど。見なければ、それまでは、ただの食べ物と認識できるよね。これで、いわゆる下手物だったり、なんて考えるだけ無駄な時間だ。だって、美味しいのだから。
「鈴芽様、こちらにです!」
用意が終わったのをセレが教えてくれる。テーブルに朝ごはんが並んでいる。
「ありがとう、セレ。セレはもう食べてしまったの?」
「はいです! なので、これは鈴芽様とヨウ様の分です!」
隣に並んで朝ごはん。昨日は猫ばっかりだったから、ヨウの顔をゆっくり見るのは久しぶりな気がする。
なんだか、考え事をしていそうな感じだ。何故だろう、ヨウの事、私全然知らないのに、知ってる。この顔が考え事してる時のヨウの顔だって……。
「ヨウ? 何か考え事?」
私が聞くと、ヨウはびっくりした顔でこちらを見た後、イソラの方に顔を向けた。
「おい、女」
ヨウがそう言ったが、イソラは反応を返さずに紅茶を飲む。
「ヨウ、名前覚えてないの? 女じゃあ、ここにいる人三人とも――」
「イソラ」
「あら、私あなたには呼び捨てを許可してなくてよ?」
「うー」
「ヨウ」
「わかった、イソラ様……」
ぷぷっとイソラが吹き出して、いそいで口元を隠していた。
「はぁ、イソラでいいですわ。それで私に何か?」
「昨日のアイツに会えば、ボクも人の姿ですずの側にいられるか?」
「え?」
予想外の言葉に私は驚きの声をあげた。
「ボクは動物じゃなくて、人としてすずの側にいたい」
「……それは、私の様に人の姿に変わりたいと」
こくんとヨウが頷くと、イソラは少し考えながらも私の顔を見てから、ふっと笑って言った。
「なら、早めに出ましょう。夕方以降は忙しい人ですから」
よしっと小さくガッツポーズをするヨウは、急いで食べ物を口に運ぶ。
そして、私はヨウに急げと急かされてごはんも紅茶もゆっくり味わうことが出来なかった。
セレにいってらっしゃいですーと言われながら、私達は学園に向かった。
ヨウはもちろん、猫の姿だけど――。
「学園長」
「うん? どうした、イソラ君。というか、昨日からもー、一般生徒らしくしててくれないかなぁ」
「クロツノ君が用事だそうです」
「ほう?」
白角イソラと似た顔が立ち上がってこちらに近づいてくる。
「何用かな? クロツノ君」
ヨウは少し表情をひきつりながらも、リーンに頼み込んだ。
「ボクもすずと一緒に人の姿で――」
たぶん、そう言うつもりだったのがろうけれど、彼から出た声は、ナァンという低めの猫の鳴き声だった。
変身、そういえばといてなかった……。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます
あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。
腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。
お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。
うんうんと頭を悩ませた結果、
この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。
聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。
だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。
早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。
表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
―――――――――――――――――――――――――
※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。
※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。
※基本21時更新(50話完結)
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる